9月も下旬に入ったせいか、急激に冷え込み、食事も温かいモノが恋しくなってきた。暖かい料理というと、ガスや電気を使うので「地球に優しくない」というイメージがあるかもしれない。しかし、実は割と節電に向いているのだ。

大抵の料理は出来立てで暖かいうちが美味しいものだが、特に体が温まる料理として思い浮かぶのは煮込み料理ではないだろうか。カレー、シチュー、おでん、スープといった汁気が多く暖かいものは、冬場にうれしい。

こうした料理は長時間コトコト煮込んでこそというイメージがあるが、「保温調理」をすれば小さな労力と少しのエネルギーで簡単に作ることができる。

保温調理とは、1度暖めた鍋をできるだけ長時間保温することで、とろ火で煮込んでいるような状態を作り出す方法だ。鍋が沸騰してから10分程度で加熱を止めてしまうため、調理にかかりきりになる時間が少ない。保温調理用の鍋を使うのが最も手軽な方法だが、土鍋など厚くて冷めづらい鍋を、バスタオルや毛布でくるむという方法でも十分代用できる。

「保温調理」について詳しく解説している「北海道グリーンファンド」のWebサイト

例えば、おでんを作る時は前の晩に1度火を入れ、沸騰させたものを新聞紙で包んだ後バスタオルや毛布で多重にくるみ、コタツの中にでも入れておく。コタツの電気を入れる必要はなく、要するに熱がこもる場所に入れておけばよい。朝、もう1度沸騰させてから保温し直せば、夜にはじっくり煮込んだおでんが出来上がる。カレーやシチューならば、ルーを入れる前段階で保温調理し、最後に暖め直す時にルーを入れるとよい。

この調理方法だと具材が煮立てられて踊ることがないため、じゃがいもなどの煮崩れ防止にも役立つ。形を残して調理したい時にもオススメだ。逆に、煮崩れて渾然一体となったものが好みならば、最初から具材の一部をすり下ろして入れてしまえば、同じような状態にできる。

また、保温調理は味がよくしみるのも特徴だ。実は、味とは冷える時にしみる。しかもゆっくり冷やすほうがよい。大根の煮物などは長時間煮込んでも芯の辺りが白かったりするものだが、「沸騰させて冷やす」を繰り返すと簡単かつ全体に味がつく。小さな普通の鍋でも。「しばらく煮立ててから火を止め、自然に冷えたらまた火を入れる」という行動を繰り返すと簡単だ。汁気の少ない煮物などでも試せる方法だから、ぜひ試してほしい。

なお、IHクッキングヒーターは使用中ずっと電気を消費する。かといって、節電と言われても調理をしないわけにはいかないから、悩ましいところだろう。そこで、煮込み料理を保温調理しておいて、食べる時間に合わせてご飯を炊けば使用電力を抑えられる。ガスレンジを使っている家庭でも、保温調理をすると火の番をする手間がなくなる。その間を別の家事や趣味に利用できるから、ぼんやりとPCやテレビを眺めて時間と電気を消費してしまうこともない。

寝ている間や外出中に調理が進むから照明コストもかからず、火を使っているわけではないから積極的な換気をしなくとも済む。換気扇も止めてしまいたい徹底派にもオススメだ。さらに、小さな子供や老人などがいる家庭でも安全に調理できるのもポイントだ。1人暮らしなら、蹴飛ばさないように注意すれば鍋の温かさでコタツを暖めるという技が使えるかもしれない。

何より前日の晩や朝にちょっと手をかけるだけで、仕事中がまるごと調理時間になる。忙しくて簡単な料理ばかりという人でも、うまく保温調理を使いこなせば手が込んだように見える料理が楽しめるのがよい。

しかも、暖かいものを食べれば体が自然に温まって、暖房も控えめにできてしまうから一石二鳥だ。節電・節約だからと我慢せず、手間をかけずにおいしいものが食べられる機会を楽しもう。