連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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前回「人生にはまとまったお金が必要なイベントがいくつかあり、シングルの人にとって最初のイベントは結婚」と書きました。とはいえ、シングルのアラサーにとって、将来結婚するかどうかは見極めにくいでしょう。「結婚したい」と思っていても、逆に「結婚しない」と思っていても、その通りになるとは限りません。

シングル・晩婚者が考えるべきお金とは?

データを見てみると、生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことのない人の比率)は男性が20.14%で女性が10.61%(2010年)となっており、"ずっとシングル"という人が増えています。一方、晩婚化も進んでいて、2014年の調査では、初婚時の年齢が男性30.9歳、女性29.4歳。どちらも20年前より約5歳、年齢が上がっています。

こうした状況を踏まえて、今回は未婚と晩婚に関するお金を考えてみましょう。

「シングル」が考えるべきお金の話

結婚した場合、まず、結婚式や披露宴、新婚旅行や新生活のための費用をどうするか考えることになります。その後も、マイホームの購入費や子供の教育費などでお金と向き合わざるをえません。

それに対してシングルだと、まとまったお金が必要となるイベントが少ない上、大抵は収入のうち生活費以外のお金をすべて自分のために使えるため、お金に関して無関心になったりルーズになったりしがちです。でも、「結婚するつもりも子供をもつつもりもないし、家も買わない」からといって、お金を貯める必要がないかといえば、そんなことはありません。

マイホームを買わなかった場合、老後、収入が年金だけになってもずっと家賃を負担しなければなりません。そのぶん、マイホームのある人より多くの老後資金が必要です(これはシングルに限ったことではありませんが)。

また、結婚していれば、何かの理由で1人の収入が途絶えても、もう1人が働いて収入を確保することが可能ですが、シングルだとそれができません。したがって、シングルの人は収入が途絶えるリスクにも備えておく必要があります。 さらに、シングルだと老後、介護が必要になったときに配偶者や子供に頼ることができないので、外部の介護サービスを利用することになり、その分、お金がかかります。

というわけで、シングルの人はそうでない人より老後資金をしっかり貯めておかなければならないのです。住宅ローンや教育費の負担がないぶん、お金のゆとりはあるはず。それを全部使ってしまうのではなく、一部を貯めておくことが大切です。

「晩婚者」が考えるべきお金の話

ずっとシングルのつもりだったり、このまま結婚しないかもと思ったりしても、縁あって生涯の伴侶とめぐり会い、30代後半、あるいは40代で結婚するという可能性もあります。もちろん、それはおめでたいことなのですが、お金に関しては晩婚ならではの注意点があります。

住宅購入費、子供の教育費、老後資金は人生の三大出費といわれます。一般的には、マイホームを購入し、子供の教育費を捻出し、それにメドがついてから老後資金の準備を本格的に始めることになります。

それが、晩婚で年齢が高くなってから子供を持った場合、住宅購入費と子供の教育費を負担しつつ、同時に老後資金も貯めていかなければなりません。といっても、目の前にある住宅費と教育費がどうしても優先されるので、老後資金は後回しになってしまいます。教育費の負担がなくなったときには定年退職を迎えていて、全く老後資金が作れないというケースもあり、それが老後破産につながることもないとはいえません。

そうならないためのカギは結婚前の貯蓄です。貯蓄がある状態で結婚すれば、それを住宅費や教育費に充てることができ、結婚後すぐに老後資金の準備にとりかかれます。晩婚カップルは、結婚前の貯蓄があるかないかでその後のゆとり度が大きく違ってくるのです。

つまりシングルの人は、この先ずっとシングルだったとしても貯蓄が必要だし、結婚するとしても貯蓄がないと困るということです。収入を"今"の自分のために使うだけでなく、"将来"の自分のためにもとっておくという意識を持って少しずつ貯めていくことが、老後破産を回避することにつながります。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。