連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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結婚後のお金はどのくらいかかる?

人生にはまとまったお金が必要なイベントがいくつかあります。シングルの人にとって最初のイベントは結婚でしょう。結婚式や披露宴、新婚旅行のほか、新生活を始めるために引っ越したり家具などを買いそろえたりするのにお金がかかります。

結婚式・披露宴については、ジミ婚から派手婚までいろいろあり、どのくらいお金を掛けるかは結婚する2人やその家族の考え方、2人の置かれている環境や住んでいる地域によって異なります。新生活のための費用も、それまで自宅暮らしだったのか一人暮らしだったのかで変わってきます。

したがって、結婚にかかるお金について平均値は参考にならないといえるでしょう。

「結婚後」に貯蓄ゼロは危険

ただ一ついえるのは、結婚というイベントが終わったときに、二人の貯蓄がゼロになるのは避けるべき、ということです。結婚の次には出産やマイホームの購入など、次のイベントが控えています。そのための費用をゼロから貯め始めるのと、ある程度貯めたところからスタートするのとでは、家計のゆとり度が全く違ってきます。

また、結婚してすぐに子供ができ、そのために妻が働けなくなる可能性もありますよね。そういう状況で、家族の急な病気やケガ、自然災害などでお金が必要になったとき貯蓄がなかったらすぐに借金生活になってしまいます。

ですから結婚に伴う様々な支出をしたあとに、最低でも2人の手取り月収合計の3カ月分が残るようにしたいもの。逆にいうと、2人の貯蓄額から手取り月収の3カ月分を差し引いて、残ったお金の範囲で結婚費用をまかなうようにすればよいということです。

お金を考えたら「共働き」がおすすめ

今の時代でも、「妻は家事に専念してほしい」と思うアラサー男子や「結婚したら専業主婦になりたい」というアラサー女子はいるでしょう。でも、お金のことを考えたら、共働きがおすすめなのはいうまでもありません。

当然ですが働き手が1人と2人とでは世帯の収入が全く違います。2人で働けば貯蓄の増え方も大きくなり、子供の教育にお金を掛けられるし、マイホームを買うときも選択肢が広がります。もし何かの理由で夫が働けなくなったときも、妻に収入があれば家計が立ちゆかなくなるという心配がありません。

老後のお金にも差が出ます。会社員の夫と専業主婦の妻の場合、受け取れる公的年金は夫の老齢基礎年金+夫の老齢厚生年金+妻の老齢基礎年金の3つですが、妻が会社員ならこれに妻の老齢厚生年金がプラスされます。さらに、妻の退職金や企業年金もあれば、老後のゆとり度はかなり高くなり、それだけ老後破産リスクが抑えられます。

共働きを続ける上で重要なこと

共働きを続けていくためには、仕事と子育てとの両立が重要になってきます。保育園が不足していて産休後に職場に戻れないという待機児童の問題は、今、大きくクローズアップされており、早急に解消されることを期待したいところです。出産・育児で仕事を辞めざるをえなくなっても、できるだけ早く復職する、あるいは自宅でもできる仕事を考えるなど、収入の道を探りましょう。

共働きでは、夫の家事・子育て参加は不可欠です。もう一つ気をつけたいのは、ダブルインカムで世帯収入が多いと、支出も多くなりがちだということ。もちろん、妻が仕事を続ける上で必要な支出もありますが、ゆとりがあるために支出がルーズになり、専業主婦世帯より貯蓄が少ないというケースもあるので注意してください。

夫婦で家事・育児を分担し、お金をしっかり管理しならがら"ダブルインカム"を続けることが老後破産の回避につながります。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。