連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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老後破産しないためには、支出をコントロールして計画的に貯蓄をすることが重要――と繰り返しお話ししてきました。でも、実はもっと大事なことがあるのです。それは"収入を絶やさないこと"。

支出のコントロールも計画的な貯蓄も、収入があってこそできるわけで、定期的な収入があることが前提になっています。多くの人の場合、収入を得る手段は"労働"ですよね。働いて手に入れる勤労収入が最も確実な収入源です。ですから、老後を迎えるまで働き続けて、収入を絶やさないことが最も大切なのです。

老後破産しないためにいちばん大切なこと(画像はイメージ)

「定期的な収入」が当たり前でなくなる?

大抵の人はそんなこと言われなくても、当たり前のように仕事へ出かけ、お給料やボーナスをもらっていることでしょう。でもそれが当たり前でなくなることもあります。働きたくても働けなくなる理由の一つが病気やケガです。

どんなに気をつけていても病気にかかることはあるし、想定外の事故でケガをすることもあるかもしれません。でも、自分で気をつけていれば避けられる病気やケガもあります。規則正しい食事や睡眠、適度な運動を心がけていれば、糖尿病や高血圧などの生活習慣病リスクを抑えられることがわかっています。たばこはがんになる原因の一つなので、吸わないに越したことはありません。定期的に健康診断を受けていれば、万一病気になっても早期に発見でき、治る確率も高まります。歩きスマホをやめる、車に乗ったらシートベルトをする、などちょっとしたことが、ケガを避けることにつながります。

病気やケガは、収入が途絶える原因となるだけでなく、医療費などの支出も伴います。治療が長引けば、医療費のために貯蓄を取り崩さなければならないこともあるでしょう。だから、老後破産を回避するためには病気やケガをしないようにすることが大切なのです。

「介護離職」はできる限り避ける

働き続けられなくなるもう一つの理由に、介護があります。アラサーだとまだ実感はないかもしれませんが、誰でも65歳を過ぎるころから老化が進み始めて、早い人だと60歳代後半から介護が必要になることがあります。

親がある日突然、要介護になり、何をどうしていいかわからず、でもとにかく誰かが面倒を見なければならないので、仕方なく会社を辞めた――というのはよくあるバターン。でも、介護離職は可能なかぎり避けるべきです。離職すると収入が途絶えてしまうし、いったん離職すると復職するのは難しく、正社員になれないことも多いからです。親に介護が必要になっても仕事を辞めてはいけません。

国も、家族の介護する人をバックアップする制度を設けています。例えば介護休業や介護のための短時間勤務制度、介護休暇などです。会社が独自に、介護する人を支援する制度を設けていることもあります。 介護を受ける人のための仕組みもいろいろあります。要介護認定を受ければ、介護度に合わせた介護サービスが利用できるほか、地域ごとのサービスやボランティアなどもあるはずです。

介護はいつ自分の身にふりかかってくるかわかりません。機会があれば、新聞やネットの介護関連の記事に目を通すなど、介護に関する制度や仕組みを知っておくようにすることをお勧めします。そうすれば、いざというときあわてて会社を辞めてしまうこともなくなるはずです。もし介護しなければならない状態になったら、利用できる制度や仕組みを徹底的に使い、あらゆる手を尽くして仕事を続けてください。それが老後破産を回避することにつながります。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。