連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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老後破産を避けるためには、計画的にお金を使い計画的に貯蓄をすることが大切ですが、だからといって何でもかんでもケチればいいというものではありません。食費を削りすぎては健康な体を維持できないし、人間関係を円滑にするための飲み会の費用や交際費が必要なケースもありますよね。

削らなくてはいけないのは"ムダな支出"です。ムダというのは、「買わなくてもすむのに買ってしまったもの」や「払わなくてもすむのに払ってしまったもの」を指します。大きなムダには気づきやすいのですが、小さなムダは見逃しがち。小さなムダも積もり積もるとけっこう大きな金額になります。 今回はよくある小さなムダを3つ挙げてみました。

ATMの時間外手数料

銀行口座からお金を引き出すとき、その銀行のATMで平日の8時45分~18時までなら手数料はかかりませんが、それ以外だと108円あるいは216円の手数料がかかるというのが一般的。だったら、手数料のかからない時間帯に引き出すべきですよね。時間外手数料はムダ以外のなにものでもありません。

今、多くの銀行では一年ものの定期預金の金利が0.025%。100万円を1年間預けても、受け取れる利息は250円。そこから税金が差し引かれるので手取りは200円です。ということは、ATMを時間外に利用して手数料を216円払ったら、それだけで元本割れするということです。それを考えても、手数料を払うのはバカらしいですよね。

手数料は金額的には大きくはありませんが、時間外にATMでお金を引き出すのは、お金の管理がきちんとできていない証拠でもあります。お給料から先に貯蓄をしたら、1カ月分あるいは1週間分の支出に充てるお金を引き出して、その範囲で使う、というように計画的な使い方をしていれば、「いつのまにかおサイフが空っぽ」→「時間外に引き出し」というような流れにはならないはずです。

ムダその1 ATMの時間外手数料

「○円引き」「送料無料」で余計な買い物

ネットショッピングやカタログ通販を利用していると、「2枚買うと1,000引き!」とか「○円以上で送料無料!」というのがよくあります。こんなとき「1,000円安くなるなら2枚買おう」とか「あと少しで送料無料になるから何か買おう」と思う人はお金が貯まらない人といえるでしょう。

こういうのを見て心が動いたら、そこでいったん冷静に考えてみましょう。もし、自分が欲しいのは1枚だけだとしたら、1,000円値引きがあるとしても1枚だけ買うべき。2枚目は必要ないのですから、それを買うのはムダ遣い。「送料無料」というけれど、そもそも送料はいくらなのでしょう。無料にするために買うものが送料以上の価格だったら、おトクではありません。要するに、本当に欲しいもの・必要なもの以外にお金を使うのはムダということです。

"値引き"や"無料"に弱い人は、家の中が片付いていないケースが多いもの。つい必要以上のものを買ってしまうため、買ったのに着ていない服や使っていないモノがあふれてしまうのです。金額的に値引きや無料の方がおトクだったとしても、身の回りに余計なモノを増やさないためには、必要なモノだけ買う方が賢いといえます。

コンビニで「ついで買い」

日本中どこにでもあるコンビニ。今やコンビニのない生活は考えられないほどになっていますが、利用回数が多いぶん注意も必要です。気をつけなくてはいけないのが「ついで買い」。何か買おうと思ってコンビニへ行き、"ついでに"別のモノも買ってしまうという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

特に買いたいモノがあるわけではないけれど、昼休みや仕事帰りについ立ち寄ってしまうという人もいるかもしれません。そうなるとコンビニ依存症ですよね。用もないのにコンビニに立ち寄ってした買い物は、それ自体がムダだし、コンビニに立ち寄っている時間もムダです。

コンビニには買うモノがあるときだけ行く、というのが大前提。そして、行くときはあらかじめ、何を買うか決めてから行くようにして「ついで買い」をなくせば、そのぶんのお金を貯めることができます。

あなたにあてはまることはありましたか?

アラサーが老後を迎えるまでは長い時間があります。その間、こうしたムダを繰り返していたら、その累計額はかなりのものになります。自分のお金の使い方を振り返ってみて、思い当たるフシがあったらすぐに改めましょう。ムダな手数料は払わないこと、そして何か買おうと思ったとき、ちょっと立ち止まって「これって本当に必要?」と考える習慣を身につけることが老後破産を回避することにつながります。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。