大晦日、1年の最後のこの日、あれやこれやと頭の中をかけめぐることがたくさんあります。雑誌の表紙に「あなたは幸せですか? 」なんて書いてあると、つい、「……幸せじゃない」と思ってしまう自分がいたりして。そして、そんな気持ちになってしまった自分をまた、「幸せじゃないはずがない。こうして元気に生きているのだから」と思い直し、一瞬でも幸せじゃないと思った自分を責めてみたりして。

「ああ、自分はどうしてこうもマイナス思考なんだろう。そういえば、私は年中、『何もかも捨てて、どこか遠くへ行ってしまいたい。どこか遠くっていうとやっぱり、雪が降っていて、崖と海があるところだろうか。そこで岸壁の上、冷たい風に吹かれながら立ち尽くす、みたいな』」というようなことを私は考えてしまうのです。

ところが、あるときそんな気持ちを友人Eに打ち明けたところ、「うそでしょー? 何、それ。失踪願望? 私、何もかも捨ててどこか行きたいなんて思ったこともないよー」と言われました。

えええ? 何もかも捨ててって、誰もが一度は考えたことがあるわけではないのか? とタイヘン驚いた私は、家族をはじめとした周囲にいる人達に、何もかも捨ててと思ったことはないか聞いてみました。すると、驚いたことに誰もがみな、「そんなこと、考えたこともないよー」と言うのです。それどころか、「だいたいさー、せっかく何もかも捨ててどこかへ行くのに、なんでわざわざ寒いところに行かなきゃいけないの? もう何にもしばられないぞ、そうだ、ハワイに行こう♪とか、そういう発想はないわけ? 」「そうそう、そもそも発想自体が暗い。つらくて何もかも捨てるんだから、寒いところに行ったら余計につらいじゃん。心は寒いから、せめて暑くて陽気な場所に行こうとか思わないのがすごい」とケチョンケチョンに言われてしまいました。なんというか、自分は自分と間逆なタイプの人が好きなんだな~と実感させられました。

中には、「……もしかしたら、私は何もかも捨ててと思ってないけど、彼には思われちゃってるかも。あははー」という人もいて、世の中にはどこかへ行きたくなっちゃうタイプと、誰かをどこかへ行かせちゃう可能性があるタイプの2種類の人がいるのかもしれない、と思わず、遠い目になってしまいました。強く生きていこうと思います。

今年最後の日は、このように色々と反省をして過ごしたいところですが、反省する気持ちの中に、「今年も彼女ができなかった。はぁ~」とため息をつきながら考えてしまう人もいるかもしれません。そんなとき、どうしても、「もういいや、別に彼女なんかいなくても、楽しく生きていける」とか、「オレのよさがわからないほうが悪いんだ」とかつい思ってしまいたくなることもあるはずです。思ってしまっても別にいいのです。そんなふうに考える自分を責めたりしなくてもいいと思います。

いいのですけれど、それは一瞬の気持ち、今年までの気持ちにしておいてほしい。来年からは「来年って明日からなんですけど」「やっぱり彼女がいたほうがいいだろうな。彼女がいたら、今までとは違う楽しいこと、色々あるだろうな」とか、「オレのよさを女の子にわかってもらうためには、何をしたらいいだろうか。こんなことやあんなことをしてみるといいかも」とか、そんなふうに考えてもらいたいのです。

私が思うに、こまめに散髪するとか、スーツのズボンに蒸気をあてるとか、メガネのフレームをかえるとか、あいさつをするとか、公共の場でエレベーターの開ボタンを押す人になるとか、電車で席をゆずるとか、そういった小さなことで十分、"オレ"のよさが伝わりやすくなるはずです。

とはいうものの、ただでさえ寒い季節なのに、寒いことを考えているのもよろしくないものです。反省する気持ちはほどほどにして、おいしいものを食べて温まったり、普段掃除しないところをキレイにするなどして体を動かしたり、気ままに散歩に出たりしてみてほしいと思います。

また、大晦日に自宅にいて、どこへも出かける予定のなさそうな友人や女の子の知り合いがいたら、メールを送るなどしてひと声かけてみると、それだけで「いい人」「やさしい人」と思ってもらえますし、会って話をして楽しい時間を過ごせるようになるかもしれません。

年末はどうしても、相手も忙しいのではと気を遣ってしまいがちな時期ですが、意外と何の予定もない人や、自宅でゴロゴロしている人もいるものです。「あの人はもしかしたら、1人でいるかも」というときは、メールを送ったり、電話をかけたりして、連絡を取ってみてもいいと思います。今年の反省や、しなかった後悔は今年のうちに終わりにしてしまって、みなさん、よいお年をお迎えください。

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酒井冬雪です。今年も1年、お付き合いいただいてありがとうございます。家の近くの神社では、初詣に甘酒を振る舞ってくれます。小さい頃一緒に住んでいた祖母は甘酒を好きで、よく飲んでいたなぁと思い出します。私にとってはなつかしい味です。

寒い季節ですので、みなさまくれぐれもご自愛ください。ホントに、よいお年を!