人を好きになるとき、アプローチは人それぞれでまったく違うものです。好きな人をただジッと見ていたい……と思う人もいれば、そばにいって仲良くなって相手をよく知りたいと思う人もいる。「好きな相手のために何かできないだろうか」と何かしてあげたいと思う人もいれば、「自分を知ってほしい、こっちを見て見て! 」と思う人もいる。その他にも十人十色、人それぞれ、いろいろなカタチで好きになる気持ちを抱えていくものかと思います。

しかし。好きに色々な想いや個性があるのはいいことですが、それが相手にとって実はあまりよくないことであった……というのはちょっと困ります。

某家電メーカーの研究所に勤務するRくん(26才)は、4才年上の先輩Eさんがとても好きでした。Rくんは女系家族で育ち、幼い頃から非常に素直な性格で、隠し事などせず思ったことは何でも口に出して言うようにと育てられてきました。ですから、小さい頃から好きな人には、「大好き」と言う。それどころか、当の本人以外の周囲の人にまで、「ボク、あの人のことが好きなんですよー」と言ってしまったりして、密かに当の本人を困らせていたのでした。

そんなRくんでしたので、もちろん社会人になって初めて出会った好きな人である先輩のEさんにもすぐに、「Eさんって本当にかわいいですね~。好きです~」と言ったのはもちろん、狭い事務作業ルームでデスクが隣同士なのをいいことに、「ボールペンを貸してもらえますか。やったー。ボクのと取り替えちゃおうかな」とか、少年(?)のようなセリフも平気で言ってのけていました。Rくんがイスに座り、頬杖をついてEさんの横顔をながめながら、「ホントに、ホントにかわいいな」と歌うようにつぶやきつづけていたという目撃証言もあるほどです。

それでは、好意を持たれている側のEさんはというと、Rくんの言動に戸惑いを感じずにはいられませんでした。もちろん、少しはうれしい気持ちもあります。しかし、年下というか、後輩のRくんに「かわいい」と言われてしまうことがとても気になりました。

彼女は賢く、面倒見のいい長女性格でしたので、「自分は実は仕事でも無理をしすぎているんじゃないか」「ここまで頑張らなくてもいいかもしれない」といった悩みを常に抱えていたのです。そんなとき、年下から「かわいい」と言われるのは、「ムリしちゃってかわいい、っていう意味? 」「立場がなくなるじゃないの……」と大変もどかしく苦しい気持ちだったのです。彼女的にも、嫌味や悪口を言っている相手になら、「やめてください」と言えるけれど、好意に対してはどう対処すればいいのかわからなかったのです。

根がマジメなEさんは真剣に悩んでしまい、女性の先輩に相談してしまいました。相談すると「かわいいもんじゃな~い」と大笑いされたそうですが、先輩のほうからRくんに、「Eはマジメだからさ~、面と向かって好き、好きって言われると恥ずかしくていたたまれないんだって。ちょっとやめてあげて」と言ってくれたそうです。Rくんは、根が素直でしたので、ちょっと悲しそうな顔をしながら了解したのでした。

このように、好きな人へのアプローチには人それぞれ、様々なやり方があります。好きな人にはどんな風に関わっていけばいいか、どうすればいいのかは、本当に千人いれば千通りで、それぞれに違うのかもしれません。が、1つだけ言えるのは、自分のやり方で思いのままに振舞うだけではなく、好きな相手の性格や立場も考えて、相手に合わせようと努力してみることが大事ということです。

自分がこうされたら「うれしい」と思うことも、人によっては困ったり戸惑ったりする場合もあるかもしれません。好きな人だからこそ、相手のことをよく見て、見極めて、相手の女性(男子の場合も)に合ったアプローチ、相手が困らないような喜んでくれるようなアプローチをみつけてほしい。

「自分がこうしたい! 」ではなく、「相手はどうすれば喜ぶか」と考えてみると、きっと正解に近づけると思います。がんばって、彼女(彼)にとっての正解をみつけてみましょう。

*  *  *

酒井冬雪です。最近、涙もろくなって困ります。あんまりウルウルくるせいか、最近では涙がこぼれる寸前で止める、という技を身につけました。女って怖いわ~。では、またね。