前回から引き続き、イケメンとは? モテはイケメンでないとないのか? というお話です。

容姿が整っている、100人中90人の女の子が「カッコいい」「イケメン」と認める男性がいたとしても、彼が必ずしもモテるわけではありません。

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某製菓メーカーに勤務するSくん(26才)は、仕事(研究)の一環として、あちこちのスーパーの試食販売に顔を出したりします。すると、どこへ行っても、おばさんから若い女の子にまで、

「あらー、お兄さん、イケメンじゃないの」「キャー、お兄さん、カッコいいですね」

とさわがれるような容姿の持ち主です。実際に、スーパーからの帰り道を待ち伏せされて

「仕事はもう終わりですか? お時間があったら飲みにいきません?」

と誘われる、というようなことがしょっちゅうあるそうです。

ところが、一度飲みに行ったり、食事に行ったりしても、その後がないというか、付き合いには発展しない。一度会うと、

「なんか思ってたのと違う」
「思ってたよりつまらない」

と言われて、その後がないのです。彼をよく知る職場の同僚女性は、

「たしかに、彼は色白で細くて、キレイな感じの外見でパッと見『かわいい』と思われるでしょうけど、なんだろう、話がつまらないというか、そもそもぜんぜんしゃべらないんですよ」

と言います。そう、彼は今どきめずらしいほど、無口でぶっきらぼうな男の子なのです。私がこれまで、個人的および、取材で知り合った男性の中でも、3本の指に入る無口な人でした。

しかも、彼にとっては無口なことが自然なようなのです。ですから、相手の女の子が一方的に会話をすることになって、ひとりで懸命に話をしていても、無口なりに話をあわせようと焦ったり、躍起になったりもしません。あるがままの無口な自分で、リラックスした態度で、ただじっと黙っているのです。

こうなると、女の子としては、

(何よ、私が一生懸命に話題をふって、がんばって話しているのに、ただ黙ってニコニコして座っているだけじゃない)

と思ってしまってもおかしくはありません。そんな女の子の気持ちにもおかまいなしで、ただひたすらに黙っていると、

(はああ、何なの、この人? 自分はイケメンだから、こっちに気を遣わせて、自分は何もしなくてもいいくらいに思ってるわけ? 自信満々ってこと?)

と悪く取られてしまう可能性だってありそうです。そういうわけかどうかは知りませんが、とにかく彼は不特定多数の女の子から誘われることはけっこう多くても、彼女ができない、恋愛にまで発展しないということになっているわけです。

無口が悪いというわけではありません。私はわりと無口な人が好きです。しかし、初対面でリラックスできない、相手にドキドキしている状態で、相手にずーっと黙られてしまったら、誰だって困ってしまうと思います。お互いをよく知っていて、沈黙の時間も楽しいという状態になるにはけっこう時間もかかるものですから。

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このように、女の子にばかり一方的に気を遣わせてしゃべらせて……という人は、いくらイケメンとはいえ、本当の意味でモテるとは言わないだろうなと思います。

イケメンはモテる……と思う人は多いかもしれませんが、イケメンで、子どものころから女の子が向こうから一方的に話しかけてくれるせいで、女の子に「何かしてあげる」「話をしてあげる」という感覚があまりなく、実はいざとなると、女の子に何もしてあげることができない。

女の子と一緒にいること、話しかけられることには慣れているんだけど、実はいつも受け身だった。そのため、いざというときに何をしていいかわからない……というイケメンはけっこう多いのです。

けれど、女の子というものは、好きな人には、男の人には、向こうからきてほしい、がんばっているところ(自分への好意)を少なからず見せてほしい……と願ってしまう生きものです。恋愛するときは、彼のほうから来てくれて、肝心なときくらいは自分が受け身でいれたらな、と心の奥底では思っているのです。

ところが、知らず知らず、いつも受け身でいたイケメンには、相手をもてなす力があまりなかったりします。

要するに、モテるかモテないかは、イケメンだから……うんぬんということではなくて、「この人からモテたい」と強く願い、がんばっている自分がいるかどうか、という点にかかっていると私は思うわけです。

容姿に恵まれていたために、モテの問題で困ったことがなく、モテるために何かをがんばろうという発想そのものがないというイケメンもいます。もしくは、容姿がいい上に、他のことまですぐれていたら、同性(男子)にねたまれて友だちができなくなりそうで困る……だから、勉強(仕事でもスポーツでも)はそこそこにしておこう、と考える、異性よりも同性との付き合いを大事にしたいタイプのイケメンも最近は増えています。

モテたいというのは不純な動機かもしれませんが、何かしら目標がある人のほうが、仕事や自分の好きなこと、趣味をより一層がんばれたりするものです。女の子というものは、何かにがんばっている人、努力をしている男性を高く評価するものなのです。そこに、イケメンかそうでないかということは、あまり関係がないのです。

そして、男性の場合は、容姿が整っていなかったとしても、何かにがんばっていると表情や顔つきに味合いが出て、個性ができる。キャラクターが立ってくる……という最大の強みがあります。

そんなにイケメンでなくても、何となく見ていると安心できる顔、信頼できる顔、力強い顔、思慮深そうな顔、心の広そうな顔というふうに、自分の顔をつくり上げることができる。これは、男性の専売特許なのです。

そう、やっぱり「イケメンだからモテる」とは一概に言えそうにありません。

もちろん、イケメンということで、女の子から話しかけられる確率、知り合える間口は多少なりとも広がるかもしれません。しかし、そこから先をどうつなげるかは、本人の努力、工夫次第です。

努力や工夫をしてこなかったイケメンと、女の子のためを思い、あれこれ考えて行動する男の子だったら、長い目で見ると最終的に勝つのは後者ではないかと思います。

好きな人のために何かしてあげたい、彼女のよろこぶ顔が見たいと思う気持ち、モテはそこから生まれます。

「イケメンしかモテない」と、なげく前に、ぜひ、好きな女の子がどうすればよろこんでくれるか? を考えて、彼女のために何かをしてあげてほしい。それって、イケメンかどうかとは、まったく関係のないことです。

好きな人のよろこぶ顔を見ることができる人……それがモテる人なんだろうなと私は思います。

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こんにちは、酒井冬雪です。いえ、本当にイケメンだからモテるわけではないんですよね……(と、ここに何人かの顔が思い浮かぶの図)。そして、美人だからモテるというわけでもなく、女性の場合は「あなたがいないと私はダメ」と男性に上手に甘えられる、男性を頼りにして、必要としている人が最終的にモテると思います! では、またね。