男の人って、大ざっぱなように見えて、こだわるときは細かいところにこだわるものだなぁと、思います。

たとえば、プラモデルが趣味な男の人。バリを取ってやすりがけするだとか、

「そんなところ、組み立ててしまったら見えないよね」

というところにまで手を入れて、自分なりのこだわりを持っている。

ファッションオタクな男性。袖口の折り返し部分の布が違う柄になっているとか、シャツのボタンの2番目だけが、目立たないけれど薄い水色の糸でボタン付けしてあるとか。そういうところに「うおおお」と心ときめいてしまって、信じられない金額を服代に当てていたりする。

車やバイクや自転車が好きな人も、車にあまり興味がない女性からすれば、よくわかりません。

どうして、最初からついているパーツをわざわざ外して別のものに付け替える必要があるわけ? しかも、パッと見どころか、解説してもらって間近でじっくり見ても、違いがまったくわからないんですけど。

いざこだわりだすと、これでもかとこだわる。徹底的に細部までこだわる。妥協せずにこだわる。それが、フツウに売っていない、手に入らないものだったら、自分で手作りまでする。

そんなふうに、モノや趣味のこととなると、徹底的にこだわることができるのに、どうして女の子を見る目となると、あまあまになってしまうのかしら? とっても不思議です。男の人って、いったい女の子の何を見ているのでしょう。

某化粧品メーカーで働くHくん(32才)は、乗り物にとても詳しいと社内でも評判の男性です。たとえば、彼の働く会社のある○○駅から△△駅まで、どのようなルートで行けばいちばん近いのか? 交通費がお得なのか? そういったことは、乗換・路線で検索しなくてもHくんに聞けばすぐに返事がかえってきます。

詳しく彼の話を聞く余裕のある人でしたら、進行方向から数えて2両目の車両に乗ると乗り換え便利とか、駅地下に入っている飲食店といった情報まで、彼から入手できるほどでした。

こんなふうに、ある事柄にとてつもなく詳しい、詳しすぎたりすると、女性からは、

「細かいところまで気配りできるけど、半面、細部にまでチェックの厳しい性格なんじゃないかな」

と思われていることには、Hくん自身、気付いておらず、ただひたすらに趣味の鉄道(から派生して路線・乗り換えマニアになった)の研究にいそしんでいたのでした。

さて、そんな彼の働くセクションに、季節的にめずらしくも、他部門からMちゃん(26才)という女の子が異動してきました。

実はMちゃん。女性社員の間では評判の問題児でした。会社以外にも、夜になると飲み屋でアルバイトをしているとか、仕事をまったくせずに一日中ネットを見ているとか、上司に注意されるとすぐに会社を休み、

「いじめられた」「精神的につらい」と人事にうったえでるとか。Mちゃんには、さまざまなウワサが飛び交っています。

というわけで、社内の情報にうといHくん以外の人たちは、ドキドキしながらMちゃんを迎え入れました。ウワサの真偽は置いておき、彼女のハデというか露出の多い服装に、女性の先輩たちの目が5mm大きくなったのはたしかです。

あるとき、Mちゃんが社用で外出することになり、上司が、

「行き方は、Hくんに聞くと早いよ」

と彼女に教えました。そういうわけで、親切にMちゃんに乗り換え・最短ルートを説明したHくん。Mちゃんはとても感激したのか、その日以来、Hくんにベッタリ甘えてくるようになりました。

「Hさーん、一緒にお昼ごはん食べに行きませんか?」
「Hさーん。私、今日、どうしても抜けられない用事があって残業できないんですぅ(残業、かわってくださ~い)」
「これってどうやればいいんですか~(かわりにやっておいてね)」

マジメで律儀なHくんは、こんなふうに、女性からベタベタされたことがなかったので、どのように対処すればいいのかわからず、とにかくMちゃんの言うことには何でもイエスと答えてしまいます。

でも、日が経つにつれて、心なしか職場の同僚(特に女性)の、自分を見る目が冷たくなっているような気がして。そういえば、最近は誰も彼のところに乗り換え・路線のことを教わりにこなくなっています。

どんどん疲れがたまり、顔色のよくないHくんを見かねた同期入社の女性が、

「Hくんさぁ、Mのウワサを聞いてない? 仕事かわってばかりじゃない。利用されてるのかもよ?」

と、社内でのMちゃんの評判を教えてくれました。そういえば! と思い当たるフシがたくさんありすぎて、顔が青ざめてしまったHくん。同期の女の子から、

「仕事とか趣味では細かいところに目配りできて、気がきく性格なのに、女の子のこととなると……そうはいかなんだね」

と言われて、今度は顔が真っ赤になってしまったのでした。

気がきいて、細かいところにもこだわって配慮ができる。そんな男性は、きっとやさしい性格、やさしすぎる性格の持ち主なのかもしれません。

だからこそ、女の子となると、全面的に信頼して、手助けしてあげたい、自分にできることなら何かしてあげようと思ってしまうのかも。でも、そこにつけこまれてしまうこともときどきあるのです。

こだわりの趣味に没頭するとき、試行錯誤したり、調べものをしたり、あれこれ工夫をしていると思います。

女の子を見るときも、そこまで「こだわって」とは言いませんけれど、もう少し情報を集めたり、周囲の意見に耳を傾けてみたりしていると、自分ひとりではわからなかったことも少し見えるかもしれません。自分が女の子を見る目にも、少しだけこだわって、女性を見る目を肥えさせてほしいなと思います。

*  *  *

酒井冬雪です。とはいえ、女の子を見る目が「あまあま」な、そんな心の広い男子も、それはそれでいいなぁと思う今日このごろです。女の子に関しては、ちょっとウカツだったりする男性がモテたりしますし。では、よい週末を!