女性といると緊張してうまく話せない、という男性がいます。しかし、そんな男性も、男同士ならば、そんなに緊張せず話ができる、ということが多いはずです。とてつもなく人見知りで、男女関係なく、人と話すのに勇気がいる……という人もいるでしょうけれど、それでも、ある程度の慣れる時間があれば、男性となら気楽に話せるようになる場合が多いのではなかろうかと思います。

それでは、どうして相手が女性だと緊張してしまうのでしょう。慣れていないから、何を考えているのかよくわからないから、理由はいろいろ考えられます。

が、理由のひとつの中に意識しすぎてしまうから、というのも挙げられるような気がします。


Oくん(26才)は、某IT企業で働いています。小さい頃から、クセのない外見とイヤミなことを言わないサッパリした性格の持ち主で、もめごとを起こさず、周囲に溶け込むのが上手なタイプでした。

そのため、女性にモテないことはなかったのですが、中学校から男子校育ちというせいもあり、なんだかんだ男同士でいるのが楽しくて、見かけとはウラハラにあまり女の子と付き合ったことがないまま社会人になったのでした。

学生時代はそんなに気にしていなかったけれど、社会人になってから、周囲の女性たち、特に年上のお姉さまに、

「彼女いるんでしょ」
「モテそうだもんね」

とひんぱんに言われるようになり、本人的にも(やっぱり、彼女いないのはそろそろまずいかな)という気持ちになってきました。

そこでOくんは、同じ会社の人や仕事の知り合いとは違うところで彼女をつくるようにがんばってみようと考えました。

久しぶりに、学生時代の部活の先輩に連絡を取り、誰かいい人がいたら紹介してほしい、と話してみたOくん。先輩のEくん(29才)は、Oくんのモテそうな外見とウラハラな奥手ぶりを知っていたので、大ヨロコビで合コンをセッティングしてくれました。

ところが、Oくんは、いざ合コンに行ってみても、ほとんど女性と話をすることもできず、黙ってニコニコ座ってお酒を飲むばかり。先輩のEくんから、

「誰か、気になる子いた?」

と聞かれても、

「いや、本当、みんないい人そうなんで」

とにえきらない返事をする自分がいました。やさしいEくんは、そんな後輩に「ダメだろ」なんて言ったりせず、黙って困ったような顔をするばかりです。

Oくんは、賢い男子だったので、いつまでも先輩に迷惑をかけるわけにはいかないと思い、そもそも自分はどうして女の子が「みんないい人そう」と思って、誰かひとりに決められないのだろうか? と考えてみることにしました。

すると「みんないい人」と言っている心の奥底には、自分が誰か一人を選んで、その人にフラれたらどうしようという不安な気持ちが見え隠れしていました。

だから「みんないい」と言っておけば、いずれは女の子たちの中の誰かが自分を選んでくれるかもしれない。

その人が、そんなにイジワルそうでなかったら、やさしそうな人だったら、付き合ってもいいかな、と思っている自分がいたわけです。というようなことを、先輩のEくんに話すと、

「そうか……、でも、誰かにフラれるどころか、まだ誰とも何も起きてないだろ。周りからどう見られるかとか、嫌われたらどうしようとか、そういう段階になってからそういう心配すれば? 女の子のこととなると、あれこれちょっと意識しすぎじゃね?」

と言われてしまったのでした。

たしかに、先輩の言うことはもっともだけれど、女の子と知り合うと嫌われるかもしれないというのは不安要素のひとつだし、フラれたとか、女性の前での間違った言動とか、そんなことが友人に知れたら恥ずかしくて生きていけない……という心配があるのも事実なのでした。


これがもし、男同士の友人関係、人間関係の話だったらどうだったでしょう。100人の人がいて、100人全員から好かれるなんてことはないから、時には嫌われてしまうこともあれば、苦手な人もいるし、自分だって苦手なタイプの人はいる。たしかに、そんなふうに割り切って、冷静に考えることができるはずです。

ところが、こと女性のこととなると……好かれない、嫌われる、苦手と思われる、どんなふうに評価されているか不安、といったことが、恥ずかしさや不安になって、とても大きく心にのしかかってきてしまう。女性の前では緊張する、意識しすぎてしまうタイプの男性ほど、こういった傾向が強いようです。

意識しすぎるので、女の子特有の小声のおしゃべりやくすくす笑いといったことも「もしや、オレのことを笑っている?」と心配になってしまうこともあるかもしれません。

でも、女の子ってそんなにイジワルではありません。たしかに、中高生のときは、きつく批判的に、厳しい目で男子を見ていた女子もいたかもしれないけれど、大人になって恋愛をしたりすると、もっと寛大な目で男子のことが見られるようになっているのです。

ですから、どうしても女性を意識しすぎてしまう、悪いほうへ悪いほうへ考えてしまう男性は、相手の女性を女の人と思わずに接してみてはどうでしょう。

(この人は、男友だちみたいなものだ。女の人として意識しないで話してみよう)

というような感覚で、接してみるわけです。もちろん、キレイな人やかわいい人を見たら、緊張してドキドキして、舞い上がってしまうこともあるはずです。けれど、そんなときは、男性で容姿がいい人と接しているときの気持ちを思い出して、(いいよな、イケメンで)(でも、顔ばかり見られて、外見しか見てもらえなくてつらいこともあるかもしれない)と考えてみるのです。

そんなふうに、考え方をかえてみるだけで、だんだん緊張もほどけてくるはずですし、意識しすぎることもなくなることでしょう。そうこうするうちに、この人は女性だけれど、男同士のように話せる気持ちのいい人だとか。この人はキレイだけど、なんとなく性格が合わないな……男同士だったら、友だちにならないタイプだ。といった判断がついてくるようになると思います。

女性のことも、まずは「この人が男で、男同士だったら」というように考えてみると、これまで緊張して、意識しすぎていて見えなかった女性の内面のことが見えてくるはずです。

女性のことを意識しすぎてしまう傾向がある人は、ぜひ、仮想「この人が男子だったら」をアタマの中でやってみて、緊張しないように話してみる……そんなことろから女性に慣れていってほしいものです。


酒井冬雪です。3月末にインフルエンザにかかり、久しぶりに「まいった」と思いました。なんでしょう、年齢のせいか、治りの悪さとか……。みなさんも、季節の変わり目に体調を崩したりしないよう、くれぐれも健康に気をつけてください。では、またね。