この間、某大学の数学の先生とお会いしました。自慢じゃないけど、私は「数学さえなければ~」と、ずっと思ってきたタイプです。方程式を習っても、数字を入れ替えられると(そういう発想自体にダメダメ感が漂ってます)もう、チンプンカンプン??? 待って、数字はかえないでーと心の中で涙を流してきました。

ところが、数学が大好きという人は、

「数学は『絶対』がある学問。あいまいさがなく、絶対に正しい答え、証明がある学問だから、スッキリする」

と言います。そう言われると、そうよね。数学って「絶対がある学問だよね」とシミジミしてしまった私です。

しかし、女性に、恋愛に、人間関係、人と人との約束に「絶対」はない……と言っても過言ではないと思います。


某飲料メーカーの研究所で働くGくん(28才)は、最近、上司にすすめられてカジュアルお見合いをしました。

特に結婚願望が強いわけでもないのですが、上司のすすめだし断れない……と生真面目に出かけていったのですが、そこにあらわれたWちゃん(サービス業、25才)が、あまりにかわいかったので、すっかり気分がよくなってしまったそうです。

幸いなことに、WちゃんのほうもGくんに好印象を持ってくれたようで、ふたりで出かける約束を取り付けることもできました。

彼女の電話番号とケータイメールのアドレスを教えてもらい、デートのセッティングを考えたGくん。

ところが、Wちゃんはシャイな性格なのか「どこでもいいです」「本当に、なんでもいいです」「どこでも大丈夫です」

と言います。それじゃ、

「映画を観に行く?」と聞くと、

「映画はちょっと……」
「ドライヴはどうかな?」
「ええ……どこに行くんですか?」
「……海、とか?」
「寒くないですかね?」
「……博物館とか、水族館とか?」
「……土日は混みませんか?」

なんでもいい、と言いながらこちらが何かを提案すると難色を示すWちゃん。けっきょく、あれこれ提案してからの彼女の答えをまとめると、

(遠出はダメで、アウトドアも苦手そう。かといって、映画のように暗いところで集中するのもダメかも)

「それじゃ、とりあえず待ち合わせだけして、お茶でも飲みながらどこへ行こうか考えようか?」

と言うと、

「いいですね! 絶対、いいです!」

とうれしそうに、返事をしたWちゃんです。(絶対、いいね……。たぶん、ウィンドウ・ショッピングとか街歩きをしながら、話題のカフェやレストランで食事をする……みたいなことが好きなのかもしれない。まいったな)

と思ったGくんです。

というわけで、翌週の休日に、青山で待ち合わせをして、ブラブラふたりで歩きながら、Gくんは、雑誌で見た女の子の好きそうなカフェにWちゃんを連れていきました。

ところが、紅茶を飲みながらGくんが一生懸命仕事の話をしても、なぜだかWちゃんは仏頂面で、心ここにあらずというようすです。

「どうしたの? 歩きすぎて疲れた?」

とたずねると、

「新しいクツをはいてきたんで、たくさん歩いたからくつずれができちゃったみたいです。あーあ、やっぱり車で出かければよかった……」

(えー、ドライヴはと聞いたら、イヤな顔をしたのはそっちじゃないか)

というわけで「足が痛い」としかめっ面のWちゃんを電車で家まで送り、考えていたよりも早い時間にひとりで家に帰ったGくん。上司のすすめで知り合ったのだし……と、その後も、何度かWちゃんをデートに誘いました。しかし、やっぱり、どこかへ行く前は、「うわー、絶対いいです。楽しそう」

と言うのに、帰り際にはだんだん、

「疲れた」「昨日はあまり寝てないからつらい」とけっきょく文句を言うWちゃんを、どうすれば楽しませてあげられるのか、Gくんはすっかり困ってしまったのでした。

せめて、絶対いいとか、絶対楽しそうとか、「絶対」ということばを気軽にたやすく言ってくれなければ、こちらも「今度こそ」と期待しなくていいのに……と、マジメなGくんは考えるのでした。


「絶対、行きます」「うれしい。絶対いいですよね~」と、女の子から言われると、男性としては、

(そうか、そんなにヨロコんでもらえるのかな)と期待してしまうと思います。男性だけではありません、女性だって「絶対行くよ」と言われたら、(よかった。OKしてもらった)とホッとして、うれしくなってしまうはずです。

ところが、出かけた先で、また出かける前にどんなことが起こるかはだれも予測できず(予測はできてもはずれることがある)、自分の力ではどうすることもできない何かのせいで「絶対」という約束が反故にされたりすることがあったりします。悲しいけれど。

論理的思考をし、モノゴトはキチンキチンと進めていく、几帳面な性格の男性が、気まぐれだったり、不機嫌だったりする女性と出会ってしまうと「絶対」がグラグラとゆらぐ場面を経験するかもしれません。

けれど、女の子や恋愛というものは、予測不能なところが楽しい。絶対などあまりなく、思いがけない結果が待っているかもしれない。そういう場を、何度か(何度でも)経験しておくと、忍耐強く、強い心を持つ男性になれるはずです。

女の子から「絶対」を反故にされても、これは人生修行の一環なのだと、めげない気持ちを持って、恋愛に挑んでいってほしいなと思います。

いえ、あの、そういう場面に慣れることはあまりないと思うのですが、ある種のあきらめや悟りは、女性をひきつけるセクシーさにツナがってますので。モテる男性になるための試練と思って、ガマンしてあげてほしい気持ちでいっぱいです。


酒井冬雪です。いよいよJリーグも開幕です。今年は、サッカーを観るだけでなく、自分もカラダを動かすほうもがんばりたいと思います。つらいだろうけど。では、またね。