【コラム】

理系のための恋愛論

233 新年、気持ちの切り替え方を考える

    酒井冬雪  [2007/01/05]

    失恋しても素早く立ち直れる人もいれば、なかなか立ち直れず、長い時間落ち込んでいる人もいるのはどうしてなのでしょう。なんの自慢にもなりませんが、私は失恋などしてしまった日には、立ち直るのにものすごく時間のかかるタイプです。

    失恋しても(すごい修羅場を踏んだにもかかわらず)2週間くらいで立ち直る友人Kなどを見ると「(み、み、見習いたい…………)」と思わずいられません。

    新年早々「失恋」話かい? と自分でもいいたくなります。が、新しい年を、新たな気持ちで迎えるためにも、失恋などのつらいことが起こったときの「気持ちの切り替え方」について考えていきたいと思います。

    某家電メーカーで働くWくん(32才)は、昨年の夏、8年間付き合ってきた学生時代からの恋人と別れました。彼女が突然、「もしかすると、好きな人ができたかもしれない」と打ち明けてきたからです。

    その打ち明け方がまるで、友人に相談でもしているような感じだったため、Wくんは怒ったり嘆いたりする機会を失ってしまいました。そして、気が付くと、彼女はその「好きかもしれない相手」とくっついてしまい、挙句の果てには、

    「フツウさ、彼女から『他に好きな人が』なんていわれたら、怒ったりするはずじゃない。なのに、私の相談に乗ってくれるなんて、それはすでに彼氏じゃないよね。私たちの関係ってもう恋愛じゃなくなってたんだね」

    と、向こうにいわれてしまった始末です。

    彼としては、円満に友だちのまま、大人っぽい態度で別れることができたと思っていたのですが、周囲はそうは思わないようです。仕事でイージーミスを繰り返す。母親からは「読書の趣味が変わって、暗い本ばかり読んでいる」といわれる。友人にやたらと気を遣われるようになった。通っている英会話学校のテストの結果がおもわしくない。趣味のクレー射撃に「のめりこみすぎているんじゃない?」と妹から心配される。

    自分ではそんなつもりはないのに、モノゴトがスムーズにいっていないのでは? 周囲から指摘(心配)されてしまうのです。

    そんなことをいわれても、モノゴトがうまくいかない時期というのは誰にでもあるものだし、それがすべて彼女と別れたせいであるわけがない…………と彼は思います。ですので、周囲の人々の話は聞かないようにして、ひたすらこんな厄みたいな時期が過ぎ去ってくれるのを待とうという気持ちになっていました。彼女と別れてから半年ほど経ったころ、彼は親しい上司から、

    「W……ちょっとやせすぎじゃないのか? 何ていうか、やつれてみえる」

    といわれました。そういわれて、家で体重計に乗ってみると、5キロもやせているではありませんか。もともと細いタイプだったので、5キロというのはけっこうたいへんな数字です。

    彼女と別れてから半年も経っているのに、仕事ではいまだにイージーミスの連発中、英会話学校にはここ2カ月ほど足を運んでもおらず、休日はうるさい妹をさけ、友人とも会わないようにして射撃場に通うだけ。

    よくよく考えてみると、仕事に対する熱意や情熱のようなものを感じることなく、「(早く今日が終わってくれればいい)」という感じで過ごしていたかもしれない。いや、仕事だけでなく、イロイロな面でもやる気をなくしているように思えます。

    そう気づいたとき、元彼女から「ごはんでも食べに行かない?」とメールが届きました。

    会いたくないと思いましたが、自分がこんなふうになってしまったのが本当に失恋のせいなら、彼女の意見も聞いてみたいと思い、Wくんはふたりで食事に出かけることに合意しました。

    久しぶりに会った彼女は、彼の顔を見るなり「なんか、すごくやせたね」といって黙ってしまいました。そして、「実はね、会いたいって思ったのは、妹さんが私のところにきたからなんだ」といいました。「(妹が? 何をいったんだー!)」と内心ハラハラしながら素知らぬ顔をしていると、

    「妹さんに、兄とどうして別れたのか教えてほしいっていわれたの。詳しいことはいわなかったけど、私に別に好きな人ができたことと、Wくんにそのことの相談にのってもらったことを話した」

    Wくんとしては、妹の行動にいちじるしく男のプライドをキズつけられ怒りの炎がメラメラしていましたが、それを彼女に見せるのはますますみっともない気がして黙っていました。

    「そうしたら、妹さんがすごい剣幕で怒り出して『そもそも、自分の彼氏に好きな人ができたって相談するなんて、勝手すぎる。そういうのは、女友だちにでも相談すればいいじゃないですか? 友だちいないんですか? まあ、女を敵にまわすタイプっぽいですもんね』って、イロイロいわれちゃって……」

    Wくんとしては、妹にかばわれるなんて……とやるせない気持ちでしたが、驚いたことにその反面、なんでもズケズケいってしまう妹に「ありがとう」といいたくなる気持ちもわいてきたのです。

    「ああ、妹が勝手なことして悪かった。ごめん。でも、そうだよな、たしかに……。今にして思えば、あのことは何もわざわざオレに相談しなくたって、女の子の友だちにでも相談すればよかったと思うよ」

    そういうと、席を立って店と元彼女を後にしたWくんでした。元彼女のことで、妹に対するように相談に乗ってしまったことも、ふざけるな、という本心を押し隠して平静を装ったことも、なんとなくスッキリしたような気がします。考えてみると、元彼女は親しい同性の友だちがあまりいなかったかもしれない。次に恋人をつくるときは、同性からも好かれる人にしよう、と新たな決意も生まれました。

    妹には後日「余計なことをするな」と釘を刺しておきましたが、それ以来、フシギと今までどおりの自分に戻れたように感じるWくんなのでした。

    失恋したとき(失恋でなくても、他のことでも失敗をしたとき)は、どこかでキッチリと区切りをつけたほうがいいと思います。

    たとえば、1週間だけ夜はシクシク泣いたらもう泣かないと設定してみるとか。2週間だけ落ち込んだらもう落ち込まないと決めてみて、その2週間は身だしなみにも気を遣わず、すべてにやる気をなくして心の底から落ち込んでしまうとか。時間はそれぞれ、心のキズの度合いで自分で決めて設定してもいいですが、3カ月以上(本当は1カ月以上といいたい)落ち込みつづけるのは、生きている貴重な時間がもったいないのでやめてほしいところです。

    こと恋愛に関していうと、最近は特に自然消滅というか、なんとなくフェイドアウト、友だちのまま別れる……という人がふえてきているようです。この別れ方は、大人でスマートな感じですが、別れる原因をつくったほうに有利にできているため、本当はそうしたくなかったのに別れさせられた側へ2倍のつらさがかかってくる気がします。

    別れた後も友だち……は悪いことではないかもしれませんが、どこかで区切りをつけること、たとえば、いいたいこと(恨み言とか、自分はキズついたとか)はキッチリいう。

    単なるお人よしにならず、やるべきことはちゃんとやって、相手の行動ではなく、自分の心にしっかりと区切りをつけることが大切なのです。

    そうすれば、えんえんと落ち込みつづけることなく、新たなる一歩を踏み出せるように思えます。前の恋愛のことで反省はするけれど、ずるずると後悔はしない。恋がおわったときは、そんな気持ち心に区切りをつけて、できるだけ早めに失恋を乗り越えてほしいものです。


    あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。私はこの冬、めずらしくもすでに何回かの風邪を引いてしまいました。1月~2月は元気に過ごしたい気持ちでいっぱいです。みなさまも健康でよい1年を送ってくださるよう、お祈りしています。

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