【コラム】

理系のための恋愛論

169 男同士のシット

    酒井冬雪  [2005/04/01]

    シット……それは女の子の専売特許とカン違いしている男性は多いものですが、実はそんなことはありません。男の人にも、シット心は思いっきりあるのです。

    ところが、「オレは(男は)シットなんかしない」と心の底から思い込んでいる人がいるから困りもの。そんなはずない! と思い込んでいるだけに、男のシットはとてもやっかいなのです。

    某ゲームソフト会社で働くKくん(28才)は、同期入社の友人Tくん(27才)にはしょっちゅうイライラさせられていました。Tくんは、悪いヤツではありません。というか、どこからみても、とってもいいヤツなのでした。仕事に対して誠実ですし、人がいやがることもすすんで(しかも、さりげなく)引き受けます。まじめだけどギャグのセンスがあり、上司から、後輩から、女の子からも好かれる性格です。

    Kくん自身、仕事上でフォローしてもらったことは度々ですし、落ち込んでいるときに飲みに誘ってもらうなど、気遣いをされることもしばしばありました。考えれば考えるほど、なぜTのことでイライラするのかわからないのでした。
     
    ある日のことです。退職する先輩の送別会があったので、Kくんも仕事を早めに切り上げて、Tくんと会場へ向かいました。彼らが働く部署に、派遣できているHちゃん(27才)もいっしょです。

    Hちゃんは、会社の中でも「キレイだよね」と評判の女の子ですが、あまり愛想がよくなくて、無口なタイプなので、Kくんはほとんど話したことがありませんでした。ところが、送別会の席では、なぜかHちゃんのとなりに座ることになってしまったのです。お酒が入って、場は盛り上がってきましたが、無口なHちゃんと、女の子にはシャイなKくんの間に会話はすすみません。

    すると、Hちゃんをはさんで反対側の席にTくんがやってきました。Tくんは、Hちゃんに料理を取って運んできてあげたり、Kくんのグラスにビールをついだりしながら、
    「そういえば、Hちゃんって格闘技系好きなんだよね。Kもすごい詳しいよ」
    というと、またふら~っといなくなってしまったのでした。

    その後は、
    「えっ? Kさんって、格闘技見に行ったりするんですか? K-1? PRIDE?」
    と、Hちゃんのほうから熱心に問いかけてきて、すっかり話が盛り上がった二人です。おまけに、今度、いっしょに試合を見に行こうと約束までしてしまって、Kくんとしては内心、うれしくてうれしくて天井まで舞い上がっちゃいそうな勢いでした。

    そんなふうに、Kくんがひとりで舞い上がっているところに、Hちゃんが突然、
    「Tさんって……」
    とTくんの話を切り出してきました。Kくんはわれにかえりました。
    (ハッ、そういえば……。さっきTがこっちの席に来て、この話題をふってくれたから、Hちゃんとここまで話が盛り上がったんだ。もしや、あいつ、オレに気を遣った?)
    そう思うと、またもや彼に対するイラ立ちがムクムクとわいてきます。Hちゃんは話をつづけました。

    「Tさんって、だれにでも気軽に声とかかけられて、私、人見知りなんですごく助けられてるんですよね。ああいう人がいないと、派遣の期間中、だれとも話もできないままおわっちゃったりして」
    「そうなんだ」
    「うん。ああやって、だれとでもすぐ親しくなれるって、うらやましいですよね。でも、うらやましい反面、ムカつくときもあるんですよね」
    「えっ?」
    「Tさんはぜんぜんそんなつもりないだろうけど、かわいさをウリにしてる、みたいな感じがしちゃって」

    Kくんは思わずブーッと吹き出してしまいました。

    「女だけじゃなくて、男の人でもいるんですよ、絶対。かわいさをウリにできる人って。自分はああなれないから、ときどきムカついちゃうんですよね。男のくせにそれができるTさんが……。ジェラシーかもしれない」

    Kくんは、あまりにも率直なHちゃんの「Tへの見解」を聞いて、ようやく気が付いたのでした。
    (そうか、Tに対するオレのイライラの正体も、シットだったのかもしれない)
    「Kさんも私といっしょで、人見知りで不器用そうですね」と、Hちゃんに笑われたKくんでした。

    それ以来、Hちゃんとはとても親しくなって、自分の気持ちをいろいろと話せる仲になりました。これもTのおかげか……と思うと、心の中でシットの炎がメラッと燃え上がったりするのですが、(かわいさをウリにしやがって)と思うと、そんな気分もぷっと笑い飛ばせるようになったKくんなのでした。そして、自分の気持ちを整理してくれたHちゃんのことが、ますます好きになるのでした。

    彼女や恋人にシットするのはまだ「ある」ことだけれど、同じ男で、しかも友だちや仲のいい人にシットするなんてありえない……と思う男性は多い。けれど、男同士のシットって、よくあることなのです。よくあるけれど、気付かないだけに根深い感じ。もしや、自分にも「ジェラシー心」があるかも、と気付いたら、スナオにそれを認めて上手に付き合っていくことが大事です。女の子は、それがわりとうまくできているものなので、仲がよくて口の堅い女の子に自分の気持ちを打ち明けて、スッキリするのもいい手ではないかと私は思います。


    酒井冬雪です。髪を切りました。「すっごい短いね」と驚かれます。自分ではそんなつもりなかったのですが、たしかに洗うときに、あまり手ごたえがないし、すぐ髪が乾くような。私より、髪の長い男の子が世の中にはいっぱいいるし……。ちなみに私、昔からボウズの男の人がとても好きです。ではまたね。

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