【コラム】

理系のための恋愛論

168 引越しは恋のきっかけ

    酒井冬雪  [2005/03/25]

    春といえば引越しの季節です。引越しってタイヘンです。引越し魔の私がいうのだから間違いありません。荷造りだって、けっこうハードですが、女の子はその前に、荷物の重さにやられます。

    というわけで、引越しを手伝ってくれる男の人がいたら、それだけでもう私の心は彼のもの……という気分になる可能性は大きいと思います。男の子の側としては、彼女の心が自分のものにならなくとも、彼女の部屋に立ち入ったり、彼女の暮らし振りを見たりできるだけでも、かなり役得ではないかと思うのですけれど。

    某製薬メーカーの研究所で働くSくん(33才)は、ひとり暮らし歴4年。20代のころは会社の寮で生活していたのですが、30才になる前に寮を出て、アパートでひとり暮らしをはじめたのでした。

    寮で暮らしていたときは、食事や風呂、クリーニングなどの家事や雑事は寮任せでしたが、ひとり暮らしをはじめてからは、何でも自分でやらなくてはなりません。実家で暮らしていたときも、家では何もしなかったタイプだったので、ひとり暮らしをはじめてからやっと、家事のタイヘンさを知ったわけです。

    とはいうものの、もともと器用なタイプだったので料理もそこそこできるようになったし、洗濯もうまくなりました。「オレって何でもできるじゃん」と自画自讃したくなったくらいです。中でも、Sくんがいちばんハマった家事は「そうじ」でした。几帳面な性格で、会社の仕事をする場所もいつもきれいにしていましたし、デスク周りの整理整頓、資料や書類の管理もいつだってバッチリです。

    ひとり暮らしの部屋は、会社のデスク周りの延長のようなものだ……と彼は考えました。キッチン周り、トイレ・風呂周り、寝室周り、リビング周りとスペースを区切って考え、曜日ごとに場所を決めて、そうじをすればいいわけです。

    彼がどんなにきれい好きかというと、朝、出勤する前に必ずそうじ機をかけます。それから、テレビのCMで「これ、使えそう」と思ったそうじ器具や洗剤は、必ず試してみるようになりました。最近、愛用の品はファブリーズとアレルクリンです。雑貨屋さんやスーパー、ドラッグストアに行くと、つい台所用、風呂場用、トイレ用スポンジの新製品をチェックしてしまいます。

    こんな彼ですが、同じ会社に好きな女性がいました。営業の仕事をしているMちゃん(27才)です。Mちゃんとは、仕事では顔を合わせる機会がありませんが、ふたりとも会社の英会話サークルに入っているため、運がよければ月に一度は会うことができる、という関係でした。二人とも、仕事が忙しくて、なかなか週に1回のサークル活動に参加できないのです。

    あるとき、Sくんは、久々に英会話サークルでMちゃんと会う機会に恵まれました。英語の勉強がおわってから、何となくMちゃんのほうに流れていき、うまく二人でいっしょに駅まで帰る方向にこぎつけました。すると、Mちゃんがこんなことをいうのです。

    「今、引越しの準備してるんですけど、ぜんぜんおわらなくて落ち込んじゃって」
    「引越しって、ひとり暮らし?」
    「住み替えなんですよ。今の場所だと仕事の担当エリアから遠くて、体力もたないから引っ越そうと思って」

    Sくんは、アタマの中であれこれ悩みましたが、思い切っていってみました。
    「あの、よかったら手伝おうか?」
    「ええっ、そんな」
    Mちゃんはものすごくビックリしたようですが、Sくんはかまわず押してみました。
    「あっ、ボク、自分でいうのも何だけど、整理整頓上手でそうじ好きだから。引越しの荷物まとめとか得意なんだ」
    「ホントですか?」
    「いや、彼氏とかが手伝ってくれるなら、かえってじゃまだろうけど、ホントにいいよ、手伝いに行っても」
    「彼氏なんて忙しすぎていないんですよ。もしよかったら、お願いしていいですか?」
    というわけで、その週末、SくんはMちゃんの部屋に行ったのでした。

    Mちゃんの部屋は、とっても散らかっていました。片付けられない女? とあぜんとしたSくん。Mちゃんは申し訳なさそうに、
    「自分でももう、どうしていいかわからなくなっちゃって」
    といいます。Mちゃんの家に来るまでは、
    (引越しの片付けとかいいながら、いい感じになったらどうしよう)
    なんて、モンモンとしていたSくんですが、そういうヨコシマな気持ちはきれいさっぱりなくなりました。
    「まず、いらないものは捨てよう」
    とキッパリいって、Mちゃんを思う存分働かせながら、部屋を片付け、必要なものを荷造りしていったそうです。

    「あの部屋をみたときは、百年の恋もさめる……と思ったけど、片付けおわったときには、なんていうかお互いに達成感があって同志になれたなあと」

    最近では、引越しをきっかけに仲良くなって、Mちゃんの家にそうじの手伝いに行ってあげたり、デートをしたりしているそうです。

    このように、引越しをきっかけに二人の距離がぐっと縮まったりすることもあるのですから、この春引越しする予定で、手伝ってくれる人がいない女の子に、救いの手を差しのべてみましょう。

    また、引越しする予定の男性を手伝ってあげると、彼の彼女が来ていたりして、後日彼女の友だちとやらを紹介してもらえることだってあるかもしれません。女性に限らず、困っている人を助けると、いいことが待っているはずだと、私は思います。


    酒井冬雪です。引越し好きだったので(一応、過去形)、荷物は少ないです。重たい持ち物はテレビと冷蔵庫と本とパソコンでしょう。なくなったら困るものは、たぶんネックレスとかピアスとかじゃなくて、パソコン。パソコンが使えない状況を想像すると、恐怖にカラダが震えます。では、またね。

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