【コラム】

理系のための恋愛論

47 ぼくの彼女はワガママなんです

    酒井冬雪  [2001/10/26]

    「ぼくの彼女はワガママなんです」「ぼくの奥さんは自分勝手なんです」と打ち明けられることはわりと多いです。

    そう相談されると、心の奥底で密かに(ううん。わたしがいかにもワガママで自分勝手そうだから、そういう女性の気持ちに精通していそうだと思われるのかも)と、うっすら考えてしまわないでもありません。

    それでも、気を取り直して彼女がどんな風にワガママなのかを聞いてみると、
    「彼女に『何が食べたい?』と聞いたら『何でもいい』と答えたくせに、いざ自分がどこかへ連れていくと『今日は和食って気分じゃなかった』などという」といったところから話は始まるのですが、こういう話は最後にはたいていセックスの問題へと向かいます。

    「お互いに仕事が忙しくて、2週間ぶりにようやく会ったのに『生理だ』っていうから、『じゃあ口でしてくれる?』と頼んだのに断られた。すごいワガママだ」とか、
    「奥さんがニンシンして、セックスを拒むようになった。『だったら手か口でして』といったら、それすら拒否された。奥さんを大好きだし、このままセックスレスになるのはいやだ。だいたい、勝手すぎやしないか」というような話になっていくわけです。

    こういうとき、わたしは、
    「へ~、ふ~ん、そうなんだ。それは自分勝手な彼女だよね」などと決していったりはしません。もっと詳しく状況を聞きます。
    「で、彼女は生理だっていうけど、生理の何日目か聞いたの?」「奥さん、ニンシンって、今は何週目くらい?」
    すると、
    「いや、ハッキリ聞いてないけど、たしか生理が始まったばっかりっていってた」
    「えー、ニンシンして4カ月?」
    と、あいまいな返事がかえってくるのです。

    あいまいな情報を頼りにしながら、わたしは説明をします。
    「あのね、生理っていうのは最初の日から、3日目くらいの間がいちばん出血も多いのよ。その間はだるくて疲れやすくて、イライラしたり、急に悲しくなったりしやすいの。その上、生理痛がひどかったりしたら、腰だのお腹だのが痛くて動けないときもあるんだからね。カラダがそんな状態なのに『できないなら口でしてくれ』っていわれてもねえ。逆に考えてごらんなさい。自分が頭痛や下痢や歯痛で苦しんでいるときに、彼女に『口でしてよ』といわれたらどう思う?」

    奥さんがニンシンしているという彼には、さらに質問をしました。
    「ふ~ん、4カ月。奥さん、つわりで苦しんでない?」
    「そう、苦しんでる。何も食べられなくなっちゃって、5キロもやせちゃったんだよ」
    んまあ、やっぱりです。
    「あのね、つわりには効く薬もないんです。たとえ薬があったとしても、おなかの赤ちゃんに影響がでちゃうかもしれないから薬も飲めないの。一日中、乗り物酔いしているような感じで気持ちが悪い上に、食べ物も口に入らなくて弱ってる女性に、よくもまあ『手か口でして』なんていえるわねえ。そんなことを頼んでプレッシャーをあたえるヒマがあったら、彼女の気持ちをリラックスさせる方法とか、食べられる物を探してくる努力とかをしたらどうですかっ!」
    と、ついキツくいってしまったくらいです。そうしたら、ふたりとも、
    「知らなかったんだ」「誤解してたかも」
    とシドロモドロになりながら、
    「そういえば、彼女、生理だっていうのに、会社の帰りにデパートに寄って、ぼくの好きなお惣菜を買って、電車に乗ってアパートまで来てくれたんだよね」
    「自分はつわりで何も食べられないのに、毎日、きちんと食事の支度をしてくれてる」
    と、思い出してくれたのでした。

    カラダのこと、特に、生理や避妊や性病やニンシンの話となると、女の子が男の子に説明をしない…という問題はたしかにあるのでしょう。また、女の子自身も、自分のカラダに異変がおこらない限り、その問題に無頓着だったりする場合もあるようです。おまけに、生理の話や避妊の話をしようとするとあからさまにイヤな顔をする男性は多いので、女性もそれ以上、ムリをしてまで恥ずかしい話を持ち出したりはしなくなってしまいます。

    というわけで、何とはなしに、女の子のカラダのことは、聞いてはいけない「秘密」めいた問題と思い込む。それ以前に、そんなことを聞くのはもちろん、考えるのもよろしくない。女性のカラダのことは、女性本人にまかせておけばいいではないか、と信じている男性はたくさんいそうです。

    だからといって、女性のカラダの仕組みを知らないまま放っておいて、一方的に自分の欲望や要求を押し付けて、それがふたりのケンカのタネになってしまうのはいかがなものかと思います。

    ここはやっぱり、たとえどんなに聞きづらかろうとも、それが自分の彼女や奥さんの問題だったなら、きちんと聞いてみる、「家庭の医学」や女性のカラダに関する新書本などを読んで調べてみる、勉強する。さらには、彼女の症状を想像していたわって、ケアしてあげるべきです。

    女性のカラダの問題なんて、彼女や奥さんにしか聞けない話なのですから、聞いてあげて損はない気がいたします。
    「生理痛ってどんなふうに痛いの?」
    「つわりってどんな感じ?」
    「避妊はコンドームでいい?」
    というような問題について、彼女や奥さんに直球勝負で聞いてみて、ふたりで一緒にそのことを話し合ってみるのです。そうすれば、生理痛のひどいときに、足をもんであげて愛が深まったり、つわりのひどいときに飲みやすいスープを作ってあげたことで尊敬されたり、彼女がピルを飲んでもいいと言ってくれて、避妊法のバリエーションが広がったりするかもしれません。

    このようなケアをすることによってもちろん、あなた自身の、男のカラダの問題も、彼女や奥さんに話をして、わかってもらえるようになる。まさに、一石二鳥じゃないと思うので、ぜひとも挑戦してみてください。

    こんにちは。酒井冬雪です。DVDを買いました。「マン・オン・ザ・ムーン」を繰り返し何度も観ては、新潮文庫の「マン・オン・ザ・ムーン」を読み返しています。そうするとイロイロ発見があって楽しいのです。ジム・キャリーは「エース・ベンチュラ」と「Mr.ダマー」も好きなんですよね。今年の秋の夜長はビデオとDVD三昧でいきたいところです。では、またね。

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