【コラム】

理系のための恋愛論

15 ちょろい男にならないためにはどうしたらいい!?

酒井冬雪  [2000/12/01]

だれか、気になる人ができると、ウキウキして楽しい気分にひたれますが、その反面、彼女のちょっとした言動にも敏感に反応してしまい、疑りや不安を抱いて疑心暗鬼になってしまうものです。「彼女に利用されているんじゃないか?」「何か別の目的があって自分に近づいてきたんじゃないか?」などとかんぐり、自分に自信をもてなくなってしまう人は多いはず。

しかし、女のコというものは、たいていの場合ウソをつくのが上手だし、愛想も感じもよくて、あなたに対する気持ちがどういう種類のものなのかを見抜くのはなかなかむずかしいものです。逆にいうと、男のコの考えていることというのはとてもわかりやすいので、女のコからはすべてお見通しで、うまくてのひらで転がすことができちゃったりするわけですけど。

今回は、利用されるだけのちょろい男にならないためにはどうしたらいいのか考えてみることにいたします。

某デザイン事務所の経理部で働くTくん(34歳)は大のパソコン好き。デザイナーとしての腕前がイマイチだったせいで会社では経理部にまわされてしまったけれど、とてつもなくパソコンに詳しいので、マシントラブルが発生すると、まず彼にお呼びがかかるくらい、重宝がられています。

ウワサがウワサを呼び、気がつけば会社の人をかいして、取引先の会社の友だちとか、そのの友だちだとか、その知りあいだとかいう見知らぬ人から、
「パソコンの調子が悪いんですけど、どうしたらいいでしょうか?」
などと相談されるようになっていました。

あるとき、Tくんは、同じ会社で働くデザイナーから、彼の知り合いだという、広告代理店勤務のCちゃん(26歳)という女性を紹介されました。Tくんは、表参道のカフェで、デザイナー氏とCちゃんと待ち合わせをしたのですが、そこに現れた彼女を見て、ハッキリいってひとめぼれしてしまったのでした。

デザイナー氏が、TくんにCちゃんを紹介した理由は例によって、パソコンに関することなのでした。
「そろそろあたしも、自宅にパソコンほしいんですけど、お店に行ってみても何を買ったらいいかわからなくて、どうすればいいか困ってるんです」
と、控えめな笑顔でお願いをするCちゃんにTくんは、
「なんでも聞いて」
と、はりきって答えてしまっていたのでした。

そこに、勘のいいデザイナー氏が、
「いっしょに秋葉原とか、新宿につきあってあげればいいんじゃないの?」
と口添えしてくれたので、ふたりは休日に新宿で待ち合わせをすることになりました。

新宿に出かけたCちゃんは、
「何かわからないことがあったとき、イロイロ教えてもらえるから」
という理由で、Tくんが自宅で使っているのと同じメーカーのノートパソコンを購入することを決めました。そこで、Tくんはすかさず、
「ここの店だとたぶん、お店で買うより、インターネットショップで買ったほうがポイントもいっぱい還元されるし、送料も無料になるかもしれないよ。ポイントのぶんで、プリンタとかソフトが買えるかもしれないし。うちのパソコンで調べておくから。買うのはそれからにしたら」
とアドバイス。
「すごい、本当に詳しいんですね。ありがとうございます、お願いします」
とペコリとアタマを下げるCちゃんに、ますます好感を抱いてしまったTくんでした。

その翌日、Tくんのリサーチと指導に基づき、インターネットで買い物したことなかった…というCちゃんが、会社のパソコンを使って、自力で何とかパソコンをオンラインショッピングしたのでした。

数日後の夜、Tくんのケータイに、Cちゃんから電話がかかってきました。
「あっ、Tさん、今、電話大丈夫ですか? すごいビックリしちゃったんですけど、パソコンがもう届いたんです。それで、箱から出してみたんですけど、インターネットにどうやってツナげばいいのかとかわかんなくて、どうしたらいいんでしょう?」

それはちょっと無理だよ、絶対と思いつつも、Tくんは勇気を出していってみました。「そうか…よかったら行ってみてあげようか?」
すると驚いたことに、Cちゃんは即座に、
「えっ? うちまで来てくれるんですか? ありがとうございます。ホントにいいですか。うち知らないですよね。ええと、地下鉄丸の内線で…」
と、ひとり暮らしの自宅の場所を教えてくれたではありませんか。

Tくんは大急ぎで仕事を片付けると、会社の近くの有名なこじゃれたケーキ屋さんに立ち寄り、ケーキをいくつか買って、冬だというのに汗をかきながら電車に乗り込んだのでした。ケータイで連絡を取り合いながら、無事にCちゃんのアパートの部屋のトビラの前に到着したTくんは、深呼吸をしてからドアホンを鳴らしました。
「はーい、すみません、今開けますね」
ドアを開けて出てきたCちゃんは、水色とオレンジと薄いグレーの縞模様の、なにやらかわいい部屋着を着て、すっかりくつろいだカッコウで出てきました。どぎまぎしながら、彼女にいわれるがままクツを脱ぎ、部屋にあがったTくんは、目の前に出された香りのいい紅茶にクラクラしてしまったので、ぶっきらぼうに、
「で、パソコンどこ?」
と、ここに来た用事を切り出しました。

パソコンのセッティングに集中して、かわいいCちゃんの部屋にいる緊張を紛らわすことができて、すこしだけリラックスしはじめたTくんが、モニターを見ながら、
「この後、食事とか飲みに誘ったほうがいいかな」
と考えだしたそのとき、玄関のドアがギーッと音を立てて開いたのです。

ドアの向こうには、スーツを着た茶髪の長身の男が立っていました。Cちゃんはパソコンのそばを離れて、
「なんだ、来てくれたんだ」
と、その男を招き入れると、ボーゼンとするTくんに、「あっ、あたしの彼氏なんです。同じ会社で働いてるんですけど」
と説明をしたのでした。彼氏も彼氏で、
「あっ、なんかこいつがお世話になっちゃったみたいですいません」
と、茶髪のくせに愛想よくTくんにお礼をいいます。
「ホント、この人、パソコン苦手みたいで、会社でも、キーボード1本指でたたいてるんですよ」
イチャイチャモードに突入したCちゃんを見ているのがつらくなり、Tくんはそそくさといとまを告げたのでした。

その日いらい、Tくんは女性から、
「パソコンの調子を見て」
といわれると、自分は利用されるばっかりの便利な男なんだという気分になってしまい、そういった依頼はお断りしつづけているのだそうです。

Tくんがもし、かわいい女性ではなく、ただの男から「お願いごと」をされていたら、どんな対処をしていたでしょう。新宿のパソコンショップめぐりにつきあってあげていたでしょうか? 電話で接続方法を説明すればすむところを、わざわざ自宅まで出かけていったでしょうか?たぶんきっと、依頼主がかわいくもない同性だったら、そこまで懇切丁寧な対応はしていなかったのではないかと思います。

機会があって出会った女のコが「かわいかった」その現実が、彼を新宿まで、彼女の自宅まで行かせたに決まってる。けど、女のコというものは、しっぽをふって自分のところに来てくれる男を「便利だな、かわいいな」とは思っても、決して「カッコいい」とは思わないんです。

あるていど、大人で、仕事をバリバリしている女性は、しっぽをふってきてくれる男ばかり好きになったりもする場合もあるけれど、たいていの女のコはやっぱり、男性には「しっかりしてる、毅然としてる」そんな態度を求めてしまいがちなのです。

つきあっている彼女が「今すぐ来て」といっているのにかけつけないのはよくないことです。しかし、知り合って間もない、まだお互いが「好きか、嫌いか」もわからない段階の女のコに、急な呼び出しを受けたからといって、そそくさと彼女のところにかけつけたりしたら、「ちょろい男なんだ」というレッテルを貼られてしまうだけなのです。「会いたい」という欲求をおさえつけて、毅然とした態度、すこし突き放した態度を取れるくらいの男のほうが、「ああ、やっぱり仕事も忙しいみたいだし、有能な人なのねえ」とカッコいい印象を植え付けやすいといえます。

恋がはじまりそう…そんな微妙な段階のときこそ、つらいけど、タイヘンだけど、己の欲望、欲求をセーブしコントロールすることが男性には特に大切。それによって、ちょろい男などというレッテルを貼られずに済むのではなかろうか、そうわたしは思っています。

1週間のごぶさたの酒井冬雪です。先週から、うちの家族がぎっくり腰(妹)だの、おたふく風邪(姪っ子)だの、過労だの(母)でバタバタ倒れて、日ごろ家族にお世話になりっぱなしのわたしは、今こそ名誉ばん回のとき! とばかりに家事や育児を手伝っております。し、し、しかし、家事とか育児って本当にタイヘン…。ああ、仕事してるほうが楽チンだわあと実感した今日このごろです。ではでは、またね。

酒井冬雪
fuyukies@pc.mycom.co.jp

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