東日本大震災を受けて、BCP(事業継続計画)やシステムのあり方を見直す企業が増えている。だが、当然ながら、システムの見直しは一朝一夕で終えられるものではない。検討も含めると年単位のプロジェクトになることも少なくなく、その期間中に保有するサーバのメーカー保守サービスの期限が切れるといった副次的な問題が発生してしまうこともある。

そんな中、にわかに注目を集め始めているのが、メーカー保守切れ(EOSL/EOS)ハードウェアに対する保守サービスだ。同サービスを利用して、システム刷新のタイミングを適切に見極めようという企業が増えている。

「Ash(アッシュ)」「NYNY(ニューヨーク・ニューヨーク)」「STYLE DESIGNER(スタイルデザイナー)」という3ブランドで美容室チェーンを展開するアルテ サロン ホールディングスもそうした企業の1社だ。同社は、データライブが提供するEOSL/EOSハードウェア保守サービスを利用して、既存システムを延伸しながら、新規システムのための設備投資のタイミングを数年先にスライドさせた。

今回はアルテ サロン ホールディングスの統括管理部担当部長 河内信二郎氏と、データライブのリユース事業部で営業部長を務める武藤友徳氏の話から、EOSL/EOSハードウェア保守サービスの魅力を探る。

アルテ サロン ホールディングス

「Ash」、「NYNY」、「STYLE DESIGNER」などの理容室チェーンを持つ持株会社。Ash、STYLE DESIGNERについては首都圏を中心に100店舗以上、NYNYでは関西圏で28店舗を展開している。「暖簾分けフランチャイズ方式」と呼ばれる独特のシステムを確立し、品質を確保しつつ店舗数を増やすことに成功している点が大きな特徴。アルテ サロン ホールディングスでは、資金計画や宣伝、広告、システム管理など、店舗経営に必要な業務を請け負い、美容師をサポートしている。

URL: http://www.arte-hd.com

――EOSL/EOL保守サービスを利用したきっかけはなんですか。

アルテ サロン ホールディングス 統括管理部担当部長の河内信二郎氏

河内: 当社では現在、システムの全面刷新を計画しているのですが、そんな最中にシステムの運用を委託している会社から連絡があって、現在利用しているDELL製サーバが保守切れを迎えることがわかったんです。新しいシステムが稼働するまでにはあと1~2年はかかる見込みです。一方で、現在のシステムを何の保証もないなかで動かすわけにもいきません。なんとか解決策はないかとネットを探していたところ、データライブさんのWebサイトを見つけました。

武藤: ありがとうございます。実のところ、システム刷新のタイミングを1~2年スライドさせたいという企業はかなりいらっしゃいます。システムの入れ替えには、要件定義や業務フローの見直しなど数年単位の準備が必要になることが少なくありません。一方で、メーカーの保守契約は通常5年です。4年近く運用してからシステム刷新を検討するようなケースでは、どうしても保守が受けられない期間が発生してしまうんです。

河内: ええ。当社のシステムも、ちょうど5年前に今のかたちになったのですが、構築時は5年後にどういう状況になるかまでは想定しきれませんでした。OSやアプリケーションだけを別のハードウェアに移し替えようとも考えたんですが、移行費用だけで、新規に構築するくらいの料金がかかることが分かりました。ですから、保守を延長できるという選択肢は大きな助けになりました。

――どのようなシステムなのでしょうか。

河内: 店舗で用いる顧客管理、販売管理システムです。来店いただくお客様のデータと、美容師の実績も管理しています。当社のような美容室チェーンに合ったパッケージは少ないため、スクラッチで開発しました。店舗のクライアントPCで情報を入力し、その情報をデータセンターに設置されたサーバ上で管理しています。疑似ASPのようなかたちになりますね。今回契約したのは、アプリケーションサーバやデータベースサーバなど4台と負荷分散のためのネットワーク機器1台です。

データライブ リユース事業部 営業部長の武藤友徳氏

武藤: 大切な情報を扱う基幹システムと言えるかと思います。実際、ご契約されているデータセンターは、入室時に全身スキャンを行なうなど大変セキュリティが高いものでした。

武藤: ご連絡いただく際に、不安や懸念はありませんでしたか。

河内: 1つは地理的な問題ですね。当社が利用しているデータセンターは大阪にありますが、データライブさんは首都圏が中心のようで、対応していただけるのかなと心配しました。もう1つは、メーカー保守との違いです。どのくらいの時間で対応していただけるか、これまでのやり方と違う点はあるのかといったことです。まさか緊急時に新幹線に乗って部品や基盤を持ってくるようなことはないとは思いましたが(笑)、実際に話を聞いてみると、関西エリアでも支社で対応できることや、緊急時の窓口が一本化でき、これまでとフローが変わらないことが分かったので安心しました。

――システムの構築や運用はパートナー企業が担当していらっしゃるのですか。

河内: そうです。システムの構築から運用保守までの一切を1社にお任せしています。保守サービスの契約は、パートナーさんとデータライブさんが契約することで、サポート窓口はこれまでと変わらないようにしました。具体的なサービス内容の確認作業は、パートナーさんとデータライブさんの間で行ってくださっています。

武藤: 実際には、河内さんがおっしゃった不安の部分について、当社がどう対応しているのかをご説明しました。フローを変えずにメーカー保守からシンプルに切り替えられること、在庫をあらかじめ確保しておくので早ければ数時間で対応できること、サポート窓口も設けており電話一本で対応できることなどです。これらをご了解いただき、最初の電話から約1カ月間でサポート開始に至りました。

河内: 当社と直接取引するわけではないのに、1カ月というのは早いほうだと思います。当社のようにパートナーに開発や運用を依頼しているケースで、このスピード感で対応してもらえるのは結構喜ばれるんじゃないですか。

武藤: 実は今回、運用を担当しているパートナー様から御社と同じような課題を抱えていらっしゃったお客様をご紹介いただきました。当社のサービスをご説明し、ご確認いただく時間を減らすことができたので、数週間でサポート開始まで至りました。ある程度の経験がありますので、まったくの新規のお客様に関してもスムーズに進められることが多いと思います。

データライブと運用会社の間で作成した保守サービス体制図。緊急時の連絡ルートや作業内容のほか、交換パーツの配送業者までが明記されている。

――新しいシステムはどのようなコンセプトで作られるのですか。

河内: クラウドをベースとしたシステムにする予定で、現在、要件定義を進めているところです。当社は、大きく3つのグループから構成されていて、現在はそれぞれが別々の顧客管理、販売管理システムを使っています。システム刷新の目的は、これを統合することにありますが、その手段としては、クラウドが適しているとの考えです。そんななか、東日本大震災が起こったことで、システム資産を持たずに、ITを利用する形態に切り替えたいという思いが強くなりました。

武藤: 実は、BCP(事業継続計画)の観点から、当社にお問い合わせいただく例も増えています。機器の冗長化やディザスタ・リカバリ・サイトの構築でリユース品を活用するといった具合ですね。

また、業務システムを構築していく場合、クラウドサービスを利用したり、自社システム上に載せ替えたりといったさまざまな選択肢があると思いますが、特にクラウドは、業務要件を固めて業務プロセスを作るまでが大変だと言われます。そんなお客様には、ぜひとも保守サービスを選択肢の1つとしてご活用いただきたいと思っています。

河内: そうですね。当社の場合も、業務要件が固まるまでの期間がはっきりとはわかりません。保守サービスを1年間契約し、その間に次のステップに進むことができるのは大きいですね。

武藤: ありがとうございます。そう言っていただけると、苦労してサービスを用意した甲斐があります。EOSL/EOSハードウェア保守サービスは、これまで解決策のなかった部分を補うべく始めたサービスです。御社のようにお困りの企業を少しでも多くサポートできたらうれしいですね。