2本目のレンズは「COLOR SKOPAR 21mm F4.0」

レンジフィンダカメラであるエプソン「R-D1xG」での撮影の勢いは止まらず、あっという間に2本目のレンズをゲットしました。1本目のコシナのフォクトレンダー「ULTRON 28mm F2.0」に続いて購入したのがやはり同じメーカーの「COLOR SKOPAR 21mm F4.0」です。ULTRON 28mmと大差ないと思われるかもしれませんが、実質的な焦点距離は約43mmから約32mmとなり、一般的な広角の範囲に入ります。なにより21mmのビューファインダ付きというお得感が購買意欲を高めてくれました。

(1)R-D1xGとフォクトレンダー「COLOR SKOPAR 21mm F4.0」。ホットシューに乗せているのは興和製Kallo 35mmコンツールファインダ(物撮りの際に間違ってR-D1xGのファインダ画角設定を50mmのまま撮影してしまいました)

もちろん、R-D1シリーズでは撮像素子のサイズがAPS-Cのため、焦点距離が1.53倍になるという壁があるので、35mmフィルムカメラ用の21mmビューファインダをそのまま使うことはできませんが、15mmのレンズを購入したときに活用することができます。実際に15mmを買うかどうかは別として、単体で購入すれば約2万円弱の21mmのビューファインダが付属したCOLOR SKOPAR 21mm F4.0の価格(5万5000円)は、超リーズナブルというわけです。ところが、その後コシナがR-D1専用のビューファインダを製造していたことを知って少し愕然としました。現在は製造されていないようですが、このような製品があったんですね。コシナでは現在、デジタルカメラのイメージサイズに対応した「15-35mm ZOOM FINDER」というズーム式実像式ビューファインダ(5万5,000円)の発売を予定しているそうです。

Kallo 35mmコンツールファインダを持ち出す

この連載で何度も出てきましたが「R-D1xG」の内蔵フィンダ枠は28mm、35mm、50mmです。そのため、COLOR SKOPAR 21mm F4.0を装着すると撮影範囲がわかりません。そこで、Kallo 35mmコンツールファインダというファインダを使うことにしました。COLOR SKOPAR 21mm F4.0をR-D1xGに装着すると約32mmの焦点距離になるので、Kallo 35mmならそこそこ近いからです。このファインダは、我が家のガラクタ箱から出て来たもので、学生の頃に手に入れたものです。なんの目的でどうして買ったのかさえ覚えていませんが、当時はニコンF2に24mmレンズを装着して遊んでいたので、もしかするとそのセットでライカの初期モデルのようなレンジファインダすらまだ搭載していない頃のカメラの雰囲気を一眼レフで味わいたかったのかもしれません。少なくとも当時これを必要とする機材は持っていませんでした。

(2)コシナ製のビューファインダ(左/写真は25mm用)と比べると謎の製品にしか見えないKallo 35mm(右)。ファインダ接眼部が真っ黒に遮蔽されていて、その中に距離計に連動したフレームだけが見えます。これを両目で同時に見ることにより左目の風景と右目のフレームが頭の中で重なって撮影範囲がわかるというわけです

広角レンズならピントを気にせずに撮影できる

乱暴な言い方をすると、広角レンズであれば被写界深度が深いため、かなりアバウトな目測設定でも結構綺麗に撮影できます。その昔、写真科の先生から、28mmクラスのレンズを3mに設定し、被写体に突進してシャッターを切るという荒技を教えてもらい、課題に活用したことを思い出しました。とても、面白い結果が得られます。そこで、どの程度ピントの範囲が広いかの計算をしてみました。

R-D1シリーズにレンズを装着し、絞りがF5.6およびF16の時に5mでピントを合わせると、計算上は次のような範囲でピントが合うことになります。レンズの画角は左端が実際の画角。括弧の中はR-D1シリーズに装着した場合の画角。計算上のピントが合う範囲はBESSAなどにレンズを装着した場合、括弧の中はR-D1シリーズに装着した場合の数値です。

焦点距離 F5.6/5m F16/5m
90mm(約138mm) 4.96~5.04m(4.99~5.01m) 4.90~5.11m(4.97~5.03m)
75mm(約115mm) 4.95~5.06m(4.98~5.02m) 4.85~5.16m(4.96~5.04m)
50mm(約77mm) 4.87~5.13m(4.96~5.04m) 4.65~5.41m(4.89~5.11m)
40mm(約61mm) 4.80~5.22m(4.94~5.04m) 4.46~5.69m(4.83~5.19m)
35mm(約54mm) 4.74~5.29m(4.92~5.08m) 4.31~5.95m(4.78~5.25m)
28mm(約43mm) 4.60~5.48m(4.87~5.14m) 3.99~6.70m(4.65~5.41m)
21mm(約32mm) 4.31~5.95m(4.77~5.26m) 3.42~9.28m(4.38~5.82m)
15mm(約23mm) 3.80~7.32m(4.56~5.53m) 2.60~64.34m(3.91~6.92m)
12mm(約18mm) 3.33~9.99m(4.31~5.95m) 2.03~無限大(3.42~9.26m)

あくまでもこれは計算上の目安で、実際にはもう少し広範囲にピントが合っているように感じます。しかし、実際のレンジファインダ用のレンズのほとんどがフィルムカメラ用に作成されており、フォーカシングと絞りの関係はデジタルカメラで鵜呑みにできません。ですから極端な値ではありますが、実際の絞りよりも1絞り開いた状態での被写界深度が、大凡のピント範囲と理解しておけば、大きな失敗は回避できるはずです。整理すると、広角系レンズで遠くにピントを合わせるほどピントの合う範囲が広くなる傾向にあります。そのため、広角レンズで絞りを深くすれば目測での撮影も可能となります。逆に望遠レンズではピント合わせが、かなりシビアに要求されることになります。

単独の露出計を使う

なお、可能であれば単独露出計を用意しておくといいかもしれません。どんなカメラも露出測光は反射光式のため、撮影エリア内にある強い光に反応してしまいますが、入射光式であればハイコントラストなシーンを撮影するときに光に惑わされずに撮影できるために重宝します。特に画角の広い広角レンズの場合は影響が大きくなります。ということで学生の頃から色々と露出計を買い求めていた私が現在一番気に入っているのがセコニックの「MULT MUSTAR」。私の記憶が正しければ20年以上前の製品です。しかし、今もしっかり機能しています、この製品の嬉しいところは反射光測光だけでなく、入射光測光、ストロボ測光、コードレス・ストロボ測光が単3電池1本で行える点です。

(3)セコニック製「MULT MUSTAR」。20年以上前の製品ですが、マルチ測光でデジタル表示と、使いやすくて重宝しています。これでもう一回り小さいと最高です

ということで、今回は『ごくせん』や『相棒』などの撮影で使われていた駿河台大学とその周辺でCOLOR SKOPAR 21mmを試してみました。ところが、今回はせっかく探し出したKallo 35mmビューファインダを忘れてしまうという失態をしてしまいました。そのため、カメラのファインダで写り込む範囲を予測しての変則的な撮影となってしまいました。しかし、意外とそれが楽しくなり、私にとって少なくともCOLOR SKOPAR 21mmを使う場合に取り立ててビューファインダは必要ないかもしれません。失敗も作品のうちですから。

(4)今回はこれのみ最初に購入したフォクトレンダー「ULTRON 28mm F2.0」で撮影しています。多摩美術大学造形表現学部造形科の学生が描いた田園風景の油画のようなシーンだったので思わず撮影してしまいました。かなり個人的に気に入っているシーンです。なお、画面手前に大きなゴミが写り込んでいたのでそこだけレタッチしました。実は、このシーンを撮影する際に撮影した場所が奥まで入ることができない状況だったため、やむなくレタッチを前提で撮影せざるをえなかったのです(ULTRON 28mm)

(5)八高線が走る土手の傾斜と民家の指導の流れが画面に対して対角線となっているので思わず撮影。ただし、ここでも私は不慣れなための失敗をしてしまいました。イメージとしてもっと絞り込んでパンフォーカスにするべきだったのに、開放に近い絞りで撮影してしまいました。これは以前も触れたように私自身がニコンのカメラシステムを使っていたためで、全てが逆回転のレンジファインダシステムに慣れていないためです。とっさに絞り込んだと思っていたのが実は開放にしていたというわけです(COLOR SKOPAR 21mm)

(6)校内のメディアセンターと本部管理棟を結んだ中間点に位置している不思議なベンチ。ここは水谷豊主演の「相棒 Season7」第17話「天才たちの午後」で、かなり重要なシーンとして登場していた場所で気になっており、撮影前からチェックしていました。ベンチ手前にゴミは箱の角が写り込んでいたので、レタッチにて消去しています(COLOR SKOPAR 21mm)

(7))校内の多目的練習場を背にしてのワンショット。左端が講義棟、右端の高い建物が第二講義棟で、主に各学部が講義に利用している建物です。なお、画像の四隅に出ている周辺減光は個人的には意外と好きです。ただし、このショットは撮影時に若干カメラが前屈みになってしまったようで、パースが少し先細りになってしまいました(COLOR SKOPAR 21mm)

(8)ベンチの写真(図6)の左上に写っている木を下から見上げるようにして撮影。露出はMULT MUSTARにて測光。画面右下にフレアが発生していますが、とても綺麗な光の流れが気に入っています。意図的にもっと発生させたいぐらいですが、逆行写真の鬼にならないとダメですね(COLOR SKOPAR 21mm)

特に断りがない限り作例はすべてノートリミングでノーレタッチです。また、撮影に際し最高画質のRAWとJPEGの同時書き込み設定とし、Photoshop CS4でRAW現像を行っています。

失敗談
今回の撮影時は大丈夫でしたが、自宅近くの町中の撮影時に予備のバッテリを忘れてしまい、肝心なところでバッテリ切れという悲惨な結果を体験しました。突然シャッターが降りなくなり、壊れてしまったのかと焦ってしまいましたが、メーターを確認する癖を付けていない私の失敗です。私は撮影中は常に電源をONにしており、頻繁に撮影結果を確認したりするのでバッテリの消費が大きく、予備がないとダメなのです。ただし、専用バッテリは単三電池1本ほどの大きさなので、持ち歩くことは苦になりません。