鉄道の信号保安システムとITの関わりについては、過去に何回か取り上げてきた。今回もその系統の話で、過去にお蔵入りにしそうになった話を、改めて引っ張り出してみようと思う。それが「連動」の話である。

「連動」とは?

「連動」という言葉は一般的に、さまざまな分野で用いられている。通常、異なるふたつの機器が連携して、なにかしら一定のルールの下で機能すること、と定義できるのではないだろうか。

と考えたところでMicrosoft Bookshelfの国語辞典で調べたところ、以下のような定義になっていた。

機械のある装置を動かすと、その部分につながっている他の部分も自動的に動くこと。
Shin Meikai Kokugo Dictionary, 5th edition (C) Sanseido Co., Ltd. 1972,1974,1981,1989,1997

では、鉄道で「連動」といった場合、「ある装置」と「その部分につながっている他の部分」とは、何を指すのだろうか。それが、「信号機」と「分岐器」である。

鉄道は他の乗り物と違い、地上側で分岐器を切り替えて「進路」を構成することで、どこの線路を走るかが決まる仕組みになっており、運転士が自らハンドルを切るような操作は行わない点に特徴がある。

ここでいう「進路」とは、列車が通過する線路と、その線路が分岐・合流する地点に設ける分岐器の切り替え方向の組み合わせを意味している。線路のつながり(配線)と進路の設定によっては、進路が同一平面上で交差する、いわゆる交差支障が発生することがある。

交差支障の典型例として、以下のようなケースが挙げられる。

  • 下り本線から分岐する支線の列車が、上り本線を横断して出て行く
  • 支線から来て上り本線に合流する列車が、下り本線の出発側を横断する

交差支障が生じている例。前方を横断している列車が通り過ぎるまで、こちらの列車は出発できない。出発すれば衝突事故になる(阪急京都本線・淡路駅)

交差支障が発生するような場面では、単線区間における対向列車との衝突防止、あるいは先行する列車との追突防止といった場面と同様に、信号機で「停止」の指示を出して、列車が突っ込んでこないようにする必要がある。

ということは、分岐器を切り替えて進路を構成する操作と、信号機の現示(進行・注意・停止など)の間には、一定の相関関係が存在することになる。そして、それを司るのが「連動」という概念であり、「連動」を具現化するための機器として「連動装置」がある。

なお、連動装置の仕事は分岐器と信号機の連携(連鎖)だけではない。もうひとつの重要な機能として、「鎖錠」がある。

「鎖錠」にはさまざまな分類があるが、たとえば「列車が分岐器を通過している間に分岐器が切り替わらないようにロックする」のが、典型的な機能である。このほか、列車が通過した後も一定の時間が経過するまではロックを解かないようにする機能などがある。

「鎖錠」の機能を実現するには、列車の所在を検知する機能も連携させる必要があるが、そこではやはり信号の機能が関わってくる。列車の在線検知に基づいて現示を切り替えるのが、信号装置の仕事だからだ。

連動装置の種類いろいろ

昔は他の部分と同様、連動も機械的に実現していた。つまり、駅でテコを動かして進路を構成すると、それに合わせて分岐器を切り替えるとともに、矛盾がないように信号機の現示を切り替える仕組みである。さらに、「鎖錠」の機能を実現するために分岐器をロックする仕組みも、機械的に実現していた。

しかし、機械的に連動や鎖錠を行うのでは、特に規模の大きい駅では遠隔操作が難しくなりそうである。また、機械仕掛けで実現するものはみんなそうだが、部品が摩耗すれば動作に影響が生じる可能性もあるし、それを防ぐための保守・点検の手間も馬鹿にならない。それに、線路の増設・撤去・移設に伴って駅の構内配線に変化が生じた場合には、機器も作り直しである。

そこで、機械仕掛けの次に電気仕掛けが登場した。それが、連動の論理を機械ではなく継電器(リレー)の組み合わせで表現する、継電連動装置である。この場合、連動の機能は電気回路によって実現するので、機械的に実現するよりも保守や手直しは容易になりそうだが、連動について規定する電気回路の再構築は必要になる。

そして、電子連動装置が登場した。その名の通り、コンピュータを使って連動の機能を司るもので、連動装置がどのように動作するかは、装置の中に組み込んだマイクロプロセッサが制御する。構内配線に変化が生じた場合には、ソフトウェア(というよりも、そこで使用するデータという方が正しいか)を作り直すことになる。

機械仕掛けからコンピュータ制御に移行した他のケースでも同様だが、電子化・コンピュータ化によって、ソフトウェアやデータの変更だけで変化に対処できるようになる。そのことと、装置の小型化が容易になること、遠隔操作・集中操作化を図りやすいこと、そして保守性の向上が、電子化のメリットといえるかも知れない。

その代わり、機械仕掛けやリレーと比べると、マイクロプロセッサや半導体電子回路はデリケートな部分がある。だから、落雷などの高電圧に対する備え、あるいは機器の多重化・冗長化といったところで配慮が必要になるのは注意点である。日本の話ではないが、半導体ベースの電子回路に切り替えたらパンクが続発して、それに起因する事故を引き起こしたケースもあるようだ。

執筆者紹介

井上孝司

IT分野から鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野に進出して著述活動を展開中のテクニカルライター。マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。「戦うコンピュータ2011」(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて「軍事研究」「丸」「Jwings」「エアワールド」「新幹線EX」などに寄稿しているほか、最新刊「現代ミリタリー・ロジスティクス入門」(潮書房光人社)がある。