クッキーとビスケットって一緒じゃないの?

皆が大好きであろう焼き菓子・クッキーと、それと似た形状を持つことが多いビスケット。どちらもサクサクした食感とさまざまな味が楽しめる点では共通していますが、2つに明確な違いはあるのでしょうか。今回はクッキーとビスケットの違いについて説明しましょう。

「ビスケット」の中に「クッキー」がある?

クッキーとビスケット。どちらも同じだと思っている人もいるかもしれませんが、厳密に言うと「ビスケット」は小麦粉類を焼いて固めたお菓子全般の総称です。そして実は、クッキーやクラッカー、乾パン、プレッツェルもJAS(日本農林)規格においてはビスケットと呼ぶことになっています(ただし、一部は呼び名を変えてもよいということになっています)。

小麦粉類を用いて焼き固めたお菓子全般をビスケットと呼ぶのに、どうしてそんなに細かく呼び名が分類されているのでしょうか。それには、ほぼすべての焼き菓子メーカーが加盟している「全国ビスケット協会」という社団法人組織が関係しています。この組織が何をクッキーと呼び、何をクラッカーと呼ぶのか、各業界団体で取り決めています。

どうしてこんな取り決めをするのかというと、こうしたルール作りをしていかないと、本来のお菓子からどんどん材料や製法が乖離(かいり)していって、気がつけば全くの別物がオリジナルに取って代わるようなことになりかねないからです。

実例を挙げてみましょう。プリンは本来、蒸したり焼いたりして作るお菓子のはずですが、店頭に並んでいるプリンにはゼラチンやアガー(寒天)で冷やし固めたものがよく見られます。つまり、オリジナルとは別の物が、さも「私が本物のプリンです」という感じで商品棚に陳列されているということです。こういったことを鑑みると、呼び名を巡るとても細かな取り決めも、しっかりと役に立っているわけです。

ダイエット中はハードビスケットがいい?

ビスケットは大きく分けると、「ハードビスケット」「ソフトビスケット(クッキー)」「クラッカー」「パイ」「プレッツェル」「焼き菓子(加工品)」に分類されます。詳しい説明は全国ビスケット協会にお任せするとして、重さ当たりのカロリーはハードビスケットが最も低くなっています。パイやソフトビスケットなどは油脂が多いため、カロリーも高くなりやすいです。さらに口当たりが柔らかいので、パクパクと何枚でも食べてしまいがちです。

ハードビスケットはグルテンも多く含まれ、硬い歯ごたえは食べ応えがあるために満足感も高く、糖分も控えめなのに甘く感じます。ダイエット中にどうしても間食したくなったら、ハードビスケットと覚えておくといいかもしれません。

ちなみにインターネットなどでは、カロリー表示だけを見ると、あまりダイエットに資することがなさそうな「ダイエットクッキー」の類いが売られていることがよくあります。「食物繊維を入れている」「おからを入れている」というだけでは、カロリーは特段カットできるわけではありません。「ダイエット用」を標榜(ひょうぼう)しておきながら、カロリー表記が小さくされている商品は要注意です。

各国によって違うビスケットとクッキー

ビスケットとクッキーの違いを定めた「ルール」は日本固有のもので、各国によって事情は異なります。

イギリスではビスケットとクッキーの線引きはありませんし、アメリカはビスケットという言葉自体があまり使われずにクッキーで統一されています。

さて、日本の取り決めによるラベル表示を見ることで、その焼き菓子の脂肪分を知ることが実はできます。例えば、クッキーは脂肪分の含有量が4割を超えているものに対して名前が付けられることになっています。ご存じの通りビスケット類は、ショートニングをはじめ結構な量の油脂で小麦を練って作ります。

ちょっとした差し入れなどで、ビスケットやクッキーなどのアソートをいただくといったことも多いでしょう。色とりどりの異なる種類のビスケット類を食べるのは楽しいですが、くれぐれも食べすぎには気をつけるようにしましょう。

写真と本文は関係ありません

筆者プロフィール : くられ

『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」ツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。