化学調味料はその食材のうま味を引き出す

前回、化学調味料そのものについて解説しましたが、ここでは具体的にどう料理へ活用できるのかをテーマにしたいと思います。基本的に、塩10gに対して化学調味料は1gが限界です。実際、化学調味料が2g以上入った味付けは、化学調味料特有のエグ味が出てしまいます。ただ、こんな計算をするまでもなく、醤油大さじ3杯に対して化学調味料は2つまみ程度で十分だと考えています。

グルタミン酸以外の調味料も

スーパーマーケットなどでよく目にする化学調味料は、「味の素」「ハイミー」といった感じですが、大型マーケットやネット通販などではより一層多くの調味料を探すことができます。

「味の素」にはグルタミン酸ナトリウム(以下グルタミン酸)、「ハイミー」にはイノシン酸塩やグアニル酸塩といった核酸系調味料がグルタミン酸に混ぜ込んであります。これらは、様々な食材のうま味を感じさせる成分です。料理に添加することで、肉であればより長時間熟成させた味になり、煮物であれば煮くずれしていないのに煮くずれたくらいのうま味を出すことができるわけです。

各社から様々な商品が出ているので、商品ごとの個性を紹介しておきましょう。

味の素(味の素)
基本中の基本の調味料。ただし、成分がグルタミン酸であるだけなので、煮物など複雑なうま味を演出するには、やや役不足な感じがあります。鰹ダシ醤油などに添加し、少し水で薄めたものは浅漬け液に早変わりするので、とっさの一品を作る時にも役立ちます。

ハイミー(味の素)
最も手軽に味を調えることができる調味料として入手性が高いもの。シイタケやカツオといったダシのうま味成分が含まれるため、それらを加えて作る煮物料理の仕上げに、一振りするだけでいっきにゴージャスな味になります。ですが、しっかり混ざっていないとエグみが出るので、加えすぎとともに注意が必要です。

フレーブ(ヤマサ)
近年、ミニパックがスーパーなどでも見かけるようになったもの。ハイミーより更にシイタケ寄りのうま味成分が多く含まれており、煮込み料理よりかは汁物に加えることで、ただの鰹ダシ+味噌の汁を数段グレードアップした味にすることができます。ただし、効果が高いだけあって、入れすぎると味を壊してしまう可能性もあります。加える際はごく少量からよく混ぜて使うといいでしょう。

うま味調味料 ミック (キリン協和発酵)
業務用しか売られておらず、1kg/2,000円のものが最低ロットの調味料のため敷居は高い。しかし、業務用調味料の傑作と言われるだけあって、海産物全般のうまみ成分が独自配合されており、鍋から煮込み料理、汁物、さらにはカレーなどにも少量加えるだけで圧倒的なおいしさを演出できます。

業務用 リボタイド(キリン協和フーズ)
料理においては効果が高すぎる調味料ですが、ラーメンスープなどを大規模に作る際は、ラーメン店のスープに匹敵する味を作ることができる強力な配合の調味料です。極めて微量(上記の調味料の半分以下)で高い効果を持つので、使い方にもコツが必要。使いこなすにはある程度の経験が必要な上級者向け、料理のスキルがある程度ある人向けとも言えるでしょう。同様の配合に「味元 核酸」という商品もあります。

このように、一口に化学調味料と言っても、配合されている成分や特徴は異なります。手軽に味わいをグレードアップするには持って来いの化学調味料、是非うまく活用してみてください。

筆者プロフィール : くられ

『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」ツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。