「プラセンタ」のメリット・デメリットって?

最近、しきりに美肌にアンチエイジングに用いられる「プラセンタ」という成分。化粧品や健康補助食品(サプリメント)などで、「プラセンタ配合」をキャッチにしている商品も多く展開されています。さらには、「植物性プラセンタ」や「海洋プラセンタ」といったものまで配合と書かれていたりします。一体全体プラセンタとはどういったものなのでしょうか?

プラセンタ=胎盤はホルモンが影響

プラセンタというのは、我々を含む哺乳類の胎盤のこと。胎盤を英語にしただけのものです。要するに、胎盤エキスというのが分かりやすい言葉になります。そうなると疑問に感じるのは、植物性プラセンタ、海洋プラセンタというものでしょう。植物には胎盤もありませんし、海のプラセンタもイメージしにくいです。実際、植物性プラセンタは植物の胚芽(はいが)の抽出液で、海洋プラセンタはサケやマスなどイクラなどを包む膜から抽出した成分のようです。

さて、本家プラセンタの成分についてです。プラセンタには多種多様なホルモン様ステロイドが多く含まれていることが知られています。たしかにそういったものを注射すると、ホルモンの作用によって人によっては更年期障害が軽くなることもあり、実際、病院などではプラセンタ注射などと医療用にも使われています。

プラセンタを使う前に知っておくべきこと

現在、各メーカーはプラセンタの効能や安全について、研究・検証を行っていますが、その一方で、プラセンタによる薬害の報告があることも事実です。例えば、40歳のある女性がプラセンタエキス配合の化粧水、サプリメントを使用したところ、全身の紅斑、浮腫(むくみ)、接触性皮膚炎などを発症。プラセンタの使用を止めたところ、軽快したという報告があります。これは、動物性タンパクを抽出する課程で発生したアレルゲンが原因のようです。

また1点、留意しておいてほしいことがあります。現状、厚生労働省の指針により、プラセンタ注射を受けた人は献血ができないようになっています。その理由は、クロイツフェルト・ヤコブ病の原因として知られる「プリオン(悪性タンパク質)」が原料に含まれていた場合に、防ぎきれないことを想定しているからです。これは、プラセンタ注射を受けるとヤコブ病に感染する危険があるというよりも、「100%大丈夫と言いきれない」という考えからとられている処置なのです。

ちなみに、人間の女性ホルモンは研究され、大部分が解明されています。そして合成された不純物のない安全性が高い女性ホルモンも、数多く存在しています。そういった薬は婦人科で相談すれば購入することが可能です。

筆者の意見としては、プラセンタを試してみるのは個人の自由ですが、まずはそれがどのようなものであるかを知ることが大切です。その上で、どうしてもホルモン的なアンチエイジングを試してみたいという人は、化粧品やサプリメントを使う前に、まずは美容外科や婦人科で相談してみると良いでしょう。

筆者プロフィール : くられ

『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」ツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。