一般的には「プラスチック」として知られている「樹脂」ですが、現在我々の身の回りにあるものとしては、ガラスや金属とともに非常に多くの製品に使われている素材です。この理由としては、携帯電話やヘッドフォン、コンピュータやプリンタなどに使われる、デザイン性や機能性に優れた樹脂部品を、樹脂射出成形の台頭により、他の製法ではできないほどのコスト・パフォーマンスで製造できるようになったからです。

ただし、射出成形にも他の製造技術と同様に設計を行う上での特徴があり、良品を設計するには、成形プロセスに連動する問題点などを把握する必要があり、そのためには製造特性を理解するためのツールが必要になります。プロトラブズでは、ものづくりにおける樹脂射出成形の有用性を、よりたくさんの設計者に理解していただきたいと思っており、さまざまな教材を考案・設計・製作し、これらを無償で提供しています。

なかでも「デザインキューブ」は樹脂射出成形を前提とした設計ポイントを網羅しており、2009年に日本で配布を開始して以来、根強い人気を維持しています。先頃このデザインキューブを刷新して新しい設計ポイントを増やしたこともあり、今回、樹脂設計のポイントについておさらいしてみることにしました。

樹脂製品の設計ポイントが満載されたデザインキューブ

「プロトラブズ特製デザインキューブ」は、設計のポイントの「なぜ?」が分かることが特長です。13の設計ポイントで構成され、射出成形により発生し得る問題点が見えるように作ってあります。添付してある番号を付与したガイドとデザインキューブを見比べると、どのように設計(形状)を最適化すれば問題を軽減したり解決したりできるかということも同時に見えるようにしてあります。

射出成形という製法でパーツを製作するということは、溶融した樹脂を金型に注入してパーツが形成され、冷却・固化したら金型から外すというプロセスになります。つまり、1)充填、2)固化・収縮、3)離型の順で樹脂パーツが製造されます。形状が各プロセスで良好に反映されない設計になっていると、例えば薄肉部位の形状の欠落「ショートショット」、ボス・リブや突起形状が厚肉形状だった場合の変形や凹み「ヒケ」、樹脂の流れがぶつかる面で起きる「ウェルド」などが発生します。デザインキューブは、意図的にこれらの不具合が見えるように設計されています。

また、表面にヒケが起きるような肉厚の四角い突起形状の裏側に肉抜き設計をすることにより、ヒケのない良好な形状が成形できることもデザインキューブで明確にわかります。ボス・リブについても、6種類のボス形状が一面に配置してあるので、ヒケと強度の双方を向上できる設計の提案も形状を見るだけでわかり、リブについても、肉厚と裏面のヒケの関係が一目瞭然ですので、樹脂設計の研修や初期教育などにも役立つのではないでしょうか。

さらに今回新規に設計されたデザインキューブには、アンダーカット形状の設計提案も含まれています。例えば、アンダーカット部位に押切りを活用することで2方向抜き金型で製造できるように設計すると、金型コストを圧縮できるという提案や、コストよりも形状を優先する場合には、スライド構造を導入することにより、自由度の高いアンダーカット形状が成形できるという設計ポイントも含まれています。

その他、デザインキューブにはProtoQuote見積りのプルダウンメニューで選択できる、7通りの仕上げ見本も付加してあります。表面仕上げについては、成形の不具合ではなく、あくまでもユーザーの選択になりますが、意匠面として使用する場合には、仕上げ面のシボや鏡面の光沢性などにより樹脂パーツの価値が大きく左右されます。仕上げ面を選択するときの注意点としては、同じ金型で成形しても、樹脂の素材により仕上げ面の見え方が大幅に変わるということです。つまり、実際に成形する樹脂がデザインキューブに使用されているポリプロピレン(PP)ではない場合には、必ず選択した樹脂でできた仕上げ見本を依頼するようにしてください。

表面仕上げ以外の特性についても、上記の設計ポイントのすべてを大きく左右するのは樹脂材料ですので、良好な樹脂設計を行うには樹脂の特性も理解して選択する必要があります。

青のPP(ポリプロピレン)製の新しいデザインキューブ

新規「プロトラブズ特製デザインキューブ」を上、横、斜め、ウラ、オモテなど、さまざまな方向から見ながら樹脂パーツの設計にお役立てください。英語だった各形状の部位の表記も日本語にしました。

「プロトラブズ モデル変更案」サービスについて

弊社では「プロトラブズ モデル変更案」サービスを実施しています。ある程度の樹脂部品の設計が決まってきた時点で、3Dデータをアップロードしていただければ、弊社より射出成形を行うために必要な変更案を3Dデータでご提案させていただきます。これにより、今までよりも早期に弊社に見積り依頼をしていただき、さらに開発スピードをアップすることに貢献できることを期待しています。

ご参考:

樹脂部品設計ガイド
Protomold 樹脂特性ガイド
ProtoQuote(R)無料解析&見積り

本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。