周囲を見回すと、家、家具、自動車、照明機器、スマートフォンからパソコンに至るまで、私たちの手に触れるものの多くが 3D CADで設計された可能性があることに気が付きます。3D CADを使えば、製品を3Dで表現できるだけでなく、必要に応じて拡張機能を使って、非常に複雑な構造のパーツでも、それが製造可能なのかを検討することもできます。プロトラブズで見積りさせていただくパーツのデータは、3D CADの形式である必要がありますが、いくつかの主要な3D CADのネイティブファイル形式と一般的によく使用される中間ファイル形式のフォーマットに対応しています。

CADソフトウェア

試作や量産品パーツの開発においては、世界的にもよく使用されているいくつかの3D CADソフトウェアがあり、多くの場合、それらのソフトウェアの間でのデータ交換やそのデータを使用して別のCAD上でもデータの編集を行うことができます。

一般的に製品の設計に良く使用されている3D CADの例とパーツデータの拡張子

  • SolidWorks(.sldprt)
  • Autodesk Inventor(.ipt)
  • AutoCAD(3D .dwg)
  • PTC Creo/ProE(.prt)
  • CATIA(.catpart)
  • SpaceClaim(.scdoc)
  • SketchUp(.skp)

異なるCAD間でのデータ交換に利用される中間ファイル形式

  • IGES(.igs)
  • STEP(.stp)
  • ACIS(.sat)
  • Stereolithography(.stl) ―プロトラブズでは、STL形式のデータは、切削加工(Firstcut)のみで受け付けています。

プロトラブズでは一部 3D CADのネイティブファイル形式および上記の中間ファイル形式に対応しています。一覧はこちらからご確認ください。

業務で使用される3D CADは、細かい機能を見ていくと、それぞれに異なるところがありますが、どのCADを用いても基本的なソリッドモデリングから、樹脂部品設計や金型設計、溶接、板金、配管設計、大規模アセンブリなどを行う機能や製品ラインアップを持っていることがほとんどです。

CADソフトの多くがバージョン管理機能を備えているか、拡張機能として用意しています。これにより、設計プロセス全体を通してファイル名の変更を含め、データの変更履歴を効率的に追跡でき、常に最新の設計データを用いて作業を進めることができるようになっています。また、設計者が作業しているパーツにはロックがかかり、他の設計者はそのパーツを編集することができなくなるため、間違って上書きされてしまうこともなくなります。さらに、いくつかのサブアセンブリを含む、複雑なアセンブリの場合には、アセンブリの上位で起こった変更はそれ以下のパーツやサブアセンブリすべてに影響が及びますが、データ管理機能を使っていれば、これらの変更が起きたことが通知され、影響を受けるパーツの更新ができるため、常に変更に対応した設計を進めることができます。

図1:3つのパーツで構成されるアセンブリのSolidWorks上での3Dモデル

また多くのCADソフトが備える生産性をサポートするツールを使って、同じパーツの異なるバージョン間の形状やフィーチャーを比較して、肉厚や、抜き勾配、対称性、その他の設計上必要な確認を行うことができます。それ以外にも部品表(BOM)作成機能など単に3D設計をするだけではない、多くの機能が備わっています。

中間ファイルフォーマット

異なる3D CAD間でデータを渡す場合、ソリッドモデルの形状の情報は伝わりますが、ファイル形式によっては、データ変換の過程で失われる設計要素があります。そのため、業界団体などが規格を定めた中間ファイル形式に変換して、異機種間で3Dモデルのデータ交換を行うことが慣例になっています。中間ファイル形式でも一般的に使用されているのが STEP(Standard for the Exchange of Product model data)とIGES(Initial Graphics Exchange Specification)で、3Dプリンター(積層造形)で使用されるSTL(Stereolithography)も中間ファイル形式と考えることができます。

プロトラブズではSTEPとIGESの形式も承りますので、どの3D CADを使用していても、これらの中間ファイル形式に変換さえできれば、射出成形や切削加工に対応することができます。

パラメトリックなデータvs単純なソリッド

異なるCADソフト間で中間ファイルをやり取りすると、設計に関する履歴をはじめとする様々なモデリングの情報が失われて形状のみの単純なソリッドになってしまいます(図3)。これは、もはやデータにはパラメトリックの属性情報が含まれていない状態です。例えば、パーツのある面を動かしたとき、実際には関連する形状と拘束がかかっていたとしても、自動的に追従して動いてはくれません。設計者自身でその変更の影響を計算し直して形状を変えることはできても、その変更を関連する形状に自動的に伝えることができないため、かなり変更しづらい状況になります。しかし、同じCADソフト間のネイティブファイルによるデータ交換であれば、通常はパラメトリックの情報を維持したまま作業をすることができます。

図2:パラメトリックなモデル

図3:単純なソリッド(形状)のみのモデル

モデル変更案作成サービス

プロトラブズのシステムで解析可能なファイル形式をアップロードしていただくと、平均3時間でモデルデータを自動的に解析してその結果を 3D モデルで解説したお見積りをお返ししています。これまではプロトラブズの短納期射出成形プロセスに必要とされる項目を「要設計変更項目」として3D モデルで解説するだけでしたが、2014年11月から「モデル変更案作成サービス」を開始し、このサービスによって、抜き勾配の付加、肉厚の調整などの変更案を反映させたSTEP、IGES形式のデータをご用意、ダウンロードしていただけるようになりました。変更案として作成できるのは、比較的簡単な変更のみに限られますが、変更は無償で、追加の費用はかかりませんので、あくまでも選択肢の一つとして採用をご検討ください。

モデル変更案サービスの詳細はこちら

ご参考:

樹脂部品設計ガイド
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本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。