射出成形パーツに用いられる熱可塑性樹脂には、それぞれに独自の強度、耐久性、耐衝撃性をはじめとする材料特性があります。例えばナイロンは強度に優れ、ポリカーボネートは耐熱性に優れています。エラストマー(TPE)は柔軟性に富み衝撃を吸収することができます。透明度が求められるならアクリルが優れています。パーツの形状や用途によっては、ベースとなる樹脂の他にガラス繊維やセラミックファイバー、ミネラル(鉱物系フィラー)等が添加された樹脂が有効かもしれません。

ガラス繊維は、プロトラブズの射出成形プロセスの中でも最も標準的に使用されるフィラーです。添加するガラス繊維の割合に応じて、樹脂の強度と剛性は急速に高まりますが、同時に脆性も高くなります。そのパーツが大きな衝撃や曲げにさらされることがなく、安定した環境で一定の荷重を支えるなどの用途に使われるのであれば、ガラス繊維が添加された樹脂の選択は適切であると言えるでしょう。

フィラー(添加剤)の添加量には幅がありますが、現在プロトラブズで在庫している樹脂の中では、ナイロン、液晶ポリマー(LCP)、PBT、PET、PPS等でガラス繊維が添加された樹脂があり、樹脂を調達させていただくことも、お客様からのご支給材にも対応しております。フィラーの実績としては、ガラス繊維の他にタルク、CB、CF、SF などがあります。

図 1: 製品開発においては、ガラス繊維強化樹脂を使用してパーツの強度を上げるということがよく行われます

ガラス繊維は、成形のプロセスにも影響を与えます。1本のガラス繊維を一匹の魚、樹脂に添加されている多くのガラス繊維を魚群とすれば、樹脂がキャビティの中を流れていくのにともなって、ガラス繊維はその流れに沿って泳ぐ魚のように、その向きも揃います。魚群がパーツの穴形状の周囲に近づくと、その障害物を避けるように二手に別れます。このように樹脂の流れ方向が変わるとガラス繊維の向きも変わり、パーツ形状が複雑であるほどガラス繊維の向きもランダムになっていきます。そして、このガラス繊維により樹脂の収縮が拘束されるため、特に樹脂の流動方向(ガラス繊維が縦に並ぶ方向)は収縮率が小さくなります。これが、パーツ全体に非線形的な収縮率をもたらし、場合によってはソリの発生というリスク要因にもなりえます。ガラス繊維によってパーツの性能向上に寄与しますが、その一方でこのようなリスクも伴うのです。

樹脂にガラス繊維が含まれているか否かにかかわらず、パーツの角にRをつけることは、樹脂流動の改善に寄与します。これは単純に直角に曲がっている角よりも、Rをつけたほうが、樹脂が流れやすいということによるものです。肉厚を一定にすることで、成形品各部位の収縮度合いも均一化することができます。また、パーツの長手方向に沿って樹脂が流れるようゲートを配置し、少しでもガラス繊維の向きを揃えることにより、ソリ・変形の軽減やキャビティ内での収縮率を予想の範囲内に収めることにつなげることができます。これらのことに注意を払うだけで、射出成形の潜在的なリスクを最小化することになるのです。

使用頻度は少ないですが、セラミックファイバーやミネラル(鉱物系フィラー)の強化材をパーツの熱伝導性やソリの改善のために添加することがあります。これらのフィラーも、ガラス繊維と同様にパーツの強度を高めますが、同時に脆性の原因にもなってしまいます。パーツにこれらのフィラーを使う時に注意しなければならないのが、ぶつけた時に、ヒビが入ったり、欠けやすくなるということです。

図 2: 樹脂のペレットとサンプル

パーツの性能に対する影響については以上で、続いては樹脂の色についてです。プロトラブズでは、現在ABS樹脂については7種類のカラー(アイボリー、黒、白、透明、イエロー、ブルー、レッド)を用意しております。その他の熱可塑性樹脂の基本的な色は、黒、ナチュラル、クリアの3種類ですが、希望の色があれば調色を承ります。樹脂によってはパーツの色は正確な色ではなく近似のものになる場合もありますが、事前に色見本サンプルを作成し確認頂くことができます。

プロトラブズのカスタマーサービスは、材料の専門家ではありませんが、成形上や製品形状に応じた材料の使用方法について、知識や経験を蓄積しています。ご相談いただければ、いくつかの樹脂の選択肢をご提示できる場合がありますので、お気軽にご相談ください。

ご参考

樹脂部品設計ガイド

Protomold 樹脂特性ガイド

本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。