エジェクタピンというのは、アメリカ映画の一場面に登場するような用心棒に例えることができます。成形パーツに圧力をかけて金型の外に押し出し、場合によってはパーツに傷をつけることもあります。Protomold射出成形では、エジェクタピンの成形品に対する影響が最小限に抑えられる金型を設計するように心がけています。弊社がピンの位置を提案し、その配置を確認、同意いただいてから正式にご注文していただくという流れになります。

エジェクタピンは可動側の型に配置されます。型が開いた時に、ピンがキャビティの中に伸び、パーツを型から押し出します。その後、ピンは元の位置に戻り、型が閉じて、再び樹脂が充填されます。

Protomoldでは、円柱状のエジェクタピンを使用しています。どのように配置するかはいくつかの要素を考慮して決定します。要素としては、パーツの形状(図1)があります。抜き勾配やシボ加工面、深い溝やリブ形状などが金型の張り付く力(離型抵抗)に影響します。どのような樹脂を使用するかもピンの配置とサイズを左右します。粘度の高い樹脂であれば、より強い力で押し出す必要があります。柔らかい樹脂の場合には、ピンの数を増やすか、幅広のピンを使用することで、離型抵抗を分散させて、穴があいたり、傷がついたりすることを避ける必要があります。

図1:金型設計プロセスの初期段階で、ゲートとエジェクタピンの位置を確認していただくための表示例

Protomoldで使用するエジェクタピンの先端は通常、平らな面で、ピンが動く方向に対して垂直です。成形品を効果的に押し出すためには、ピンがあたる部分(以降はパッドと表記)は比較的平らな面であることが望ましいです。もし、ピンがあたる部分にシボ加工がされている場合、パッドの部分が平らであるために、成形品ではピンの痕跡が際立ってしまいますし、パーツの表面が、エジェクタピンの平らな表面と平行になっていない場合には、さらに目立ってしまいます。

鉄金型による従来のプロセスでは、形状の面がピンの動く方向に対して完全に垂直でない場合は、ピンの先端を切削して面に合わせることがありますが、Protomoldでは特に指定がない限り、平らな面のピンを使用します。ピンの先端が面に対して平行でない場合は、ピンの先端にパッドを配置することになります。このパッドはエジェクタピンで構成されていますので、パッドの高さはエジェクタピンで調整できます。パッドは片側のエッジで形状の面よりも隆起し、もう片側のエッジでは形状面に食い込むことになります。曲面に対してピンを配置する際は形状の面にパッドが食い込むことになることをご了承ください。

エジェクタパッドの極端な例が「ポストゲート」です(図2)。エッジゲートが使用できない場合、樹脂の注入はエジェクタピンが通る部分からになります。成形品が冷却すると、エジェクタピンは隆起したポストを押し出し、その時にランナーを切り取ります。ポストの除去は通常、二次加工対応になります。

図2:ポストゲートによって、樹脂をエジェクタピンの穴から注入できます。離型した成形品には、小さな突起 ポスト がエジェクタピンの位置に残ります。

ほとんどの場合、エジェクタパッド(または、エジェクタ痕)は、成形品の裏側に付きますが、どうしても裏側への配置が難しいことがあります。開口部をコアとするラッチ(図3)を例に考えてみましょう。ラッチ側はその分だけ表面積が増え、金型への付着度も高まります。そのため、ラッチ側を可動型にせざるを得なくなってしまいます。ラッチは通常であれば表側になるので、意匠的に影響を与えてはいけないのですが、どうしてもエジェクタ パッドも必要となります。

図3:黄色い線の範囲内にあるフックの内側と青の面は、形状の開口部をコアとして固定側金型に形成されます。ラッチ形状の残りの部分は可動型で形成します。

ここまでの説明は、金型から押し出すピンを当てる面が存在していることを前提としています。ただ、形状によってはエジェクタピンを当てる面が存在しないこともあります。例えば格子のような形状は、リブの上面が金型の可動側に形成されることになります。もし、リブのエッジに、ピンを押し当てるだけの十分な表面積が無い場合には、エジェクタパッドの役割を果たすボスを追加していただく必要があります。

ほとんどの場合、設計の初期段階ではエジェクタピンの配置についてあまり考える必要はありません。弊社では、ご注文をいただいてからピンの配置を提案します。ピンとゲートの位置を表示して疑問点や懸念事項を確認し、必要に応じて変更をほどこした上で成形工程に入ります。

弊社のエジェクタピンに関する詳細は、カスタマー サービス エンジニアがお答えします。ご不明な点などありましたら、お気軽にお問い合わせください。

ご参考:

Protomold樹脂特性ガイド
樹脂部品設計ガイド
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本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。