【コラム】

プレゼンテーション成功のコツ

5 プレゼンを制する自己紹介の三法則

 

5/7

プレゼンテーションの自己紹介には「法則」があるって、ご存じでしょうか?

「え? 何それ? 知らない」という人は、意外なほど損をしているかもしれません。なぜなら、自己紹介を失敗すると、聞き手が信頼してくれないから。「コイツの話、聞く必要ないよな~」なんて思っている人にプレゼンテーションするほどつらいことはありません。

自己紹介で信頼を失う人

まずはそんな失敗の典型例から紹介しましょう。私たちプレゼンテーション・カレッジのセミナーに参加してくれた山田さんは、建築資材の営業をしているのですが、お客様のゼネコン向けのプレゼンテーションを、こんなふうにスタートしてしまいました。

私、本日のプレゼンテーションを担当させていただく山田と申します。簡単に経歴を申し上げますが、早稲田大学卒業後、当社に入社。名古屋支店・東京本社・大阪支店・九州支店にて建築・橋梁資材の営業に従事。主に新規開拓・プロジェクト営業を担当……

間違ったことを言っているわけではないのですが、興味を引かないのはお分かりでしょう。聞いている方は心の中で、「さっさと本題に入ってくれ」と思ってしまいます。

これは、プレゼンテーションの自己紹介は、「自己を紹介」するものだと思っているところから生じる誤解です。実はプレゼンテーションの自己紹介は、「自分はこのプレゼンテーションをする必然性がある」ことを聞き手に納得してもらい、信頼感を得るためのものなのです。

これを踏まえ、プレゼンテーションにふさわしい自己紹介を見てみましょう。登場するのは同じく山田さんです。

申し遅れましたが、私、本日のプレゼンテーションを担当する山田です。私事になりますが、実は私、生まれが香川県でして、物心が付いたときに瀬戸大橋の完成を目にし、建築・土木の偉大さに目覚めました。就職においても、このときの強烈な印象に背中を押されるように建築業界に足を踏み入れ今に至っております。経歴は……

もちろん、時間の制約や場の雰囲気でプライベートな部分はカットすることもありますが、ニュアンスは分かっていただけるでしょう。これならば聞き手も「ほう、コイツの話を聞いてやろう」と思ってもらえること間違いなしです。

V字回復のストーリーの法則

では、このようなプレゼンテーション向けの自己紹介を作る法則を紹介しましょう。全部で3点ありますが、最初のものが「V字回復のストーリーの法則」。というのは、人間は、何かに失敗したけれど、その後工夫をして、結果として回復したというストーリーに惹かれるものだから。したがって、自己紹介でも事実を事実として話すのではなく、ストーリーに落とし込むことが必要です。

特に、転職・異動などは、「なぜその必然性があったのか」を説明すると、聞き手の興味を引きつけることができます。実例として、先ほどの山田さんにもう一度登場してもらいましょう。

経歴は、早稲田大学卒業後に名古屋支店に配属され、3年間で支店の業績を○%アップすることに貢献し、この成果が経営陣の目にとまり、東京本社に転出いたしました。○○ヒルズの再開発プロジェクトに携わる……はずが、同プロジェクトは地域住民の反対により遅れに遅れ、しばらくは「社内ニート」状態で……

このようにまとめると、単なる自慢話にも聞こえませんし、「色々と苦労をしたから、きっと業界のことをよく分かっているんだろう」というニュアンスを出して、聞き手の信頼を得ることにつながります。

自己紹介は「後だし」の法則

次の法則は、どのタイミングで自己紹介をするかに関してです。よくプレゼンテーションの最初に自己紹介する人がいますが、これは間違い。プレゼンテーションの「つかみ」とでも言うべき冒頭ではまずは目的を説明します。そこで聞き手に、「このプレゼンテーションはあなたの期待に応えたものですよ」というのを明確にした上で、「なぜ私がこのプレゼンテーションをする必然性があるか」を説明するために自己紹介を行うのです。

したがって、自己紹介は、「…申し遅れましたが、私本日のプレゼンテーションを担当する○○と申します。」というセリフに必然的になるのは、先ほどの山田さんの自己紹介の例でもお見せした通りです。

最後の法則は、カスタマイズの法則。その名の通り、聞き手にあわせて、あるいはプレゼンテーションのテーマにあわせて自己紹介は変えるべきです。最初の方にも書きましたが、プライベートなことを話してもいいのかよくないのか、経歴の中でどこにフォーカスを当てるべきか…。そして、忘れてならないのは、LeADER原則。これはLet thE Audience Do the Expected Reactionの頭文字をとったもので、「聞き手に期待した行動をとってもらう」こと。すなわち、そのプレゼンテーションで、聞き手に期待する行動にあわせて自己紹介は変えるべきなのです。

逆に言えば、毎回毎回同じような自己紹介をするのは、聞き手のことを考えていない証拠です。もしも、プレゼンテーションが苦手だ、人前に出ると緊張する、あるいはプレゼンテーションしたけど思った効果が望めない、そんな心当たりがある方は、早速今回紹介した自己紹介の三法則を使ってみてください。プレゼンテーションの最初の方で聞き手の興味を引きつけられれば、その後話すのがグッと楽になります。

執筆者プロフィール : 木田知廣

シンメトリー・ジャパン代表、米マサチューセッツ大学MBA講師。米国系人事コンサルティングファーム、ワトソンワイアットにてコンサルタントとして活躍した後英国に渡り、ロンドン・ビジネススクールの故スマントラ・ゴシャールに師事する(2001年MBA取得)。帰国後は、社会人向けMBAスクールのグロービスにて「グロービス経営大学院」の立ち上げをゼロからリードし、苦闘の末に前身的なプログラム、GDBAを2003年4月に成功裡に開校にこぎつける。2006年シンメトリー・ジャパン株式会社を立ち上げ、自ら教壇に立つとともに後進の講師の養成を始める。ライフモットーは"Stay Hungry, Stay Foolish" (同名のブログを執筆中)。

5/7

インデックス

連載目次
第7回 プレゼンの準備時間を圧倒的に短くする「裏技」
第6回 保存版:プレゼンテーションの運営面チェックリスト22項目
第5回 プレゼンを制する自己紹介の三法則
第4回 "選挙"という名のプレゼン劇場
第3回 プレゼンテーションに「効く」聞き手のタイプ分け
第2回 聞き手から嫌われる「自分勝手なプレゼン」の罠
第1回 日本人が陥りがちなプレゼンテーションの落とし穴

もっと見る

関連キーワード

転職ノウハウ

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事