【コラム】

"PM力"向上に効く、12のレッスン

7 Lesson 6 : 資源環境管理

    鷺島淳一  [2009/03/02]

    資源・環境管理とは?

    『資源・環境管理』とは、PMBOK準拠の弊社プロジェクト管理方法論PMM※1で定義されている、プロジェクトマネジメントの管理領域の1つである。計画フェーズにおいて人や作業環境などに関する計画を作成し、後続フェーズにおいてチーム編成や実績管理など資源および環境に関する管理業務を実施する。

    ※1 Hitachi Consulting Project Management Methodology

    図1: 資源・環境管理 ~ PMM より

    今回はこの資源・環境管理のうち、特に人的資源(リソース)に関連したお話である。

    必要なリソースをいかに確保するか

    プロジェクトの計画フェーズにおいては、必要な作業の洗い出しとともに、同作業を実施するためのリソース確保が重要である。

    作業負荷を平準化した実現可能なスケジュールが作成できても、作業を実施する人材が確保できなければ当然プロジェクトを実行に移すことができない。また必要な人材が確保できたとしても、プロジェクトの実行フェーズにおいて期待通りのパフォーマンスが発揮されないようであれば問題である。

    つまりリソース管理のポイントをまとめると「(1)必要な人材を確保すること」と「(2)確保した人材を十分に機能させる環境を整えること」の2点となる。ただし(2)は(1)が前提条件となっているため、まずは必要なリソースの確保をいかに実現するか、を考えていくこととしよう。

    必要な人材を確保するためには、まず必要とする人物像を明確にすることが必要である。割り当て対象となる作業に必要とされるスキルや経験を明確化するとともに、可能であれば例として具体的な人名を挙げておく。その人が実際にプロジェクトに割り当てられれば一番であるが、そうでなくても以降の検討作業において判断基準として利用できるからである。後者の目的を考えれば、過去のプロジェクトで一緒に仕事をしたことのある別会社の人であっても構わない。人材選定に関与するメンバーが明確なイメージを共有できることが重要である。

    必要な人物像を明確化したら、次は具体的な人材の選定である。欲しい人材と候補者のフィット&ギャップを見極めるための手段としてはレジュメ審査が一般的であるが、有力な候補者については可能な限り面接も実施すべきである。作業担当者としての適性はもちろんのこと、1人の人間としての特性を見極めた上で、プロジェクトチーム全体として機能するように人材を選定することが望ましい。

    あとは選定された人材をもってプロジェクトチームの編成~キックオフと進むのが一般的だが、以降のプロジェクト実行フェーズにおいてスキル不足などの問題が発覚する可能性もある。対象が協力会社の人材であれば、契約条件において問題発生時の対応策を盛り込んでおくべきである。

    モチベーション管理のための工夫 - SVツリー

    続いて、確保した人材を十分に機能させる環境を整えること、について考えていこう。

    期待するパフォーマンスを発揮させるために重要なのはモチベーションの管理である。いくら優秀な人材であっても、モチベーションが低下している状況では、作業の生産性は低下し、成果物の出来も悪くなってしまう。逆にモチベーションを高く維持しつづけることができれば、期待以上のパフォーマンスが発揮されることもある。プロジェクト実行の主体が人である以上、そのモチベーション管理に注意を払わなければいけない。担当者の声に耳を傾け、モチベーション低下を招く要因を排除していく必要がある。そのためには適度なコミュニケーションと相手の視点に立って考えるというマインドが必要不可欠である。

    では、大規模プロジェクトにおけるモチベーション管理はどうあるべきだろうか。

    参画する要員が多いので疎かになりがちだが、規模が大きければ大きいほど細やかなモチベーション管理が必要である。モチベーション低下は感染する。多くの要員がモチベーション低下を引き起こしてからでは、プロジェクトの立て直しは極めて難しくなってしまう。大規模プロジェクトでは特にモチベーション管理の仕組みづくりが必要である。

    具体的にどうすれば良いだろうか? あるプロジェクトではモチベーション管理のための工夫として『SV※2ツリー』を作成している。

    ※2 スーパーバイザー(Supervisor)

    図2: SVツリー(サンプル)

    SVツリーとはモチベーションを含むメンタルケアのための仕組みであり、プロジェクトにおけるメンター制度である。3~5人の要員に対して1人のメンターを配置し、それを階層化してツリー化する。可視化されたツリー構造に基づき、個々の要員が業務やチームの枠に捉われず悩み事があれば随時メンターに相談することができるようにしたものである。

    なお内容によっては自分のメンターに相談できないこともある。その場合はより上位のメンターに相談しても構わない。また自分のメンターに上位のメンターがいない場合は、メンターのピアグループの他のメンターに相談しても構わない。

    個々のメンターに対して担当要員のモチベーション管理に責任を負わせることで、プロジェクト全体のモチベーション管理を実現した好例といえる。仕組みづくりの参考にしていただければ幸いである。

    執筆者紹介

    鷺島淳一(SAGISHIMA Junichi) - 日立コンサルティング マネージャー

    外資系ソフトウェアベンダーにてSOAエバンジェリストとして、日本国内へのSOA啓蒙活動と共に、製造・サービス・流通業を中心としたSOA導入支援を実施。2007年より現職。コンサルティング活動に従事する傍ら、PMコミュニティの運営も担当し、PM方法論のブラッシュアップに貢献中。




    監修者紹介

    篠昌孝(SHINO Masataka) - 日立コンサルティング ディレクター

    国内最大手ファイナンシャル・グループにおいて多数のeコマース立ち上げを経験し、2001年に外資系大手コンサルティングファームに入社、主にERPやSOA技術を駆使した、大規模SIプロジェクトを成功に導いた。2007年より現職。

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