アプリケーションの動作基盤というものは、なかなか新バージョンへの移行が進みづらいものです。PHPも、バージョン5が出てもう相当の年月が経つわけですが、未だPHP 4のまま稼働しているWebサイトも、決して少なくはありません。
さすがに、新規開発案件なのに「PHP 4でいきましょう!」と主張するSEはもういないと思いますが、問題なく稼働しているアプリケーションを、わざわざリスクを冒してまでPHP 5に移行することもないかな、というのがシステム屋の偽らざるホンネでした……これまでは。が、もうさすがにそうも言っていられません。
8月7日にリリースされた「PHP 4.4.9」が、公式にはPHP 4の最終リリースになります。今後は、脆弱性や深刻なバグが発見されても修正パッチが出てくるとは限りませんので、PHPのユーザ、並びにPHPでサービスを行っているシステム屋は、速やかにPHP 5に移行しなければなりません。ああ大変だ。ああ面倒だ。
でも、そんな後ろ向きな気持ちでいるのも、精神衛生によくありません。ここはひとつ、もっと前向きに、将来のPHPに期待をもってワクワクしながら使っていきたいですよね。
そこで本稿では、今回から数回にわたって、PHP 5のさらに次のバージョン「PHP 6」の姿を見ていくことにします。
現在開発が進められているPHP 6のソースコードは、php.net内のCVSリポジトリから取得できます。つまり、誰でも容易に、最新のPHPの機能を体験できるわけです。
早速、CVSリポジトリから最新のソースコードを取得してみましょう。
まず、前もってApache導入済みで、インターネットに接続可能なLinuxボックスをひとつ用意しておきます。別にSolarisでもMac OS Xでもいいかもしれませんが、テスト環境としてはLinuxが一番素直で扱いやすいでしょう。
また、Linuxボックスにはソースコードのコンパイルに必要な開発ツールを、あらかじめインストールしておきます。大抵のディストリビューションでは、一般的な開発ツールが「Development Tools」のようなパッケージグループとして用意されているはずですので、Linuxのインストール時に一緒に導入しておくとよいでしょう。
後からでも、例えばyumが使えるディストリビューションなら
# yum groupinstall "Development Tools"
といったコマンドを実行するだけで、必要なものは一通りインストールできるはずです。
開発ツール以外にも、MySQLやPostgreSQL等のデータベースや、エクステンションとして組み込みたい機能があれば、必要な共有ライブラリの類があれば、各々準備をしておきましょう。
準備が整ったらLinuxにログインし、ホームディレクトリ下に「.cvsrc」ファイルを用意します。このファイルには、以下のようにCVSの設定を記述します。
cvs -z3
update -d -P
checkout -P
diff -u
前準備はこれだけ。以下のcvsコマンドを実行して、php.netのCVSサーバにログインしましょう。
$ cvs -d :pserver:cvsread@cvs.php.net:/repository login
匿名ユーザは、ユーザ名として「cvsread」を使用できます。パスワードを聞かれたら、「phpfi」と入力しましょう。
これでCVSサーバにログインできました。PHP 6のソースコードを、以下の「チェックアウト」コマンドで取得しましょう。
$ cvs -d :pserver:cvsread@cvs.php.net:/repository checkout php6
しばらく待つと、ホームディレクトリに「php6」ディレクトリが作成され、その配下にPHP 6のソースコード一式が保存されています。
次回は、ソースコードのコンパイルからインストールまでの手順を紹介します。