平安時代の夜は妖怪だらけの百鬼夜行でしたが、21世紀ジパングにおいて最も魑魅魍魎が跋扈するのが「婚活市場」。低スペック陣を光の速さで方違えして、高スペック陣ゲットのために吉凶を占う皆さん、こんにちは。ぱぷりこです。

男女の恋愛模様を追っていくこの連載。さて、今回は婚活市場において超☆優良物件のハイスペック・独身サラリーマン、略して「ハイスペ独身男性」が陥りがちな思考の罠に迫ってみたいと思います☆

すげーなお前? (真顔)ハイスペ独身男性の特徴

さあさー寄ってらっしゃい見てらっしゃい、今日の見せ物はすごいよーってなわけで、ハイスペ独身の特徴はこちらっ!

・高学歴(いわゆる「難関私立大学トップ2」以上)
・「就職したい会社ランキング」の上位に名を連ねる企業に勤めている
・30歳で年収800-1000万前後の収入
・独身

もうね、やつら何でも持ってるのよ。いい大学に入学するためにいい教育を受けている、イコール実家が裕福であることが多い。で、入社した会社は超・超・狭き門の大手企業。内定時代から「キラキラスペック」で合コンオファーは絶えることがありません。当然、社会人になっても花形ステータスの効力はまったく衰えることなく、常に「結婚優良物件」としての地位を確立・独走状態。もうアラサー近辺の独身ハイスペなんてイケイケドンドンパフパフですよ。

だって年収、高いし! ガリガリ仕事するからちゃんと「仕事している俺」の話できるし! 接待でいい店いくし! さらに先輩から「東京いい店やれる店」的なのちゃんと仕込まれるし! ていうかもう社会人歴的に中堅だし! 余裕の1つや2つなんてお釣りがくるくらい持ってます。

わー、しゃらくせえ。

私なんかはこういう男性に夜景の見えるレストランとか仕込まれても「ああ、今日も東京砂漠で社畜が命を削っている命の輝き……」とか、高層エレベーターに乗ってる間に「人は土から離れては生きていけないのよ…(シータ)」とか脳内ツッコミがスパークしちゃうんですが、こういう女は少数派なようです。

そう、奴らは例えるなら伝説ポケモン……みんなが欲しがるあれですよ。

婚活でよく言う「600万以上」がどんくらいいんのよ? と、厚生労働省調査の「平成26年賃金構造基本統計調査 賃金の分布」を見てみたところ、25歳~34歳までの男性で年収600万円以上を稼いでいる男性は1.2%という結果が……。え、ほんと? 結構まじで少ないな? しかもこれは未婚既婚合わせてなので、未婚に限るとパーセンテージはさらに下がります。

この数値は母数が大きいため、調査母数を首都圏近郊・大卒・大学院卒など「ハイスペ」が多くいるエリア・層に限定すれば数値はもっとあがるでしょうが、とはいえ全国規模で見てみたら1.2%ってマジすか学園な低数値。さらにさらに、今回取り上げるハイスペは

・普通以上の容姿っていうかいっそイケメン
・抜群のコミュニケーション力
・なんだかんだの女慣れ力

を持ち合わせており、もうこの係数かけたら「真のハイスペ」の割合どんだけさがるの? ! と統計のエクセル表みながらガクブルします。まさにその存在は伝説レベルの超絶レアポケモンそのもの。

婚活女子が目の色を変えて狩りにいく超・超・超優良物件なわけですね! 見つけたらマスターボールを迷わず投げたくなります。

治療不可能な重い病「ハイスペの罠」

だ・け・ど。捕まえるのちょっと待ってー! 貴重なマスターボール使うの待ってー! なぜなら、彼らは非常に重篤な持病を抱えているからです。人生ずっとスーパースターをむさぼり食ってる無敵マリオ状態な彼らは、特効薬が発明されていない深刻な持病を患っています。

それはずばり、決められない病。合コンもある、紹介もある、仕事上での出会いもある。だから別に今この瞬間の試合に全力投球しなくていい。この恋愛強者が陥る罠!!!!! 。これを私は通称「ハイスペの罠」とよんでいます。

恋愛強者がはまる沼

ハイスペ独身男の中でも、特に「ハイスペの罠」に陥る人の特徴を深掘りしてみましょう。

・大手企業勤務・高学歴・高収入(前提条件)
・コミュ力があり、女性相手にきちんとふるまうことができる(女慣れしている)
・仕事が楽しい。仕事が激務。仕事能力が高い(仕事で充実感を得ちゃってる)
・出会いの場が多い(合コン・紹介・社内など)
・周りの男性陣が結婚していない。もしくは結婚していない仲の良い男友達がいる(隙間が埋められる)
・一人暮らしが長く、一通りの家事は問題ない。なんなら料理は好き(趣味の料理)
・30歳を超えてから彼女がいない。または長い彼女がいるがイマイチ結婚に踏み切れない(決断の先送り)
・結婚願望は「人並みにある」(これが厄介)

はぁ……。選択肢の多さは多様性を生み出します。多様性という自由はすなわち「自分の決断」を求めてきます。誰かのレールを走らなくていい自由は、自分で行き先を決めなくてはいけない不自由もはらみます。ゆえに、「自分自身がどうしたいか」という一番難しい選択を迫ってくるわけです。

「ん? なにが問題なの? だって彼らは選び放題なんだし、その中でいいなって思う子を選べばいいじゃん? 」と思ったあなた、たしかにそれは正解です。でも不正解でもあります。選択肢が多いからこそ、彼らは頭の中に「理想の彼女」を描きます。「理想の彼女」って現実を知らないドリーマーが空想するものだと思うでしょ? 。違うんだなー。現実を見すぎているからこそ、「理想の彼女」を描く場合だってあります。理想の彼女は何も、自分だけにベタ惚れ☆の空から降ってきた美少女ってわけじゃないんだよ……。

ハイスペ独身男の理想の女性像

ハイスペの罠にがっつりはまってる男性陣と話していると、彼らの理想の女性像ってだいたいこんな感じ。

・ちゃんと仕事をしていて、自分が倒れた時に立てる程度の経済力がある子
・でも自分が激務でストレスもあるから、癒やしてくれて優しい子がいい。ほっとしたい。
・だからバリキャリ感が漂う「自立心旺盛な女」はちょっといや。怖いし。
・もちろん家事は一通りできてほしい。ていうか俺ができるから、それくらいって普通でしょ?
・顔はかわいいに越したことないけど、いまさら顔面至上主義ってわけでもないよー。
・学歴・家柄があまりにも離れた子とは結婚できる気がしないし、極端な年下とかちょっと無理だな。話合わないし。
・男遊びが激しそうな子は遠慮したいっていうか選択肢にあがらない。貞操観念、大事。

YES…BUT……が複雑に絡み合いすぎて、さながらラストダンジョンか新宿駅みたいな思考の迷路ですね。条件項目が多いわりに中身はふわふわ。しかも! これらはOR条件じゃなくてAND条件なんですよー恐ろしい! 全部を満たす人、検索しても全然HITしないんですけれども! ?

ハイスペ男はいろいろな女性を見ているし付き合っているので、これまでの経験則に照らし合わせて「失敗しない」選択肢を取りたいと思っています。

女性のいい部分も汚い部分もよく知っているなら現実的になるんじゃねーの? と思うものですが、ところがどっこい、いろんな女性の良いところだけを悪魔合体させた「不在の彼女」像が出来上がる。でも、なまじ出会いのチャンスが多いため、「もっと理想に近い人がいるのではないか」と「もっともっと」と飢餓状態に陥るわけです。株を最高値で売り抜けないのと同じ。

これが40歳を過ぎたハイスペ医者おじさんあたりになってくると「何はともあれ20代! 」とか「とにかく見た目重視! 」とか、明確だけどそれはそれで10トン金づちで頭かち割りたくなるような条件を出してくるんですけれども。いつまでも「自分は選べる」って思ってるのイタイ……。

プロ彼女やっても無理ゲーだからやめとけ

彼の条件を満たす、非の打ちどころのない「プロ彼女」やってればいつかは結婚してくれるかも……尽くしていれば「いろいろフラフラしたけれど君が1番だ」って言ってくれるかも……なーんて夢は諦めましょう。彼らの青い鳥症候群は、本人が「決める! 」と決断しない限り、終わりません。女のプレッシャーなんて感じれば即、彼らは次にいっちゃう。だからってプレッシャーかけず「都合のいい女」やってても、やっぱり「なんか違う」で次にいく……。

「1と3と7は満たしてるけど、5がないからなぁ…5はけっこう大事な条件なんだよなぁ…」「4、5、7はあるけど、でも3がないからやっぱり違うかなー」なーんて決めかねてフラフラふわふわの人生迷子に付き合ってると、精神のバミューダトライアングルに突入して脱出不可能に。そして完全に相手のタイミング待ちになります。やだ、断る! ! ! !

一見「白馬の王子様」に見えるハイブリットハイスペ男が求める「お姫様」を目指すのは難易度の高いシミュレーションゲームなのでやめとけーと思いますが、頑張りたいというなら止めません。 でも意外と、こんなタイプの男を刈り取るのは、「もう式場を仮押さえしてるし、来週は私の親に挨拶にきてね。もう30なんだし結婚くらいできるでしょ」とガンガン選択を迫る女性、彼らからしてみたら魔女のような女だったりします。ぱぷりこでした


<著者プロフィール>
ぱぷりこ
ブログ「妖怪男ウォッチ」の中の人。ラブ魔窟でエンカウントした妖怪男女と自意識の供養に全力を注いでいる。恋愛相談は最終的にすべて「うん、哲学しよ? 」に持っていく思考原理主義。女子会では、占い師呼ばわりされて終身恋愛顧問になるか、二度と呼ばれないかの二択。
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Twitter: @papupapuriko

(題字イラスト:谷口菜津子)