社会人になって仕事をする時、ひとつ大事なことがある。いきなり就活アドバイスみたいな話ですが。「自分のウリはなにか」ということを、ハッキリ意識することだ。ものすごく完璧に仕事をする人なんて、ほとんどいない。そりゃ完璧にできるにこしたことないけど、まあ無理だ。じゃあ「自分はなにを意識しようか」ということである。レスが早いことなのか、敵を作らないことなのか、仕事が早いことなのか、遅いけどミスがないことなのか。

特にフリーランスの場合、こういう「ウリ」がいくつもないと、続けていくのが難しい。どこかのオフィスで顔を合わせるわけじゃないから、レスが早いことは、フリーランスの欠かせないウリのひとつかも。

もちろん、少女漫画にも「ウリ」になる要素がいくつかある。この要素が多ければ多いほど、大人気の可能性が高い。例えば、絵が上手いこと、ファッションセンスがいいこと、登場する男がかっこいい(見た目だけじゃなくて)こと、ヒロインに共感できること、考えさせられること、エロいシーンがあること、読みやすいテンポであること、強いオタク臭がしないことなど。

通常、エロをウリにしている漫画は、画力が低い(もちろん、めちゃくちゃ上手な人もいることはいる。あくまで相対的な意味で)ことが多い。そういう作家は「お前にはもーそれしかない」と編集に言われてるのかもな。誰とか指名すると面倒くさいので、ご想像にお任せしますが。

しかし、吉原由紀は違う。絵が上手くて、とっつきやすいタッチなのに、エロい話ばっかり描いているのだ。そして思わず吹き出すほど面白い。エロと笑いをトロ~リ溶かした作品なのだ。しかも男性キャラがクールでかっこいい。エロシーンもヌメヌメしてなくてとてもキレイ。激しいエロ少女漫画は、ツッコミどころ満載なイタタ作品が多いんだけど、吉原由紀の作品は、痛くもかゆくもなく心地よい、サワヤカエロコメディなのである。

この作家のストーリーは、サカってるのは大抵女のほうで、男はクールだ。サカってるのが女だというだけで、これほどセックスは明るくなるのかと思う。『はあはあ』の意味は、もちろん男女がまぐわって「はあはあ」の「はあはあ」である。タイトルだけは、もうちょっと考えたほうがよかったような気がするが。

主人公は、男子校に赴任した聖子。そこで、ちょっと偏屈で研究熱心な生物教師、樹先生と出会う。ハッキリ言って、こいつは変態である。リアルにいたらセクハラで訴えられてると思う。だけどそれをうまくしのいでイケメンキャラとして確立させてるあたり、女の作者じゃないとできないよなあと思う。

聖子と樹先生は、電車の中で知り合う。そこでいきなり聖子は、「発情した女の匂いがする」とか言ってくんくんと匂いを嗅がれるのだ。リアルでやられたらどん引きだ。そして赴任先の学校に行ってみると、その変態男が待っており、今度は「脇の下に脱脂綿を入れて、臭いをつけて返してくれ」などと言い、「より濃い匂い(フェロモン)が出るように」と、半裸になって抱きついてくるのである。ああ本当に、リアルでやったらその場で逮捕だよ。

でも、それがギリセーフになるのは、まーひとえに樹先生がイケメンだからってのもあるけど、彼が実はすごくオクテだからなのだ。女に免疫がないから、研究熱心なあまりおかしなことをしてしまうらしい。女っていうのは、男に下心があるかどうかって、割と敏感に感じ取る生き物である。「さりげなく触っちゃえ」とか思ってるヤツのことは、まあわかるものなのだ。

で、なにが言いたいかというと、女の描く漫画には、「同じことをやってもセクハラにならないコツ」がちゃんと描いてあるので、そういうところを読み取っておきましょう、という話。次回は具体的なシーンを取り上げつつ、『はあはあ』がどんなに面白いかについて。
<つづく>