なにを考えてんだか知らないが、誕生日プレゼントに「女にモテるための本」みたいなのをもらった。いったいこれを読んでどう使えというのかわからんが、パラパラとめくってみる。大体、男が書くモテ本ってのは、少々ずれてることが多いのだ。ということで、割と最初から粗探し的な気持ちで読んでいたのだけれど、そこですごいのを発見した。

粗探し気分でなくても間違いなく「どうよ?」と思う部分だ。なんとそのモテ本には、「女と触れ合う絶好のチャンス」として、「手相占いをしろ」と書いてあるのである。女は占いが好きだし、占いを口実に女の手にも触れるし、ウンチクも述べられるとな。思わず目頭が熱くなった。

男が下心満載で手相を見るとか言い出すというのは、女の世界では常識である。思わずこの本の出版日を確認したが、やはり30年前とかではなく、つい数カ月前に出たもののようだった……男の世界では、未だにそんなことが常識なのか……! 大体さ、「女に触りたい」なんて思うこと自体で女はどん引きなのだから、手相だろうが痴漢だろうが、「あわよくば」とか策略を練ってる時点で、もうダメなんだよ。

しかし、少女漫画にもいたのである、そんな策略男が。うかつにも自分、今までそいつをかっこいいと思ってました。不覚です。その人はクラレンス公、イギリス国王の三番目の王子様。非常に頭が切れて情が深く、いとこのマーガレット様が大好き。マーガレット様は、少女漫画の脇役によくいる草食系女子で、美人だけど面白くない女である。マーガレット様は、主人公のマリーベルと相思相愛のロベールに片思いをしている。つまりクラレンス→マーガレット→ロベール→←マリーベルという感じ。

マリーベルがびっくりするほど意地悪な輩に追い立てられ、「ロベールには婚約者がいます!」などと、どうしようもないウソをついたとき、マーガレットは「ロベール様の婚約者は私です!」とあわよくば的にフォローしてしまう。結局それが功を奏して、マーガレットとロベールは婚約することになるのだ。あれやこれやのドタバタを見守りながら、クラレンス公はマーガレットの幸せを祈り、静かに見守っている。彼もまた草食系なのであった。

しかし、なんやかんやでロベールがダメ男に成り下がり、怒ったクラレンス公はこう言う。「そんな人間にマーガレットは任せられない」。うん、そりゃそうだ。自分は好きな女のために身を引いたのだから、ぜひともロベールには立派になってもらわないと腹の虫が治まらないだろう。しかし続けて、「そうだ、ではお前が立派になるまで、マーガレットは私の婚約者として預かろう」……はい? 今なんて?

そうして、立派な人間になってマーガレットを迎えに来い、と言うのだ。おいおい王子様よ、そもそもロベールは、マーガレットが好きで婚約したわけではないのだ。その場の勢いで断れなくなっただけの話なのだから、婚約解消されて喜ぶのはロベールなのである。しかしそんなことは切れ者のクラレンス公、分からないわけがない。

自分から好きだ愛してると言えないからって、ロベールを口実に、まんまとマーガレットと結婚しちゃったのである。やり手だなあ、クラレンス公よ。衆目の中で堂々と告白をしてほしい女からすると、非常にダメ度の高いやり方だが、それでも好きな女と結婚できてクラレンス公は幸せらしい。仲むつまじくマーガレットと暮らすのである。

ちなみに、ロベールとマリーベルが上手く行かなくなったとき、策略好きなクラレンス公は、ロベールにマリーベルの警護なんか命令しちゃって、二人を接近させて差し上げている。彼はこの手の方法が大好きなんだな、きっと。

でもロベールってさ、幼なじみという特権があるだけで、ほかの登場人物に比べたら大していい男じゃないんだよな。まあ、これも少女漫画によくあるパターンですが(『花より男子』で、つくしとくっつく道明寺よりもどう考えたって花沢類のほうがいい男だろ)。
<つづく>