『西原理恵子の人生画力対決』を読んでいたら、『NANA』を見て「なんにもしてない女が得してるよ」「この漫画は、中出しオッケーの女と中出しがダメな女の話だよねえ」とあって笑った。そうなのだ。最近の若い娘さん向けの漫画がどうにもダメなのは、主人公がボヤボヤしてドキドキしてるだけで勝手に男と盛り上がり、話が進むからなのだ。

「楽して人生楽しく行きたいね」というのは社会的な傾向らしくて、少年漫画も割とそのクチである。『テニスの王子様』がイマイチ読めなかったのは、リョーマがなんの練習もしないで新しいショットを打ってみたりしたからだった。どんなに練習したって実践で出せるのはその数パーセント。その努力の部分をすっ飛ばして結果を出すというストーリーは、子どもに夢を与えるのではなく、水たまりに誘い込んでいるようなものだ。まあ、最初の3巻しか読んでないんで、その後どうなったか知らないけれども。そういう意味では『バクマン』はいい話だ……。

昔の少女漫画では、がんばらない女は『王家の紋章』のキャロルくらいしかいなかった。オスカル様をはじめ、どいつもこいつも、周りが呆れるほど努力とガッツで艱難辛苦を乗り越えていたのだ。一方、艱難辛苦ではなく事件を乗り越えるのは、『パズルゲーム☆はいすくーる』の香月たちである、と少々無理矢理つなげてみる。やっぱり主人公ががんばって考えて活動している話が好きだ。

前回は女性キャラについて取り上げたので、今回は男性キャラについて。まずは初っぱな登場する、生徒会長の座を狙っているテニス部長。これは非常にレアなキャラである。通常、少女漫画において「テニス部」は、サワヤカ男子の象徴なのだ。レモンの汗をかき、歯は白い、ちんこの退化しちゃったような好青年がやるスポーツなのである。にもかかわらずこの部長、女は利用するわ、「妊娠した」と言われれば「俺の子かわからないんじゃないか?」などと、女にとってダメ台詞ナンバー1の暴言を吐く。少女漫画界の極悪人なのだ。

ところがさ、テニスっていうスポーツは、相手のイヤなとこ(ボディとか足元とか)、いないところを狙って相手にミスをさせポイントを稼ぎに行くという、ホントは非常にイヤラシイスポーツなのだ。派手なショットを決める前には、こうしたイヤミな仕掛けがあれこれ行われているんである。ネチネチとよからぬことを画策するテニス部長、なかなかテニスの本質を突いているじゃないですか。

それから前半、葉蔓高校(書いてていまさら気づいたけど、「葉蔓」高校は、「ぱずる」にひっかけてるのかあ)は年上女+年下男のカップルが多い。ミステリ研のメンバー、美女と卓馬、カップルじゃないけど歩と葉月、それから斉藤昌巳と内田久仁香。どのコンビにも違和感を覚えなかったのだが、斉藤昌巳と内田久仁香には昔から読んでいて嫌悪感があった。基本的に私は若い男が好きなはずなのに、どうしてだろう?

答えは簡単。少女漫画に年下男が恋の相手として登場する場合、「若いくせに人間がデキてる」が売りなわけだけど、この斉藤昌巳はすごいダメだからだ。内田久仁香は若くしてミステリ作家としてデビューした才能あるお姉さん。香月たちは、内田久仁香の高校時代の作品を読み、「すごく才能のある人だ」とさっさと理解する。にもかかわらず、この斉藤昌巳は、ひとりで「内田久仁香は僕のねーちゃんの作品を盗作したんだよう」と言い張るのである。もうちょっと冷静に物事を観察してくれ。若い=視野が狭い、では当たり前すぎるだろう! そして内田久仁香、どうしてこんなダメ若造が好きなんだ!

とまあ、少女漫画のセオリーをことごとく打ち破ったキャラづくりの作品なのであった。それでも随所に萌えがあるんだから、安心である。ところで今回読み直していて、大地の手書き台詞に「マントル女子高生売春」って書いてあって、時代を感じました。マントルって、ああ、地球内部の……のわけがなくて。意味わかんなくて検索しちゃったよ。
<『パズルゲーム☆はいすくーる』編 FIN>