昔、「転入生」っていうのに憧れた。越してきた直後は、ものすごい人気で、休み時間に大勢人が寄ってくるし、なんだかものすごくチヤホヤされてる気がしたのだ。チヤホヤと言えば鼻血にも憧れたな。ティッシュを鼻に突っ込んでみたかった。

というわけで今回は、憧れの転校生、ナッキーが大活躍する『生徒諸君!』で行こう。いや~、なかなか現物が手に入らなくて、京都のマンガミュージアムまで行ってしまった。当日は、着物を着た人は入場無料、そしてコスプレのイベントが開催されていた。もう、場内はピンクや黄緑の髪の毛の若者でごった返し、緑の中庭がファンタジーの世界に変わっていました。着物を着てたって和装なんだかコスプレなんだか。ちょっと悔しいのは、コスプレのキャラ、8割わかんなかったことです。こんなコラム描いてるわりには疎いらしい。くっそー。

で、『生徒諸君!』。主人公は中学生のナッキーが、大人になるくらいまでを描く。女が社会で全然地位を獲得していなかったころ、やたら元気で正義感が強く、人を巻き込むカリスマ性のある女の子が大人気だったのだけれど、ナッキーはその筆頭。セーラー服の衿をいつでも風になびかせてピンピン立て、クラスメイトたちと「悪たれ団」というチームを作って、仲良くやっていく。彼女は人を動かす力はあったけど、ネーミングセンスはなかったようだ。

ナッキーの爆笑恋愛模様は次回に回すとして、正義感が強く、仲間を大事にする彼女は結構な迷惑野郎である。ではまず作品のあらすじを。

悪たれ団の面子は、岩崎くん、初音ちゃん、舞ちゃん、僚ちゃん(委員長)、それから後に加わる沖田くん。その他の主要人物は、飛島先輩というクールな中学生と、ナッキーの双子の姉で、少々頭が不憫なマール。

まずは飛島先輩だ。彼はナッキーの絵を描いており、完成したので届けようとして、交通事故に遭う。彼の右手は、再起不能に。マールはもともと身体が弱かったこともあり、病死。そして初音ちゃんは、夜道で誰かに襲われ、レイプされる。岩崎くんは、沖田くんとのケンカが原因で失明(すぐ復帰)。沖田くんは雪山で遭難死。

すごい。この中で無事なのは、ナッキーと委員長だけである。ナッキーは、仲間がバタバタと倒れる度に、泣いたり怒ったりして場を盛り上げている。いい人だ。いい人だけど、これだけ自分の周りで問題が起きているんだから、お払いにでも行ってきたらどうだろうか。事故多すぎだろう。

まあ、簡単に言うと、ナッキーが正義感を振りかざすために、周りの人たちが痛い目に遭っているというわけだ。当事者が言ったら角が立つことでも、第三者……ナッキーが言えば「仲間思いのいい子」となることってあるもんね。「いい人ぶって実は悪人」っているものだけど、みんな、早く気づけ! 沖田くんなんか命まで落としちゃって……あ~。

しかし、ナッキーを責めてはいけないのかもしれない。彼女は生まれてすぐ、祖父母の元に預けられている。その理由は、マールが余命3年と言われていたからだ。マールをガッツリ生かすために、ナッキーに手が回らなくなってしまっては不憫と思い、わざわざ雪の降る日、ナッキーの父親は(母方の両親の家なのに?)、ナッキーを預けに行った。

まあいいんだけどさ、ナッキーんちって、すげえ金持ちなのよ。自分でなんとかできなかったんだろうか。マールが病弱だったとか、今にも死にそうだったとか、どんな言い訳したって、ナッキーは捨てられたことには変わりない。祖父母を東京に呼ぶとか、メイドだの執事だのをつけるとか、金持ちなんだから、いくらでも方法はあったでしょうに。

ナッキーは、こうして、やりきれない思いを抱えて育つことになり、結果、周りの人間に不幸をまき散らす悪たれになってしまったのでした。
<つづく>