このコラムを書き始めてから、めっきり少年漫画を読まなくなってしまったけれど(時間があるなら、少女漫画を読まなければ! という強迫観念があってなあ)、少年漫画、スポ根とか戦闘ものには、1試合に単行本1巻、1戦闘に2巻とか平気でありそうだ。最近、ちゃんと読んでないけど『バガボンド』とか、結構そんな感じなのでは。

『犬夜叉』なんかも、初めは色恋なんかも少々絡んで変化があったけど、そのうち奈落との一騎打ちになっちゃって、強くなった奈落と戦い→ギャグ的小話があり→強くなった奈落と戦い→奈落の部下と戦い→小話があり→強くなった奈落と戦い~みたいな感じのルーティンだったような。基本的に、女は戦闘シーンよりも人間関係の話のほうが好きなので、最後はあまり興味が湧かなかった。それにしても、なんで少年漫画の必殺技って、「なんとか爆流拳っ!」とかベラベラ口に出さなきゃいけないんだろう? 噛んじゃったらどうなるんだろうか。やっぱり不発なのかな。

もちろん、少年漫画のメインテーマは、目的、攻略、達成なので、その攻略部分である戦闘シーンや試合のシーンにはページが割かれるわけだ。ここでコマ割りを大きくしたり、"どがーん"とか"しゅいーん"とか、効果音たっぷりで盛り上げていく。

では少女漫画の場合はどうか。もちろん、恋愛シーンでコマが大きくなり、ドキドキしたり、涙を流してみたり、赤ら顔になったりして、それがアップで延々と表現される。『君に届け』もすごい。なんと告白から成就まで、たっぷり1巻が費やされるのだ。

クラスの人気者・風早くんが、みんなの前でハッキリと「俺 黒沼のこと好きだよ」と、爆弾発言をしているにもかかわらず、そしてもちろん爽子のほうも風早くんが大好きなのにもかかわらず、お互いの気持ちが通じないのである。なにやっとんじゃー! のろのろしとらんで、さっさとくっつかんか!

……とはいえ、これは仕方のないことでもある。ひとつは、タイトルが『君に届け』だから、あっさり届いちゃったら話が終わっちゃうので、あれこれやらなきゃ盛り上がらないこと。そしてもうひとつは、エロシーンが一切ないので、さっさとOKしてしまったら、その先にやることがなくなってしまうこと。そして、この漫画は「人との交流」をとても大事にしているので、会話のやりとりを大事にしたら、こんな話ができました、という感じ。二人のすれ違いは、こうだ。

爽子は、ずっと人から恐れられ、避けられてきたので、風早の好意を素直に受け取れない。好きだと大告白した風早に向かって爽子は、
「そんな言い方したら、(好意だと)誤解されちゃう」
「……好意だったんだよ。俺、黒沼がすきだよ。黒沼は俺がすき?」
思いっきりうなづく爽子。
「……でも、俺の『すき』と、黒沼の『すき』は……ちがうね」
おいこらっ! 余計なひと言を付け加えるな!

かくて二人は1巻分ほど、すれ違いを続けてくれるのである。だけど、そうなる前に勝手に相手の言葉の意味を解釈して、すれ違って戻らない人がどれだけいるだろう。相手の「すき」の意味まで考える若者がこの世の中に充満していたら、コミュニケーションの取り方がわからなくて友達作りに悩んだりすることもなさそうだ。

自分の言葉が、自分の気持ちが相手に伝わるまで、しっかり相手と立ち向かっていく姿勢は、多くの若者に勇気を与えているに違いない。『君に届け』は、ちっちゃなことからおっきなことまで、いろんな気持ちを「届け」たい若者の話である。現実にも、みんなこれくらい熱心に人と関わりたいと思っていたら、いさかいも少なくなるだろうなあ。
<『君に届け』編 FIN>