少女漫画ってホントにいろいろ流行があるな、と思う。時代によって取り上げられるネタは変わり、主人公の性格も変わり、そしてタイトルも変わった。特にタイトルで言えば、70年代は『××の××』といったタイトルが多かったようだ。『ベルサイユのばら』とか『悪魔の花嫁』『王家の紋章』『いらかの波』とか。

今は『僕は妹に恋をする』『天は赤い河のほとり』とか、なんだかタイトルがえらいこと文章チックだ。『僕は妹に恋をする』なんて、タイトル見ただけで、「そうなんですか」と内容が何となくわかってしまう。まあ、「だからどーした」の部分が話としては重要なので、それでいいんだろうけど。

で、その70年代に、『炎のロマンス』『天使のセレナーデ』『舞子の詩』など、『××の××』タイトルで一世を風靡した、上原きみ子の『ロリィの青春』を取り上げてみたい。っていうか、ちょっと読んでみたら爆発的に面白かったのである。ちなみに彼女は今『いのちの器』を連載中で、やはり「の付き」タイトルにこだわっているようだ。「の」がつくタイトルはヒットするという法則があるようだけどもさ。

さて、この『ロリィの青春』、おおざっぱではあるけど、これもタイトル見れば「ロリィちゃんの青春の話なのね」ということがわかる。じゃあどんな青春なのか。ロリィは、病弱で役に立たない母親と、気が強くて美人の妹カーラの3人で暮らしている貧乏一家である。そこに、偶然出会った夫婦から、生まれた子馬をもらうところから青春がスタートしたようである。

急に産気づいた馬のために家を貸してやり、子馬を生ませてやったからといって、置き土産に子馬をやるというのは、普通に考えたら結構迷惑な話だと思うけど、まっとうにそこにつっこんでいるのはカーラひとりである。昔の少女漫画の主人公っていうのは、頭に花咲いてるのが多いのだ。

元気なくせに役に立たない姉の代わりに家を出て、なんの仕事をしてるんだか、自宅に大金を贈り続ける健気なカーラ。そして旅の途中の学生らしき男子、クレオ。主要人物はこんな感じで、あとは子馬のハッピーを名馬だとか言ってえらいこといろんな人間が欲しがり、ロリィがえらいこと男にモテて、クレオも実は大金持ちだということがわかり大モテ。そして序盤の貧乏はどこへやら、ロリィはあっという間に金持ちになるという話である。高度成長期の話は、夢があっていいな。

そして、貧乏なロリィは、ラストまでに3つの保障を持って金持ちとなる。ひとつは、大金持ちコンツェルン(少女漫画ってコンツェルンが好きだよな)の息子で、彼とは大恋愛中。もうひとつは、ロリィにベタ惚れする病弱男シベール。これも金持ちだ。そして最後に、実はロリィのママの実家は、これまた大金持ちだったことがわかるのだ。ロリィは、どう転んでも貧乏に舞い戻ることはなさそうだ。

それにしてもロリィのママよ、彼女はしょっぱな倒れて死んじゃうのだが、たかが14歳と13歳の娘を残して死ぬのに、もう少し彼女たちのケアをしてやったらどうなのだ。いくら実家と縁を切って、勘当同然で家を出てきたからといって、子どものためを思ったら、実家に頭を下げるくらいしたっていいじゃないか。いい人っぽい感じの顔をしているけれど、実は頭も体も弱いという少々迷惑な人間であるようだ。かわいそうなカーラ。迷惑な母と姉のおかげで、彼女はハの字ひげのおっさんからビシバシむち打たれるような辛い目に遭っているのであった。

というのがこの話のあらすじである。それでは、次回は恋愛ポイントに焦点を当ててみようかな。
<つづく>