異性の友達って、何より一番ありがたい。変に期待が大きくない分(毎日連絡ちょうだいよ、とかさ)、精神的に満足できることが多いし、刺激があって楽しい。同性の友達に比べると、やはり異性なので寛大だし、少々トキメキに近いものもあってお得。唯一デメリットがあるとするならば、相手が結婚するとなかなか交流が難しいことか。

というわけで今回は、藤(ふじ)くんがどれほど良いかということについて。藤くんは、村一番のお金持ちの息子さんだ。少女漫画のお金持ちのおうちにありがちな、両親の愛情に薄い子である。「あいつは金持ちの息子だ」と一目置かれていた少年時代、そんな事情を知らないよそからやってきた杏の無邪気な態度に心惹かれ、恋心を抱いているようである。「無邪気な態度に男が心惹かれ」ってのも、少女漫画の主人公の特権だよね。

しかし脇役の悲しいところよ、藤くんは成績優秀、クールでちょっとアンニュイで、少女漫画のヒーローたる資質を100%備えているにもかかわらず、初恋(?)は片思い。杏は大悟とくっついている。しかし高校に入ると、杏と藤くんは東京、藤くんの妹の椎香と大悟は島根と、物語的にとても美味しい、カップル遠距離&ライバル近距離状態になる。

そこで、藤くんの「異性の友達」オイシイとこ取りだ。付き合ってる男女というのは、まあ大抵なんやかんやあるもんである。そんなときに、「なんやかんやあってさ」という話ができる異性の友達というのは、自分の味方をしつつ異性としての意見をくれるので、めちゃくちゃ重宝するのである。

なんだかんだ言って、友達になる異性って嫌いな相手じゃないわけで、相手に優しくしたいと思う。これが同性になると、相手の環境に焼き餅を焼くこともままあるのだ。杏が自分の好きな男と付き合っていると知った郷里の女子は、小さいけれども杏が嫌がるだろうウソをつく。ホント、女友達って色恋が絡むと面倒くせえよな。なにしろそれが大抵、人生の最大目的だからさ。

そしてこれは少女漫画だから、藤くんはセオリーに乗っ取り、まんまと主人公が好きだ。杏はその好意をいいように使えるのだからこれまたオイシイ。藤くんの気持ちに気づかない杏は、不意にチューとかされてて、「無理チュー」は少女漫画の爆萌えシーンであるし、藤くんは結構いいとこ持っていってる感じである。

ハッピー・マニア』で、フクちゃんが昔の男を呼び出し、パワーを充電するくだりがある。『きみはペット』でも、スミレが付き合うのは蓮實さんだが、心を許す癒し役はペットのモモだ。結婚やセックスという、ヘビーなネタが絡まない男との付き合いっていうのは、女にとって心の底から癒しなのである。

恋人との遠距離での寂しさや、悩んだときに手軽に呼べる相手がいたら、そりゃ便利だ。恋人と違って、都合がいいときだけ会ったり、連絡取ったりすればいいんだから気遣いも少なめで済む。藤くんのような男子がいたら、さぞや恋愛も楽しかろう。さて、不意チューはさておき、藤くんは結構ストレートだ。

「12の頃から好きで好きで好きで」
「俺のこと、真剣に考えてみて」

などなど、素直に感情を表現していて、とってもカワイイ。それが功を奏して、杏と付き合うことになるわけだから、言ってみたもの勝ちなんである。

男性諸君よ、単に人に好かれて気分の悪い人なんかいないんだから、好きになったら、素直にスキスキ言うがよい。変に「俺と趣味(考え方)が合うよね」系のアピールとか、「俺じゃダメなんだろ?」とかの遠距離ジャブでは、告白なんだかよくわからないので、女子は勘違い野郎だと思われても困るしで、適当にスルーする場合が多いんだぞ。
<つづく>