実はこのところ、ずっと片思い中である。長いこと片思いのままなのは、要はあんまり私が積極的にコトを起こさないからであると思われる。先日、知り合いから「あんたいったい、なにやってんの? 意味わかんない」などと言われてしまった。大きなお世話だが、人生、積極的にあれこれやったほうが勝ちなのだ。それにしても、こんだけ下ネタ平気な女が、まさかこんだけ奥手だなんて、大抵はわかんないんだろうな。やーれやれ。

そして少女漫画では、とにかく男が積極的だ。好きだ、惚れた、俺のものになってくれと、それはまあ男性たちの元気のあること。エロ漫画になってもその基本は変わらず、『監獄プレイダーリン』の葵くんや『愛と欲望の螺旋』の泰我兄さんは、やたら強引なうえに、サービス精神旺盛だ。つい先日読んだ『熱砂の海に抱かれて』という漫画では、やたら濃厚なエッチシーンがあるのだが、よーく読んでみると、ひたすら男がサービスしているだけ。それで事後に男が「すばらしかったよ」などと言うのだから、なんだか極楽な感じである。

しかし、そんな風潮を責めてはいけない。男向けの漫画では、今度は女があきれるほど積極的なのだ。たとえばモテモテの島耕作だが、よく考えてみると、勝手に女が寄ってくるだけじゃないか。着物をめくって誘ってきたり、ドンドコドンドンと太鼓の鳴り響くいかがわしい部屋を用意してくれたり、うらやましいほど女が積極的。

これはつまりどういうことか。男も女も、「勝手に相手が迫ってきたらいいなあ」、あわよくば「それがあとくされない美人(イケメンまたは金持ち)だったらいいなあ」と思っているのである。だってそのほうが楽だからな。言い寄って断られて恥かくこともないわけだからさ。

さてそこで『パタリロ!』だ。この漫画の作者は魔夜峰央、男性である。女性作家が多く進出している男性向けの漫画と違い、ほとんど男性作家のいない中で非常にまれな「少女漫画家」といえる。そういえば、ほかに思いつく男性の少女漫画家って、柴田昌弘と和田慎二だけど、みんな白泉社だなあ。ジョージ朝倉とか三原ミツカズは女性だしなあ。

それはいいとして、この『パタリロ!』、久々に読み返してみて、あまりに面白いのでびっくりした。基本的には短編集の集まりなのだが、ストーリーの秀逸さはもちろん、細かなネタのテンポの良さ、男性らしい知識の惜しげない披露、子どものころにこんな質の高い作品に触れていたなんて幸運……なんて大げさに感動してしまった。

たまーに、『パタリロ!』読者だという人(なぜか男性が多い)に会うが、決まって話題になるのが、「10巻は泣ける話が多い」とか「忠誠の木」「マリネラに降る雪」はいいよね~、などという感動話だ。人を笑わせる話が描ける人は、泣かせる話も描けるってことなんだな。この人の絵はけっこう独特だと思うけれど、去年、エッシャー展を見に行ったら世界観がそっくりだったので、多大な影響を受けているように思う。

『パタリロ!』の主人公は、常春の国マリネラの国王・パタリロだ。わずか10歳だが成人病の固まりで大食漢、人知を超えた天才で、あらゆる分野に造詣が深い(ということは、作者がそうだってことだ)。そこに、イギリス情報局秘密情報部(MI6)に所属するバンコランと、彼の愛人マライヒ、パタリロの新鋭部隊・タマネギ部隊たちがヤンヤヤンヤやる話である。おおざっぱな説明で済まないが、何しろこの漫画、連載期間は30年を超し、既刊81巻という、少女漫画最長のロングランなのだ。然るに登場人物の多いこと。

そしてここでとりあげたいのは、恋愛についてなのだから、もちろんバンコランだ。美少年キラーという異名を持つ人物だが、これがなんでヲトメ心なのかは、待て次号。
<つづく>