最近めっきり恋愛願望がなくなっている筆者である。

だってさ……恋愛なんて結局は自己愛じゃねーか。などというつまらない思いが充満しているからである。例えば、誰かを好きになったとする。本来なら好きになっただけでいいじゃないですか。それでもなんとか振り向かせようとか、なんやかんややろうとするのは、誰のためでもない、自分の幸せのためじゃないの。

だから「冷めた」とか「飽きた」とか、仕事ではあり得ない理由でとっととほかに乗り換えたりするんである。仕事だったら、努力すればしただけの結果が出るけど、恋愛ほど理不尽なものはない。こんなものに全力を尽くす価値がホントにあるんだろーか? とか思っちゃってるのだ。

その"恋愛自己愛説"を存分に発揮しているのが、『ハッピー・マニア』の貴子だ。女にも男にももてない少々不細工な貴子は、シゲタを想うタカハシに片思いする。そして、とある事情でタカハシが記憶を失ったのをいいことに、「私はあなたの彼女だったの」と嘘をつき、なんとかタカハシをものにしようとする。そしてなんとなくうまく事が運びそうにないと、自殺のふりまでして、とうとう結婚にこぎ着けちゃうのだ。

タカハシは、貴子の思惑通りに結婚話が進んでいく途中、貴子に問う。
「君は、"形"さえ手に入れば、その過程や中身はどうでもいいんだな」と。

貴子が夢見る幸せな家庭、"やりくり上手"と言われて褒められながら夫に尽くす妻、優しい夫。こうした自分の夢を叶えるためには、誰が一番便利なのか。そうやって条件で相手を選び、ものにしようとするのだ。つまり、貴子はタカハシが好きだと言いながら、実はタカハシじゃなくったって、その夢が叶えられそうな人なら誰だっていいのだ。

でもこういう女は、日本にごまんといるはずだ。結婚さえすれば安泰、ゴールだと思うからこそ、貴子は強引に結婚を決めたのだ。「夜な夜な身体を求めてきた」「妊娠している」と、あらゆる嘘を放ってタカハシを縛り付ける。貴子のやり口は、巷でよく聞く手法でもある。けれども、果たしてそうやって手に入れた状態で、相手は自分を好きになるのか? 自分は幸せなのか? 夢は叶うのか?

タカハシは、「僕は君の夢を構成するパーツにはなれない」と言って貴子に別れを切り出す。けれども貴子は、ある人種の代表でもある。「家事が面倒だから」「子供が欲しいから」「世間体が悪いから」……だから「結婚したい」という男は多いだろう。その人の望むものは、貴子のそれと限りなく近い。しかし女からしたら、「そんな理由で自分を選ばれてもなあ」と思うだろう(ま~、もちろん女のほうも、"形"が大事で中身はどうでも、という考えだったらベストマッチングだけど)。

でもさ、恋愛なんて、多かれ少なかれ、自分の描く夢を叶えるためにするもんだ。男だって女だって、アイドルとつきあったり、楽しいデートを思い浮かべたり、セックスでメチャクチャ相手がサービスしてくれたり、相手が自分に面倒じゃない程度にメロメロだったらいいなと妄想したことがあるはずだ。

つまり相手を選ぶといっても、要はその夢をどれだけ相手になすりつけるか、ということでしょう。そんな面倒なもの、背負い込みたくないな、まったく……と思う筆者でした。

なんかブルーな話題になっちゃいましたが、次回は明るいネタ拾いを。
<つづく>