MobileMeのWebアプリがアップデート、いくつか新機能が追加されました。アップルジャパンのWebサイトには、「iPhoneを探す」がツールバーに加わった旨の紹介はありましたが、私はPublicフォルダ の項目をドラッグ&ドロップで移動可能になったことのほうが、インパクトが大きいような気がしますけれど。

さて、今回はSnow Leopardにおける「Quick Look」について。「アプリを起動することなくファイルの内容を閲覧する」と言ってしまえばかんたんだが、スペースキーをポンと押すだけの操作性は一度慣れると手放しがたく、OS Xユーザにとって当たり前の機能になりつつある。そのQuick LookがSnow Leopardでどのように変化したか、あるいはしていないのか、この場を借りて解説してみよう。

プラグインは32/64bitどちらもOK

ざっくりと言ってしまえば、Snow LeopardのQuick Lookは、Leopardのそれと大きくは変わらない。スペースキーまたは[Command]+[Y]キーを押すと動作することはもちろん、[Option]+[スペース]または[Command]+[Option]+[Y]のキーコンビネーションでフルスクリーン表示、といったテクもそのまま利用できる。

後方互換性は、おおむね心配無用。Leopardのとき利用していた32bit版バイナリ (i386+PPCのユニバーサルバイナリ) 収録のプラグインは、その多くが/Library/QuickLookまたは~/Library/QuickLookへインストールすれば動作する。

もちろん例外もある。たとえば、フォルダの内容を表示するプラグイン「Folder.qlgenerator」は、Snow LeopardでQuick Lookの仕様が変更されたことに伴い、一部のフォルダをのぞき機能しなくなった。iPhoneアプリのアイコンを表示する「quicklook-ipa」のように、64bit版バイナリの提供を開始したプラグインもある。

Khronosグループが管理する3DモデルデータフォーマットCOLLADAの3Dオブジェクト (dae) が閲覧可能になるなど強化された、Snow Leopardの「Quick Look」

デーモンは32bitと64bitが共存

ここで頭上にクエスチョンマークが点灯した読者も多いはず。というのも、子プロセスとして起動するバイナリが親プロセスのフォーマットと異なることはない -- 64bitアプリは32bitプラグインを利用できず、逆もまた然り -- という法則に従えば、32bit版と64bit版プラグインの両方が変わらず利用できるためには、なんらかのカラクリが必要になるからだ。

これを解くのが、必要に応じてQuick Lookプラグインを実行するデーモンの存在。Snow Leopardに標準装備のQuick Lookプラグインは、すべて64bit化 (i386とx86_64のユニバーサルバイナリ) されているため、64bitプロセスであるQuick Look Helper (実体は/System/Library/Frameworks/QuickLook.framework/Versions/A/Resources/quicklookd.app/Contents/MacOS/quicklookd) の子プロセスとして起動できるが、64bitバイナリを持たないSnow Leopard以前のプラグインは起動できない。そこでSnow Leopardでは、32bitバイナリ用のデーモン (/System/Library/Frameworks/QuickLook.framework/Versions/A/Resources/quicklookd32.app/Contents/MacOS/quicklookd32) を用意することで、32bitバイナリのプラグインを実行可能にしている。

32bit版プラグイン稼働時にアクティビティモニタを起動すると、2種類のデーモンが存在することがわかる

これからどうなる? Quick Lookプラグイン

32bit版と64bit版バイナリが共存する、Snow LeopardのQuick Lookプラグイン。次のOS Xではどうなる?

2種類のデーモンを用意することで、32bitと64bit両方のプラグインを実行可能にしたSnow Leopardだが、この措置は「移行期における暫定対応」と考えられる。Quick Lookのデーモンは未使用時間が続くと自動終了するとはいえ、ほぼ同じ機能を提供するデーモン2つが同時に稼働することは、リソースのムダであることに変わりはない。

逆にいえば、32bitバイナリのプラグインが流通しなくなれば「quicklookd32」の存在意義はなくなるわけで、Snow Leopardの登場により急速に進む64bit化の波がそれを後押しするはず。32bitバイナリしか実行できないIntel Macは、2006年前半に販売されたCore Duo / Solo搭載機のみであることを考えると、その日が到来するのはそれほど先の話ではなさそう。これは筆者の予想だが、Snow Leopardの次のバージョンでは、今回紹介したQuick Lookに見られるような32/64bitプロセスを共存させるための仕組みは廃止されるのではなかろうか。