Snow Leopardがついに発売。インストールディスクを前に、いつアップデートしようか悩んでいる向きも多いはず。今回は、スムーズな移行を望む方のために、「移行アシスタント」を使うときのポイントを紹介したい。

Time Machineで作成したバックアップは、移行アシスタントを使いSnow Leopardへコピーできる

スマートな「移行」を考える

Leopardのインストーラには、未使用のHDDを対象とした「新規インストール」、既存システムを残しつつ空き領域にシステムファイルをコピーする「アーカイブしてからインストール」、ディスクを消去してから作業する「消去してからインストール」の3方式が用意されていた。しかし、Snow Leopardでは後2者が選択できなくなり、すでにシステムが存在する場合は上書きアップグレード、それ以外は新規インストールとなる。

筆者の経験からいうと、OSは新規インストールがベストだ。/Library/Frameworksには消去していいかどうか悩ましい (参照元のアプリケーションを思い出せない) フレームワークが多数あり、~/Library/Preferencesにも要不要が定かでないplistファイルが溢れかえっている。それらファイルをいちいち吟味することは至難の業で、システムのアップデートにあわせ"まっさら"な状態から使い始めたほうがいい。

そしてSnow Leopardには「移行アシスタント」が用意されている。こちらの仕様はLeopardとほぼ同じで、Time Machineでバックアップした内容をSnow Leopardへ安全にコピーできる。メールアカウントなど各種ID / パスワードを一通り入力し直す手間はなく、まったくの新規インストールでゼロから始めるより作業量が断然少ない。アプリケーションやシステムファイルも、ファイルの要不要を判断することは難しく、再インストールを避けたければ移行アシスタントに任せるほうが無難だ。

Time Machineの使用をお勧めする理由は2つ。システムを完全バックアップするため、理論上はファイル/データの喪失がないことも1つだが、MacBook AirなどFireWireポートを装備しない機種で「別のMac」から移行する場合、ターゲットディスクモードを利用できないからだ。FireWireポートの形状(400/800)が異なることもあるだろうし、だからといってネットワーク経由での移行には時間がかかりすぎる。外付けUSB HDDを利用するTime Machineのほうが、安全かつ効率的だ。

ユーザ名が重複する場合は、異なる名称となるよう誘導される

筆者としては、新規インストールと移行アシスタント利用の"折衷案"を提案したい。その手順は、およそ以下のとおりとなるだろう。

  • LeopardでTime Machineを実行 (バックアップを作成)
  • Snow Leopardを新規インストール
  • Snow Leopardで移行アシスタントを実行、Time Machineでバックアップした内容から必要な項目を選択する

どの項目を選択するかだが、iPhotoやApertureを利用していれば「ピクチャ」、iTunesを利用していれば「ミュージック」を含めるとして、「デスクトップ」と「書類」は必須だろう。その他のフォルダは、必要に応じて選択すればいいと思う。なお、ユーザ別のライブラリフォルダ(~/Library)はアプリケーションの移行に含まれるため、個別には指定できない。

忘れずに選択しておきたいのが「その他のすべてのファイルとフォルダ」。Finderでは不可視のドットファイルを含め、DocumetsやLibraryなど主要フォルダを除くホーム直下のファイル / フォルダを一括コピーしてくれるので、~/.bashrc~/.emacs.elを作り直す手間が省けるはずだ。

「その他のすべてのファイルとフォルダ」を忘れずに選択すべし

「移行アシスタント」のココに注意

あっけなくLeopardの作業環境をSnow Leopardへ移すことができる「移行アシスタント」だが、いくつか注意すべき点もある。ここでは、特に重要なものをピックアップして紹介しよう。

アプリケーションは"そのまま"移行

悩ましいのはアプリケーションの移行だ。必要なフレームワークや初期設定ファイル (.plist) を含め、動作に必要なファイルをすべてコピーしてくれるうえ、SafariやPreviewなどSnow Leopard側に最新バージョンが存在するものについては上書きされない。ユーザIDの登録が必要なアプリケーションについても、あわせて移行処理が行われる。メールのメッセージなど、アプリケーションが持つデータも基本的に引き継がれる。

アプリケーションの移行はとても便利だが、前述した/Library/Framweorks~/Libraryなどのフォルダの内容がまるごとコピーされる点には要注意。新規インストールの清々しい状態でSnow Leopard生活を始めたいのならば、面倒でも1つづつアプリケーションをインストールしたほうがいいだろう。

コマンドは対象外

移行アシスタントは「アプリケーション」を移行してくれるが、GUIを備えたいわゆるCocoa/Carbonアプリが対象だ。/usr以下へインストールされるコマンドは含まれないため、Terminal愛好家は注意すべし。筆者も、pTeXやdvipdfmxなどLaTeX文書作成ツール一式とlvの再インストールを余儀なくされた。

プラグインに注意

アプリケーションの移行にはライブラリフォルダも含まれるため、SafariyやMailで使用しているプラグインまでコピーされる。しかし、Snow LeopardではMailなどのアプリケーションでプラグインアーキテクチャが変更されたため、Leopardまでは利用できたプラグインの大半が使用不能となったほか、インプットマネージャの機能を流用した「SIMBL」が利用できなくなっている (SIMBLについては「第304回 OS標準ハック仕様? の「SIMBL」を知る」を参照) 。移行後に初めて起動するとき、表示されるダイアログボックスに注意しよう。

Leopardのときは問題なく使えたプラグインが軒並み使用不可となっている