iPhoneのナビアプリをいろいろ試していますが、どれも現状カーナビとして使うにはムリがあります。その理由は単純明快、(おそらくはAppleのポリシーで) 音声ガイドが装備されていないから。GPSチップ内蔵なのでソフトをインストールするだけですし、操作のしやすさなど他のポータブルナビより優れている点も多いのですがね。なにか深慮遠謀あっての制限と思いたいです。

さて、今回は「Inkscape」について。弊誌でもハウツー記事「ゼロからはじめるInkscape - Illustratorライクな無料ドローツール」などで取り上げているが、残念ながらOS Xユーザでの知名度はいまひとつ。ニーズは高いはずが、なぜ……と原因を考えてみたところ、UIが原因の1つではという結論にたどりついた。ここでは、日本のユーザが扱いやすいようメニューバー日本語化の手順を紹介するので、お役立ていただきたい。

InkScapeの特徴

グラフィックアプリケーションは、JPEGやPNGなどのビットマップで構成された画像ファイルを加工 / 編集する「ラスタ系」と、数値データとして保有される点や線の集合体を対象とする「ベクトル (ベクター) 系」の2種に分類される。一部重複する機能はあるものの、代表的な存在として前者にはAdobe PhotoshopやGraphic Converter、後者にはAdobe IllustratorやCorel Drawが挙げられる。

わずかな作業で日本語化できるベクター画像編集ソフト「Inkscape」

無償利用できるものに限定すれば、ラスタ系では「Gimp」が定番と言っていい。SVGなどベクター画像も扱えるが、ツール類やエフェクトはラスタ画像の編集を前提にしたものばかりだ。

フリーなベクター画像編集ソフトは、「Inkscape」が多くのユーザから支持を集めている。レイヤーやマスク、オブジェクトの整列 / 結合など、いわゆるドローイングツールとして重要な機能をサポートするほか、互換性は完全ではないもののAdobe Illustrotor (ai形式) のインポートにも対応する。GimpがこれだけOS Xユーザの間で認知されているいま、もっとInkscapeも利用されていいと思うのだが。

Inkscapeの導入

インストールはドラッグ&ドロップで完了するが、そのあとにひと手間かけるべし

Inkscapeのインストールは、単純そのもの。本稿執筆時点における最新バージョンv0.46-2の場合、ダウンロードページから利用するシステムに応じたディスクイメージを入手、マウントしてからIncscapeのアイコンをApplicationsフォルダへコピーすればOK。ただし、Leopardユーザは事前にXquartzプロジェクトが配布する最新版のX11をインストールしておくこと。

ただし、ドラッグ&ドロップだけでは不十分。このバージョンのInkscapeは国際化が完了しているにもかかわらず、起動スクリプトに問題があり、日本語ロケールの設定に失敗するのだ。そのままではメニューが初期設定の英語となるため、以下のとおりコマンドを実行しここで配布する起動スクリプトと差し替えよう。これで、メニューや各種メッセージが日本語で表示されるはずだ。


$ curl -O http://journal.mycom.co.jp/column/osx/313/resources/inkscape
$ chmod +x inkscape
$ sudo cp inkscape /Applications/Inkscape.app/Contents/Resources/bin/

折角なので、ユーザ別のフォント (~/Library/Fonts) も使えるよう設定を変更しておこう。バンドル内部にある「fonts.conf」を編集し上記のパスを加えるのだが、以下のとおりコマンドを実行してもいい。Inkscapeの再起動後には、フォントが認識されているはずだ。


$ curl -O http://journal.mycom.co.jp/column/osx/313/resources/fonts.conf
$ sudo cp fonts.conf /Applications/Inkscape.app/Contents/Resources/etc/fonts/

メニューバーに使用される日本語フォントもこだわりたい。初期値の「Lucida Grande」は英文用のフォントセットであり、表示される日本語フォントは環境によってまちまちなうえ、フォントサイズが12ポイントと大きめに設定されているので、違和感があるのだ。個人的には10ポイントが適当だと思うが、どうだろう?

Inkscape 0.46の場合、フォントの設定はバンドル内部にあるGTK+のテーマ (Clearlooks-QuickSilver-OSX) で行われる。その下位ディレクトリにあるファイル「pre_gtkrc」で、「gtk-font-name="Lucida Grande 12"」と定義されているところを、fc-listコマンドで検出される日本語フォントに変更すればOKだ。これを「gtk-font-name="Hiragino Maru Gothic Pro W4 10"」としてヒラギノ丸ゴシック Pro W4 10ポイントに変更したファイルは、以下の手順でインストールできるので、スクリーンショットを見て気に入るようであればお使いいただきたい。もし正常に表示できないようであれば、ポイント数を示す「10」の箇所を修正したり、「gtk-font-name="Hiragino Maru Gothic ProN W4 10"」(ヒラギノ丸ゴシック ProN W4 10ポイント)に変更したりするといいだろう。


$ curl -O http://journal.mycom.co.jp/column/osx/313/resources/pre_gtkrc
$ sudo cp pre_gtkrc /Applications/Inkscape.app/Contents/Resources/themes/Clearlooks-Quicksilver-OSX/gtk-2.0/

メニューバーの見栄えが改善された「Inkscape」。食わず嫌いのユーザも、これで試す気になる?