【コラム】
iPhone 3Gの最新版ソフトウェアアップデートがリリースされました。これでバッテリーの減りの速さが緩和されるといいのですが。改善された日本語入力システムにも、要注目ですね。
さて、今回は「Genius」について。Appleが提供するこの自動プレイリスト作成機能、OS Xの機能と直接の関係はないが、ユーザ好みの楽曲をどのように選定するか、その仕組みには興味深いものがある。リリースされたばかりのiTunes 8.0を利用し、Appleがいうところの「雲」の向こう側をのぞいてみよう。
iTunes 8.0および新しいiPodシリーズ各機種 (shuffleを除く) でサポートされた「Genius」は、平たく言えば「自動プレイリスト作成機能」。曲の再生中にボタンをクリックすると、サウンドライブラリから似た傾向の楽曲を自動的に25曲 (初期値) を集め、プレイリストにまとめてくれる。アーティスト名や曲名、ジャンルなどは一切指定する必要なし。ただ曲を選ぶだけでこちらの好みを推測し、あとは"よしなに"計らってくれるのが、Genius最大の特徴だ。
このサービスは、「Geniusアルゴリズム」と命名された機構により提供される。ユーザのサウンドライブラリの情報は、iTunesを経由してAppleが運営するサーバに集積され、巨大な楽曲データベースとなる。ちなみに、先日のイベント「Let's Rock」では、データベースとその活用ルールを「クラウド」と表現していた。
Appleのショーン・ エリス氏に訊いた話によれば、再生回数やレートなど楽曲に付いたメタデータのほか、プレイリストの内容などがデータベース化されるが、曲のレコメンデーション (Geniusプレイリストに掲載する楽曲) を行う場合は、アーティスト名や分類されるジャンルではなく、あくまで楽曲単位で処理されるという。そのデータベースは、ユーザからの提供により日々情報が充実、すなわちサンプル数の増加により一層的確なレコメンデーションが可能となるそうだ。
一通り説明を聞いた筆者だが、やはりどこかで腑に落ちない。「クラウド」で片付けられてはたまるか、ということでいくつかの実験を試みることにした。
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話題の「Genius」をテストする |
ポピュラー音楽について語るとき、1つの基準となるのが「アーティスト名」。ポップスかジャズか、はたまたヘビメタか。著名なアーティストであれば、名前を耳にしただけで音楽性はある程度推測できてしまう。
しかし、活動時期により音楽性が大きく異なるアーティストも少なくない。たとえば、70年代に活躍したThe Doobie Brothers。前期はブギーやカントリー調の曲が多かったが、マイケル・マクドナルドの加入以降は音楽性が大きく変化。ファンキーかつ洒落た雰囲気の、いわゆるAORを代表するバンドへと変貌を遂げている。
最初の実験は、そのDoobiesの代表曲を前期・後期から1曲づつチョイス (前期=Long Train Running、後期=What A Fool Believes) 、それぞれGeniusプレイリストを作成するというもの。同じバンドとして括ることに無理があるほど曲調が変化しているので、エリス氏の説明どおり「曲が1対1の関係」であれば、リストの内容にも大きな隔たりがあるはずだが……。
果たして結果は、ほぼエリス氏の説明どおり。前期基準で作成したリストはハードな曲が中心となり、後期基準で作成したリストはAOR系が中心となった。70年代の音楽シーンに詳しければ、下図から一定の傾向が読み取れることだろう。
Geniusの機能を有効にしているとき、iTunes Storeで取り扱いがあるアーティスト / 曲の場合は、横の「Geniusサイドバー」にiTunes Store内の関連する曲が表示される。取り扱いがなければ、「Geniusサイドバーはあなたのセレクションに一致する曲を見つけられませんでした」と、ツレないメッセージが表示されるだけだ。
では、現在iTunes Storeで取り扱いがなく今後も期待薄と思われる曲 (ふだん筆者が聴いているジャンルはそんな曲ばかり) は、Geniusプレイリストの選定対象外なのだろうか? というわけで、実験2は「iTunes Storeで取り扱いがないアーティスト / 曲」をターゲットにしてみた。
結果だが、かぎりなく×に近い△といったところだろうか。たとえば、日本のプログレバンド「四人囃子」と「新月」の曲は、Geniusの対象外である旨が表示され、なにも起こらなかった。世界中に多くのファンがいるはずのKing Crimsonも、筆者が試したかぎりでは全曲×。
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クリムゾンの名曲「Starless」はGeniusの対象外だった |
一方、日本のiTune Storeで取り扱いがなければ対象外かというとそうではなく、世界のどこかのiTunes Storeで取り扱いがあればいいらしい。たとえば、イタリアのiTunes Storeで取り扱いがあるプログレバンド「Area」と「Osanna」、「Banco del Mutuo Soccorso」の曲は、Geniusの基準にできることを確認している。まだ確信できるほどのテストを重ねてはいないが、世界のどこかのiTunes Storeで (対象アーティストの) 取り扱いがないかぎり、Geniusのターゲットにはならないと考えたほうがいいようだ。
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