茹だるような暑さが続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。冷たいものを摂りすぎて体調を崩したりしませんように。けれど、ノート型機をお使いの皆さん、内蔵HDDはしっかり冷やしてあげてください。熱いまま使い続けると、HDDの寿命は確実に縮まりますよ……数カ月前の私のMacBookのように。

さて、今回はMacBookに特化したLinuxディストリビューション「Elive for MacBooks」について。OS Xの話題からは外れるが、昔はどのMac系雑誌でもBSDやLinuxの連載があったことを思えば、さほど不自然なことではないはず。しばしお付き合いのほどを。

なぜLinuxを使うのか

Elive for MacBooksの話を始める前に、MacにはOS Xという最適化されたOSがあるのに、なぜ他のOSに手を広げる必要があるのか、筆者なりの見解を述べさせていただきたい。

第一の理由としては、トラブル発生時の「緊急対応ツール」としての役割が挙げられる。OS XのインストールDVDで起動しても、パスワード再設定ツールやディスクユーティリティ、ターミナルを利用できるが、HDDのデータを確認したうえで救出する用途には使えない。シングルユーザモードやターゲットディスクモードという手もあるが、前者は完全にCUI環境のため難易度が高く、後者はFireWireをサポートしHFS+を認識可能なコンピュータ(通常はMacだろう)がもう1台必要になる。

もう1つの理由が、見聞を広めること。いわゆるOldWorldマシンの時代から、NetBSDなどMacで動作するPC-UNIXは存在したが、選択肢の少なさは否めなかった。Intel Macの時代に入り、FedoraやUbuntuなど最新のLinuxディストリビューションが試しやすくなったのだから、挑戦しない手はないだろう。

予想以上に使えます

Elive for MacBooksの使い方だが、まずはこちらのWebサイトからISOイメージをダウンロード、CD-ROMに焼いてほしい。あとはCD-ROMからMacBookを起動し、ユーザ名「eliveuser」にパスワード「elive」でログインすれば、鮮やかなEnlightmentのデスクトップが起動する。なお、テストに利用したMacBookは初代 / 白の1.83GHzモデルだ。

Elive for MacBooksに採用されているウインドウマネージャ「Enlightment」のデスクトップ

Enlightmentの設定パネル。アクセサリ(モジュール)の表示 / 非表示など動作の詳細を設定する

最初に、ファイルシステムの状況を調べるべく、ターミナルエミュレータの「urxvt」を起動してdfコマンドを実行、現在マウントされているファイルシステムを確認したところ、ふだんOS Xで使用している領域が「/mnt/MacOsX」(/dev/sda2)として認識されていた。読み込み専用でのマウントだが、ファイル救出が要件であれば、これで十分対応できる。なお、OS Xでは認識されない第1パーティションは「/mnt/windows_C」(/dev/sda1)としてマウントされたものの、BootCampで使用しているWindowsのFAT32領域は自動的にはマウントされていなかった。

/Users/***以下は一般ユーザの権限ではアクセスできないため、ファイルの救出は「su」でrootになった状態で行う

マウントされたHFS+を確認してみたところ、OS Xに採用されている文字符号化方式(UTF-8)は正常に処理され、濁点・半濁点を含む日本語ファイル / フォルダ名の表示も問題なし。アプリケーションによっては問題が生じる可能性はある(ちなみに収録されたEnlightmentは日本語非対応)が、ターミナルおよび標準のファイルブラウザはOKだ。

付属のファイルマネージャでホームディレクトリ( /mnt/MacOsX/Users/shinobu )にアクセスしたところ。濁音・半濁音を含むファイル名も表示されている

ネットワークの設定も無用、ルータ経由でインターネットに接続できた。マルチメディア機能については、初代MacBookで試したかぎり、デフォルト設定のまま使える。付属のWebブラウザiceweasel(Firefox 2.0)を起動し、YouTubeのビデオを再生したが、映像 / 音とも正常だった。

ところで、Elive for MacBooksではシステムアイドル時の省エネルギー対策が今ひとつ考慮されていないようで、起動してから20分ほど経過すると、OS Xで起動しているときに比べボディが熱い。デスクトップ右下にあるCPUのクロック数を表示したアクセサリ(cpufreq)を操作し、クロック数を下げると幾分マシになる気もするが……。

MacBook Proでも動く! が、しかし

MacBook Proへの対応が気になる向きもあるだろうから説明しておくと、動作するかしないかでいえば「動く」。2代目MacBook Pro(17inch、MA611J/A)で試したところ、グラフィックチップのATI Radeon Mobility X1600は正しく認識され、デスクトップも問題なく現れた。インストール直後は無効だったオーディオ機能も、コントロールパネルの「ELIVE PANEL」からオーディオマネージャを起動し、サウンドカードに「hda-intel」(自動検出された)を選択すると問題解決。

ただし、MacBookとは信号が異なるのか、デフォルトの状態では2本指スクロールが動作しなかった。カーソルの動きも過敏というか、調整なしには操作しにくい。MacBook Proで試す場合には、その点を覚悟のうえでトライしてほしい。

このように手動でサウンドチップを設定したところ、MacBook Proでも音が鳴りました