ここ数年、個人間で送金できるサービスが増えており、特に今年はクレジットカード払いで簡単に送金できる割り勘アプリが続々と登場した。受け取ったお金の出口は、再び同サービス内での支払いに使う、または手数料を差し引いて銀行口座に出金する形式が多いが、Visa加盟店で普段の買物に使うことができ、高い実用性を持っているのが「Kyash」だ。

Kyashは今年4月にスタートしたサービスで、手数料無料でユーザー同士の個人間送金ができるアプリ。送金はアプリ内の残高から行なわれ、残高が不足している場合は登録したクレジットカードから充当される。受け取ったお金は残高にチャージされ、再びアプリ内での支払いに使うか、登録時に発行されるVisaカード番号でネット上での買物に利用可能。買物時に残高が不足している場合も、登録したクレジットカードから充当される。なお、銀行口座に出金する機能はないため、残高を現金化することはできない。

請求および送金はLINEやFacebookのMessenger経由で行なうこともでき、QRコードの表示・読み取りも可能。たとえば、大人数の飲み会で建て替えした場合も、QRコードを表示して各自に読み取ってもらえば、何度もやり取りを行なわずに済む。Kyashユーザーを対象にした簡単な物品販売や会費、寄付の受け取りなどに使うことも可能だろう。

利用するクレジットカードをすぐに切り替えられる

Kyashの便利なところは、発行されたVisaカード番号での買物にも使いやすいこと。送金された金額を残高に買物するためプリペイドカードのような仕組みだが、買物で残高不足の場合は不足分だけをクレジットカードから充当してくれるので、一般的なプリペイドカードのように事前にチャージする必要がなく、端数も発生しない。

また、最大5枚のクレジットカードを登録でき、残高不足分をどのカードから支払うかアプリ上ですぐに切り替えられるため、複数のクレジットカードを使い分けている人は、ネットで使うカード番号をひとつにまとめることが可能だ。利用するショッピングサイトにはKyashのVisaカード番号だけ登録しておき、支払いの際に使うカードをアプリ上で選択すれば、カードを変えるたびに番号を打ち込まずに済む。

この方法はセキュリティ面でもメリットがある。KyashのVisaカードにはロック機能があり、アプリ上ですぐに設定および解除できるため、使わないときはロックしておけば不正利用される心配がない。万が一利用したショップからKyashのVisa番号が流出した場合も、クレジットカードの情報は漏れないため、ネットショッピングのセキュリティに不安を感じている人にも使いやすいだろう。

なお、登録できるクレジットカードはVisaまたはMastercardブランドのみ。デビットカードとVプリカも登録可能だ。KyashのVisa番号を使った買物は、1回につき3万円、月間12万円が上限となっている。将来的にはネットだけでなく、実店舗でも残高で買物できる仕組みを検討中とのこと。現在でもモバイルSuicaのチャージに使えば、間接的に電車やバスの乗車、Suica加盟店での買物に利用することは可能だ。

ちなみにKyashには三井住友銀行、ジャフコ、伊藤忠商事、電通デジタル・ホールディングス、みずほキャピタルといった多くの大企業が出資。過去にはランチタイムに利用するとキャッシュバックが受けられるキャンペーンや、キングコングの西野亮廣を招いたイベントを行なうなど、現在普及に向けて様々な展開が行なわれている。利用料や手数料は一切かからず、残高を使い切れない心配もない。スマホに入れておいて損はないアプリだろう。

※本記事で紹介したサービス内容は、消費税率8%を前提とした更新日時点の情報です。また、各サービスには一部対象外となるケースがあります。ご利用の際は公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。
<著者プロフィール>

タナカヒロシ(ライター・編集者)

普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月8日発売の『最強クレジットカードガイド2017 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川SSCムック)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。