【コラム】

小売・流通業とマーケティングのトレンドを読み解く

2 "烏龍茶飲料 売上No.1"はどうやって調べてるの? - 身近なデータ活用事例

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コンビニで飲み物を買うとき、パッケージに「○○業界No.1」といった表記が書かれていて、「美味しそう」「安心できそう」と思いつい手を伸ばした――という経験を持つ人は少なくないはずです。

サントリー烏龍茶
(写真提供 : サントリー食品インターナショナル)

例えば、私が愛飲している烏龍茶系飲料では、サントリーが販売する商品に「烏龍茶飲料 売上No.1」といったラベルが記載されています。

でもこの表記、よくよく考えると不思議に思いませんか。

飲料水は、毎年無数の新商品が発表され、全国各地の小売業で販売されています。その全国的な売上状況は、小売・流通業はもちろん、商品の発売元となるメーカーであっても、その状況を把握することは容易ではありません。ましてや他社との比較はほぼ不可能に思えます。

ではこのようなランキングはどのように集計され、発表されているのでしょうか。

第2回となる今回は、身近だけど意外と知らない「小売・流通業にまつわる身近なデータ活用事情」を少しお話したいと思います。

売上データは宝の山 - 小売・流通/メーカーの強い思い

日本において本格的なデータ活用を牽引したのはセブンイレブンです。

セブンイレブンは1983年、当時2000店舗あった加盟店すべてにレジの情報をシステムで一元管理する「POSシステム」を導入。当時、通産省が普及を促進していた「JANコード」とあわせて、商品ごとの売上管理を開始しました。(業界内ではセブンイレブンがJANコードを普及させたと評する声もあります)

これにより、「売れ筋の欠品を防ぎ、死に筋を排除することで大型店舗にも負けない "実質的な品揃え" を実現する」独自の経営手法「単品管理」を開発し、店舗当たりの売上が業界平均より3割以上高いという結果に。現在の圧倒的な地位の礎を築くことに成功しました。

セブンイレブン ジャパン 公式Webサイト「企業情報>セブン-イレブン徹底解剖」にて記載された店舗情報システムへの取り組み

この経営手法は、世界的にも「tanpin-kanri」として尊敬を集め、それまで会計管理の域に留まっていた小売・流通業界のデータ活用を一気に加速させるきっかけとなりました。

セブンイレブンの成功により、仕入れにデータを活用することは業界の常識となり、近年では、会員証や共通ポイントカードを用いて「誰が買ったか」という要素を加えて管理する手法が普及しています。これにより、単純な売上に留まらない「リピート率」や「買った人の属性」といった観点を持つことが可能となり、本当に気に入ってもらっている商品や定番化する商品を判断することができます。

例えば、ローソンでは発売当初、店舗当たり1,2個しか売れていなかった「ブランパン」という商品のリピート率・ヘビーユーザー率が高いことに着目。各店舗を訪問し置く数を増やすようお願いするなど、地道な努力を続けたことで大ヒット商品に成長させるなど、データを活用した展開に成功しています。

このように、商品別の売上は小売・流通自身だけではなく、メーカーにとって実は欲しくて仕方がないデータです。

メーカーは、市場の状況や売れ行きを見定めて、商品開発や在庫調整、流通網の判断などを行うのですが、小売・流通を介してお客様と接するという事業モデルである故、そのための情報源は自社商品の売上やアンケート調査など極めて限られてしまっています。

そこで、小売・流通業におけるPOSの発展と共に、全国の小売・流通業のPOSデータを収集しメーカーに販売する会社が現れました。例えば、業界大手のカタリナマーケティング社では、小売・流通業に対して、買ったものに応じてクーポンを発券し、お客様の再購買を促すレジ前クーポンの仕組みを提供し、その代わりにデータを収集。これを、メーカーに販売しています。

実は、冒頭に挙げた「○○業界 売上No.1」といった表記は、このような会社が公表するデータに基いて発表されています。

例えば、「烏龍茶飲料No.1」というラベルの下には、小さく「インテージSRI調べ 烏龍茶飲料2014年1月~2014年12月累計販売金額 全国SM・DRUG・CVS計」という表記があります。

これは、インテージという会社が提携する全国のスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアにおける烏龍茶飲料の販売金額を集計し、同データから推測した結果、「サントリーの烏龍茶がNo.1だと予測した」という意味になります。

データを活用することは、大型化・チェーン化が進む小売・流通業界では、もはや必要不可欠のものと認識されています。担当者は日々、少しでもお客様のニーズを掴もうと必死にデータを収集し、分析を続けています。

最近では、インターネットショッピングやスマートフォンアプリにて収集されるデータを活用する方法も模索されているなど、ますますの発展が期待されています。

全国的なヒット商品ではないけど、実は気に入って毎日買っている商品――その愛が伝わり、自分好みに商品開発が進んでいくような日も、遠くないのかもしれません。

執筆者紹介

伊藤 圭史

Leonis & Co.共同代表
および トランスコスモス オムニチャネル推進室 室長

上智大学卒業後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現 : 日本IBM)に入社。2011年12月、オムニチャネルに特化したシステムとコンサルティングサービスを提供するLeonis & Co.を設立する。その後、オムニチャネルの専門家として通信会社や百貨店、電鉄などさまざまな企業を支援。現在は、トランスコスモスグループのオムニチャネル推進支援サービスの中核企業としてオムニチャネルマーケティングシステム「OFFERs」の提供を主軸とした展開を行っている。

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インデックス

連載目次
第5回 鈴木敏史氏の絶筆となったオムニ7はなぜ正しい戦略と言い切れるのか
第4回 EC事業部が小売・流通業のEC事業を破綻に追い込む理由
第3回 変化を迫られる百貨店 - 各社の戦略から次の時代を考える
第2回 "烏龍茶飲料 売上No.1"はどうやって調べてるの? - 身近なデータ活用事例
第1回 オムニチャネルとは、消費活動の"いま"を読み解くこと
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