給与の額面が同じなら、扶養家族がいる人の方が税金は安くなる。おひとりさまは、税金面で損なのだろうか? 税金が安くなる控除の仕組みを把握し、公共サービスの活用法を考えたい。

税金には一律と段階的に上がっていくものがある

収入が多い人も、それなりの人も、一律10%で計算されるのは何税? この質問にパッと答えられたら、かなり税金に詳しい人のはずだ。答えは住民税! 会社員なら毎月の給与からは所得税と住民税が天引きされている。所得税は1年間の所得に応じて税率が決まり、所得が多い人ほど税率は高くなる。5%から始まり、10%、20%、23%、33%と上がり、最高は40%。これに対して住民税は一律10%だ(2014年現在)。

2014年4月から税率が8%に上がった消費税も、買い物をした人の収入は関係なく、商品価格の8%で計算する。税率は一律の方が単純で分かりやすいと私自身は思うが、それではちょっと乱暴なのではないか、と考える人もいるだろう。所得税の税率が段階的に上がっていくのは、収入が多い人には税金もたくさん負担してもらおうという考えに基づいている。

収入と所得の違いは?

さて、ここでまず確認しておきたいのが、収入と所得という言葉の使い分けだ。

税金の世界では、

  • 収入…入ってきた金額。会社員なら給与の額面(源泉徴収票の支払金額に記載の額)

  • 所得…収入から必要経費を引いた残り。会社員は、収入(額面)から給与所得控除を引いたものを給与所得という

会社員は自分で必要経費の申告をしないので、意識している人は少ないと思うが、会社員にとっての必要経費にあたる給与所得控除を自動的に引いてもらえる仕組みだ。給与所得控除は、収入の低い人は4割程度、収入が増えるにつれて少なくなり、年収1500万円を超えて稼いでいる人は2割に満たない金額しか引くことができない。ここでも収入が多い人は税金が高くなる仕組みが取り入れられている。

給与所得からは、さらに社会保険料控除や生命保険料控除を引くことができるが、配偶者や扶養家族(子どもなど)がいれば、その分も控除することができる。こうして、収入から引けるものをどんどん引いていった残りが「課税所得金額」で、これに税率を掛けて所得税を計算する。

おひとりさまは控除が減る?

配偶者控除は38万円、扶養控除は1人あたり38万円(条件に当てはまる人は48万円~63万円)。扶養家族が多いほど控除が増えて、結果的に所得税は減る。つまり、配偶者も子どももいないおひとりさまは、引くものが少ないので、その分、税金は高くなるわけだ。扶養控除については、数年前から中学生以下(15歳以下)の子どもは対象から外れたが、その代りに児童手当が支給されている。扶養家族がいることなどにより支出が多い人はそれを考慮して税金を減らしましょうというわけだ。

そこそこの収入がありながら、家族がいないおひとりさまは、税金の計算では、どうも分が悪い。税金を減らすには控除を活用することだが、おひとりさまでも利用できる控除にはどんなものがあるだろうか?

  • 医療費控除…年間の自己負担の医療費が10万円を超えたら、超えた分を医療費控除額として申告できる。持病がある、大きな手術をしたなどということがなければ、普通のおひとりさまは10万円以上の医療費がかかることは、あまりないのでは? 生命保険会社の医療保険に加入していて保険金が支払われたら、その分を引いて、自己負担額を計算する

  • 保険料控除…生命保険、医療保険、介護保険、年金保険、地震保険に入っていると、一定額を保険料控除として引ける。おひとりさまは、保険に入っている人がそもそも少ないと思われる上、入っていたとしても、所得税が大幅に減ることは、あまり期待できないかも

  • 寄付金控除…対象となる団体に2000円を超えて寄付をすると控除してもらえる。お金に余裕があり、この団体のためにという目的があるなら、検討してもいいかも。最近は地方自治体に寄付をすると変わりに特産品がもらえたりする「ふるさと納税」が人気だ

  • 雑損控除…自然災害や盗難で損害を受けたら、その一部を控除してもらえる。万一のときは利用したいが、毎年あっても困る

  • 住宅借入金等特別控除…景気を刺激するために期間限定で、住宅を買った人への税金の優遇が行われている。住宅ローン残高の1%(年間で最高40万円)を10年間にわたり、所得税額から引くことができる(住宅や人に条件あり、2017年の入居まで)。こちらも、おひとりさまで家を買う人は少数派と思われるので、あまり関係ないかもしれない(おひとりさまと住まいについては次回、取り上げる)

こうしてみてくると、家族がいる人に比べて、利用できる控除はやはり少ない。それなら、税金で運営されている公共サービスに視線を転じてみよう。

税金はどんなふうに使われている?

税金は、道路や橋などの生活インフラ、安全を守るための警察、子どもの義務教育などに利用されているが、身近なところでは、自治体が運営する図書館やスポーツ施設などもある。また高齢化にともなって、住民向けの様々なサービスも増えている。

もしもずっとおひとりさまだとしたら、自分が暮らしている自治体がどのようなサービスを行っているかは重要だ。いずれ結婚して子どもを持ったとしても、生活や教育のインフラは生活に密接にかかわってくる。住民税を納めている自治体が、どのように税金を使い、どのようなサービスを行っているか、どんな公共施設があるかを、一度、確認したい。自治体のホームページや広報誌などに記載されている。公園にお弁当を持って遊びに行けば安上がりだし、自治体の施設なら低料金でスポーツも楽しめる。

毎日の暮らしに関わる税金にきちんと目を向けよう!

毎年、勤務先から配布される給与所得の源泉徴収票には、源泉徴収された所得税額が記載されている。住民税は記載されていないので、毎月の給与明細で確認する。合計で年間いくら払っているかを計算したことがあるだろうか? かなりの額になるはずだ。加えて、買い物をすれば8%の消費税を払い、お酒の価格には酒税が含まれ、車を持っているなら車関係の税金もかかる。税金の控除について知るとともに、その使い道にも目を向けたい。

次回は、おひとりさまの住まいについて考察します。

(※画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。