商品やサービスの販売をビジネスとしている事業者にとって、販売管理の業務の負担は、かなりのものである。単に請求書を作成すれば終わりというわけではない。売上の集計、入金の管理、在庫の管理などを行う必要があり、さらに、それらの結果を会計上の帳簿にも反映させなければならない。何らかのソフトの助けなしに販売管理業務を行うことは不可能に近いだろう。こうした問題を解決するうえで有力な選択肢の一つして挙げられるのが「請求応援Lite」だ。

「請求応援Lite」は、エプソンの応援シリーズの販売管理ソフトである。今回から4回にわたり、このソフトについてのレビューを行う。その初回となる今回は、「請求応援Lite」の日々の販売管理業務への適用という観点から、導入の容易さと操作性の良さについて評価する。

請求書の作成だけでも元はとれる

販売管理業務は、会計業務と異なり、最終的に決算書や元帳、試算表といった帳票を必ず作成しなければいけないという一般的な決まりがないので、専用ソフトの導入になかなか積極的になれないというのが実情だろう。

販売管理業務は、請求書の作成から発送、納品、発注、仕入、代金の回収、仕入れ代金の支払い、商品在庫の管理、在庫の問い合わせ、たな卸しの評価といった様々な業務から成り立っている。これらの業務をすべて自社の都合に合わせて処理できるソフトを探すと、結局のところ、自社オリジナルの販売管理システムを開発することになる。販売管理システムの開発には、多大なコストがかかる上に、汎用性が低いため、後から機能追加することが難しい。たとえできたとしてもコスト的に合わないことが多いという。

そのような事情から小規模な法人や個人事業者は、販売管理ソフトの導入を見送っているケースも多いだろう。販売管理業務で最も重要なのは、請求書の作成である。とりあえず、請求書さえ作れれば、商売ができるからだ。

請求書の作成だけならワープロや表計算ソフトでもできるじゃないか、その方が安上がりだ――と思ったら大間違い。ワープロや表計算で作成した請求書は、結局印刷物でしか管理できない。たとえば、得意先ごとの入金を確認するには、請求書を集めて電卓で集計し、入金金額を確認しなければならない。つまり、安易な方法で請求書を作成している場合、その後の業務の負荷が想像以上に大きいのである。

そこで、市販の販売管理ソフトの導入を検討する価値がある。市販の販売管理ソフトは、低価格なので、とりあえず、初期コストは低い。小売店の店頭販売以外は、ほとんどの場合、請求書を作成して代金をもらう。これは、物販でもサービスの提供でも同じである。販売管理ソフトで請求書を作成することができれば、売掛金や買掛金などの管理業務は別として、少なくとも元はとれるはず。そして、販売管理ソフトでの請求書の作成がうまくいけば、後の業務は結果的に自動化されるのだ。

売上を入力すれば、自動的に請求書が作成される

販売管理ソフトの基本は、言うまでもなく売上伝票や請求書などの書類の発行である。商品を納品する際には、売上伝票や納品書を商品に添付する必要がある。もちろん、最終的には請求書を発行しなければならない。請求書は、売上や納品ごとに発行する場合もあるが、定常的に取引のある得意先に対しては、締日で合計請求書を発行するという方法が一般的である。

「請求応援Lite」では、納品書や請求書を直接入力するのではなく、日々の売上を入力しておけば、自動的に締日までの請求書が作成される。売上の入力さえしておけば、その後に必要な書類は自動的に作成されるということだ。売上の入力は、会計ソフトにおける仕訳の入力に似た感覚があるが、販売管理ソフトの場合、試算表などの社内資料ではなく、得意先に提出する書類の作成がメイン。つまり、会計ソフトよりも直接的に業務に関与するのだ。売上の入力は、売掛台帳または売上伝票で行う。

売掛台帳入力: 売掛台帳は、日々の売上を入力する台帳である。売掛台帳は、得意先ごとに売上、値引、返品、入金などを入力できる。伝票に関係なく売上の明細を入力できるが、後で複数の明細を同一の売上伝票にまとめることができる

売上伝票修正: 日付、得意先、担当者、伝票番号が同じ明細は、自動的に1つの売上伝票にまとめられる。売掛台帳で入力した売上の明細は、売上伝票上でも修正できる

売上伝票入力: 伝票単位で入力したいときは、売上伝票で入力する。売上の明細は、どこで入力しても一元管理されるため、便利である。売上伝票は、得意先ごとの売上の内容を入力するので、最もわかりやすい入力である

売上伝票印刷: 売上の入力ができていれば、即座に売上伝票を印刷することができる。売上伝票は、売上の管理資料として重要な書類である。出荷の確認に使用したり、納品時に添付したりする場合もあり、売上を入力したら、まず売上伝票や納品書を印刷する

請求書発行: 請求書は、締日などの条件を指定していつでも印刷できる

請求書: 請求書には、通常、前回の締日から今回の締日までの売上明細が自動的に印刷される。少なくとも、この機能が使えるだけで「請求応援Lite」を導入する価値があるだろう

振替伝票入力: 振替伝票入力では、すべての得意先の売上や入金などを入力することができる。何でも入力できる万能の伝票である。振替伝票は、他の入力と違って、すべての取引を日付順に一望できるという特徴がある

キーボードのみでの操作に配慮

販売管理ソフトでは、入力内容が基本的に文字か数値しかない。グラフィック系のソフトのようにマウスでなければ操作できないようなオブジェクトを扱うわけではないので、キーボードからの入力だけで十分だ。ところが、標準的なWindowsのソフトのUIでは、メニューの選択はマウスで行う。キーボードからの入力とマウスの操作の組み合わせは、パソコンに慣れていない初心者でも理解しやすいという利点もあるが、入力の効率が低下するという欠点もある。

メインメニュー: 「請求応援Lite」の良さの1つは、メインメニューをファンクションキーで選択できるという点である。まず、日常的に使う機能のメニューはファンクションキーに割り当てられている。複数のキーの組み合わせでなく単一のファンクションキーで呼び出せるため、操作性がよい

売上伝票: 各伝票や台帳などの入力画面では、「N」(標準)、「S」(「Shift」キーを押した状態)、「C」(「Ctrl」キーを押した状態)の切り替えにより、ファンクションキーで多くの機能を呼び出せる。もちろん、機能や科目の選択は、マウスでも可能だ。前回と同じ日付を入力する場合は「Enter」キーを押すだけでよい

まずは、体験版を試してみよう

「請求応援Lite」には、ほとんどの機能を試用できる体験版が用意されている。体験版は、3ヶ月間試用可能で、入力したデータをそのまま製品版に引き継ぐことができる。この種の業務ソフトは、実際に使ってみないと、導入効果があるかどうかを判断しにくいかもしれない。応援シリーズの体験版は、エプソンのWebサイトからダウンロードすることができるので、とりあえず使ってみることをお勧めする。

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以上、今回は「請求応援Lite」の導入メリットと基本的な操作方法について説明した。販売管理ソフトの導入がどのような効果をもたらすのか、おわかりいただけたのではないだろうか。次回は、もう一歩踏み込み、販売管理ソフトの使い勝手を左右するマスター操作に焦点を当て、機能紹介を続けていこう。