【コラム】

ダイナミックObjective-C

81 デザインパターンをObjective-Cで - Proxy (3)

 

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前回はProxyパターンを実現する、NSProxyクラスについて説明した。今回は、実際にこのクラスを使うことを説明しよう。

NSConnectionを使ったコネクションの設定

NSProxyは、スレッド間通信、またはプロセス間通信で使われる訳だが、NSProxy自体は遠距離にあるオブジェクトの「代理人」の役割を果たすにすぎない。実際には、通信を行ってくれるクラスも必要である。まずは、そこから説明しよう。

この通信を行ってくれるクラスは、NSConnectionである。このクラスが、異なるスレッド、または異なるプロセスの間をつないでくれる。さらに、ネットワーク越しの通信も可能である。

ここでは、同一ホストにあるプロセス間の通信を例に挙げて説明しよう。この場合は、まずNSConnectionに「名前」をつける。この名前を使うことで、どのプロセスからもアクセスできるのだ。

次に、メッセージ通信で呼ばれる側、つまりサーバとなる側の設定だ。ここでは、他のプロセスからのメッセージを受け取るオブジェクトを設定しておく。これを、ルートオブジェクトと呼ぶ。

これらの設定には、次のメソッドを使う。

List 1. NSConnection.h

- (BOOL)registerName:(NSString*)name;
- (void)setRootObject:(id)anObject;

そして呼び出す側、つまりクライアント側では、先ほど設定したルートオブジェクトのプロキシを使うことになる。これを取り出すには、rootProxyForConnectionWithRegisteredName:host:というメソッドを使う。

List 2. NSConnection.h

+ (NSDistantObject*)rootProxyForConnectionWithRegisteredName:(NSString*)name host:(NSString*)hostName

名前には、さきほど登録したNSConnectionの名前を使う。ホスト名は、ネットワーク上でのホストの名前だ。同一ホストにある場合は空文字を指定しておく。

これらを使えば、プロセス間通信ができるのだ。

実際の通信

では、実際に通信してみよう。プロセス間通信なので、2つのアプリケーションを作ることになる。

まず、呼び出される側、つまりサーバ側を説明しよう。ここでは、Serverというクラスを作ってみる。こちらで行うことは、NSConnectionへの名前の登録と、ルートオブジェクトの設定だ。次のようにしよう。

List 3. Server

- (void)register
{
    NSConnection*   connection;
    connection = [NSConnection defaultConnection];
    [connection registerName:@"Server"];
    [connection setRootObject:self];
}

NSConnectionのインスタンスを取得して、名前を付ける。そしてルートオブジェクトとして、自分自身を設定しておいた。これで、送られてきたメッセージは、このServerクラスが受け取ることになる。

続いて、クライアント側だ。こちらでは、プロキシを取得する。

List 4. Client

- (void)invokeServer
{
    id  proxy;
    proxy = [NSConnection 
            rootProxyForConnectionWithRegisteredName:@"Server" host:@""];
}

先ほど登録した名前を使って、NSConnectionからプロキシを取得している。

これだけで、すべての準備は完了だ。あとは、プロキシに対してメソッド呼び出しを行えば、それはサーバに送られる。

NSDistantObjectによる通信の効率化

NSConnectionから得られたプロキシについて、もう少し説明しよう。これは、NSDistantObjectというクラスになっている。このクラスは、NSProxyのサブクラスだ。このサブクラスでは、通信に便利なメソッドが追加されている。

スレッド間通信やプロセス間通信で一番問題となるのは、そのパフォーマンスだ。同一スレッド内でのメソッド呼び出しと比べると、当然のことだが、圧倒的に時間がかかる。これは、ある程度までは仕方がない。計算機的に、ある程度のコストがかかることは避けようがない。

だがここで問題となるのは、Objective-Cの動的な特性だ。Objective-Cではメソッドを呼び出すとき、それが実装されているかどうかは、呼び出し先に問い合わせるまで分からない。ということは、プロセス間通信を行うときも、まずメソッドが実装されているかを問い合わせて、その後実際の呼び出しを行う、という二重の手間がかかることになる。

これを回避するために、あらかじめ呼ばれる側が持っているであろうメソッドの一覧を、プロキシに設定しておくことができる。それには、setProtocolForProxy:を使う。

List 5. NSDistantObject

- (void)setProtocolForProxy:(Protocol*)aProtocol

このメソッドを使えば、呼ばれる側のメソッドをプロトコルの形であらかじめ設定できる。これにより、無駄な通信を減らすことができるのだ。

ちなみに、プロトコルについては、本連載の第9回「プロトコルが必要とされた背景とは? - なぜあえて静的な型を?」で取り上げたので、そちらも参照してほしい。

これは、NSProxyで実現されているProxyパターンの実際だ。一度プロキシを取得してしまえば、通常のオブジェクトとまったく同等に扱える。だが、その内部では、通信の効率化のために様々な工夫がされていることが分かるだろう。

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インデックス

連載目次
第121回 デザインパターンをObjective-Cで - Visitor (2)
第120回 デザインパターンをObjective-Cで - Visitor (1)
第119回 デザインパターンをObjective-Cで - Template Method (1)
第118回 デザインパターンをObjective-Cで - Strategy (1)
第117回 デザインパターンをObjective-Cで - State (1)
第116回 デザインパターンをObjective-Cで - Interpreter (2)
第115回 デザインパターンをObjective-Cで - Interpreter (1)
第114回 デザインパターンをObjective-Cで - Mediator (3)
第113回 デザインパターンをObjective-Cで - Mediator (2)
第112回 デザインパターンをObjective-Cで - Mediator (1)
第111回 デザインパターンをObjective-Cで - Observer (3)
第110回 デザインパターンをObjective-Cで - Observer (2)
第109回 デザインパターンをObjective-Cで - Observer (1)
第108回 Fast Enumeration (4) - Fast Enumerationに対応するクラスの実装
第107回 Fast Enumeration (3) - Fast Enumerationのソースコード
第106回 Fast Enumeration(2) - NSFastEnumerationプロトコル
第105回 Fast Enumeration(1) - 速い列挙子
第104回 プロパティ(4) - プロパティの属性
第103回 プロパティ(3) - ドット演算子
第102回 プロパティ(2) - プロパティの宣言
第101回 プロパティ(1) - インスタンス変数のアクセス制御
第100回 ガベージコレクション(5) - コピーGCとコンパクション
第99回 ガベージコレクション (4) - マーク・アンド・スイープ
第98回 ガベージコレクション(3) - 保守的でありながらオブジェクト的
第97回 ガベージコレクション (2) - 実体であるlibauto
第96回 ガベージコレクション (1) - GCのためのAPI
第95回 デザインパターンをObjective-Cで - Memento (2)
第94回 デザインパターンをObjective-Cで - Memento (1)
第93回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (5)
第92回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (4)
第91回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (3)
第90回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (2)
第89回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (1)
第88回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (5)
第87回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (4)
第86回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (3)
第85回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (2)
第84回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (1)
第83回 デザインパターンをObjective-Cで - Iterator (2)
第82回 デザインパターンをObjective-Cで - Iterator (1)
第81回 デザインパターンをObjective-Cで - Proxy (3)
第80回 デザインパターンをObjective-Cで - Proxy (2)
第79回 デザインパターンをObjective-Cで - Proxy (1)
第78回 デザインパターンをObjective-Cで - Flyweight (2)
第77回 デザインパターンをObjective-Cで - Flyweight (1)
第76回 デザインパターンをObjective-Cで - Facade (1)
第75回 デザインパターンをObjective-Cで - Decorator (2)
第74回 デザインパターンをObjective-Cで - Decorator (1)
第73回 デザインパターンをObjective-Cで - Composite (2)
第72回 デザインパターンをObjective-Cで - Composite (1)
第71回 デザインパターンをObjective-Cで - Bridge (3)
第70回 デザインパターンをObjective-Cで - Bridge (2)
第69回 デザインパターンをObjective-Cで - Bridge (1)
第68回 デザインパターンをObjective-Cで - Web Kitを考える Adapter (4)
第67回 デザインパターンをObjective-Cで - Adapater(3)
第66回 デザインパターンをObjective-Cで - Adapater (2)
第65回 デザインパターンをObjective-Cで - Adapter (1)
第64回 デザインパターンをObjective-Cで - Factory Method (4)
第63回 デザインパターンをObjective-Cで - Factory Method (3)
第62回 デザインパターンをObjective-Cで - Factory Method (2)
第61回 デザインパターンをObjective-Cで - Factory Method (1)
第60回 デザインパターンをObjective-Cで - Prototype (4)
第59回 デザインパターンをObjective-Cで - Prototype (3)
第58回 デザインパターンをObjective-Cで - Prototype (2)
第57回 デザインパターンをObjective-Cで - Prototype (1)
第56回 デザインパターンをObjective-Cで - Builder (2)
第55回 デザインパターンをObjective-Cで - Builder (1)
第54回 デザインパターンをObjective-Cで - Abstract Factory (2)
第53回 デザインパターンをObjective-Cで - Abstract Factory (1)
第52回 デザインパターンをObjective-Cで - Singleton (3)
第51回 デザインパターンをObjective-Cで - Singleton (2)
第50回 デザインパターンをObjective-Cで - Singleton (1)
第49回 デザインパターンで読み解くCocoa
第48回 F-Script - CocoaとObjective-Cのスクリプティング環境
第47回 AspectCocoa (5) - インプットマネージャとの連携
第46回 AspectCocoa (4) - AspectCocoaの実例
第45回 AspectCocoa (3) - フォワーディングとポージングの利用
第44回 AspectCocoa (2) - IMPによるアスペクト指向の実現
第43回 AspectCocoa (1) - Objective-CとCocoaによるアスペクト指向
第42回 SIMBLでハックを管理
第41回 インプットマネージャから侵入
第40回 Toll-free bridge (3) - Objective-Cメソッドの処理
第39回 Toll-free bridge (2) - Core Foundationのisaフィールド
第38回 Toll-free bridge(1) - 変換コスト0のブリッジ
第37回 Core Foudation (5) - インスタンスの実装
第36回 Core Foudation (4) - 多態性の実現
第35回 Core Foundation(3) - クラスの定義
第34回 Core Foundation(2) - C言語によるオブジェクト
第33回 Core Foundation(1) - Core Foundation誕生前夜
第32回 抽象クラスとクラスクラスタ
第31回 ランタイムAPIでさらに動的に(5) - インスタンス変数に動的にアクセス
第30回 ランタイムAPIでさらに動的に(4) - インスタンス変数の定義を調査
第29回 ランタイムAPIでさらに動的に(3) - メソッドの実装の置換
第28回 ランタイムAPIでさらに動的に(2) - メソッドの追加
第27回 ランタイムAPIでさらに動的に(1) - 動的なクラスの作成
第26回 メッセージ送信(4) - メッセージ送信の流れと関数呼び出しとの違い
第25回 メッセージ送信(3) - メソッドのキャッシング
第24回 メッセージ送信(2) - メソッドリストからメソッドを検索する
第23回 メッセージ送信(1) - objc_msgSendの実装
第22回 メソッドとは何か(5) - メソッドの実装
第21回 メソッドとは何か(4) - セレクタの実体
第20回 メソッドとは何か(3) - メソッドの型を読み解く
第19回 メソッドとは何か(2) - メソッドを取得する
第18回 メソッドとは何か(1) - メソッド、セレクタ、メソッドの実装
第17回 クラスとは何か(4) - Objective-Cにおけるオブジェクトとは何か?
第16回 クラスとは何か(3) - メタクラスと親クラス
第15回 クラスとは何か(2) - クラス情報に直接アクセスする
第14回 クラスとは何か(1) - Mac OS X/Objective-Cにおけるクラスの実装を読む
第13回 Objective-Cのエンジン部 - ランタイムに踏み込む
第12回 ポージングで乗っ取り
第11回 2つのプロトコルの使い分け
第10回 非形式プロトコル - もう1つのプロトコル
第9回 プロトコルが必要とされた背景とは? - なぜあえて静的な型を?
第8回 カテゴリ - 動的なメソッドの追加によるクラスの拡張
第7回 Objective-Cと様々な言語のブリッジ - PyObjC、RubyCocoa……
第6回 Cocoa-Javaの挑戦とは? - 似て非なるセレクタとリフレクション
第5回 ターゲット/アクションパラダイム(2) - その利点を徹底検証
第4回 ターゲット/アクションパラダイム(1) - 動的特性を利用したデザインパターン
第3回 Cocoa実現の肝 - クラスとそのメソッドの調査方法をチェック
第2回 Objective-Cの動的型付け
第1回 CocoaとObjective-Cと動的なオブジェクト指向 - Cocoaハックの第1歩

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