【コラム】

ダイナミックObjective-C

48 F-Script - CocoaとObjective-Cのスクリプティング環境

木下誠  [2006/08/30]

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今回は、F-Scriptを紹介しよう。CocoaとObjective-Cを操作する、スクリプティング言語環境だ。もちろん、動的なObjective-Cの特性を利用して、他のアプリケーションへの侵入もできる。オープンソースプロジェクトなので、ソースコードを見れるのもポイントだ。

F-Script言語とインタプリタ

まず、F-Scriptでは、独自のスクリプト言語を実装している。言語仕様によれば、文法はSmalltalkをベースにしており、SelfとAPLからも影響を受けているらしい。Smalltalkのように、制御文を使わずに、論理値とブロックを使って記述を行うところが面白い。詳しくは、言語仕様を参照してほしい。

このように、文法はSmalltalkの影響を強く受けているが、ランタイムはObjective-Cと密接な関係がある。F-Scriptにはインタプリタが付属するのだが、ここからObjective-CおよびCocoaのオブジェクトを直接作成して操作できるのである。実際にやってみよう。

F-Scriptの開発環境をダウンロードすると、F-Scriptという名前のアプリケーションファイルがある。これがインタプリタになる。起動すると、ターミナルが開き、スクリプトを打ち込む状態になる。

まず、ウィンドウを表示してみる。これには、Cocoaでウィンドウを表すNSWindowクラスを使う。操作のために必要なAPIは、リファレンスからチェックできる。

まず、NSWindowのインスタンスを作成する。

> window := NSWindow alloc initWithContentRect:(100<>100 extent:300<>300) styleMask:NSTitledWindowMask+NSClosableWindowMask backing:NSBackingStoreBuffered defer:true

少し長いが、ウィンドウの位置と、スタイルを設定している。作成したインスタンスは、windowという変数に入れておく。この段階では、まだウィンドウが表示されていない。表示するには、orderFront:メソッドを使う。

> window orderFront:nil

これで、ウィンドウが表示された。次に、タイトルを設定してみよう。

> window setTitle:'My Window'

さらに、ウィンドウ上にボタンも追加してみよう。

> button := NSButton alloc initWithFrame:(100<>200 extent:120<>24)
> button setTitle:'button'
> button setBezelStyle:NSRoundedBezelStyle
> window contentView addSubview:button

このように、インタプリタからスクリプトを打ち込んで、Cocoaのオブジェクトを操作できる。

もう少し実用的な例も紹介しよう。URLを指定して、Webページを表示するスクリプトだ。

> window := NSWindow alloc initWithContentRect:(100<>100 extent:800<>800) styleMask:NSTitledWindowMask+NSClosableWindowMask backing:NSBackingStoreBuffered defer:true
> window orderFront:nil
> webView := WebView alloc initWithFrame:(window contentView bounds)
> window contentView addSubview:webView
> webView mainFrame loadRequest:(NSURLRequest requestWithURL:(NSURL URLWithString:'http://www.fscript.org'))

このようにスクリプトを打ち込む事で、次の図のように、Webページを表示する事ができる。わずか5行で表示できるのだ。もちろん、これはObjective-Cを使っても、まったく同様に5行で行える訳だが。

オブジェクトブラウザ

F-scriptが提供するもう一つの機能は、オブジェクトブラウザだ。これは、F-Scriptアプリケーションのメニューから開く事が出来る。名前の通り、現在のランタイムにある、オブジェクトの情報を見る事のできるブラウザだ。

Workspaceボタンを押すと、インタプリタで作成したオブジェクトを見る事ができる。もちろん、その時点でのインスタン変数の値もチェックできる。

Classesボタンでは、ランタイムにあるクラスの一覧を見る事ができる。ランタイムのクラス情報から調べているので、プライベートクラスも見ることができる。

F-Script Anywhere

これだけだったら、単なるObjective-C環境へのラッパーでしかない。求めるべきものは、やはり、アプリケーションの侵入だろう。既存のアプリケーションに侵入して、その中で、インタプリタやオブジェクトブラウザを使うのだ。F-Script Anywhereを使えば、これができる。

F-Script Anywhereを起動すると、現在立ち上がっているアプリケーションの一覧が表示される。この中に、F-Script実行環境をインストールできるのだ。使い方は簡単で、Installボタンを押せばいい。

インストールされたアプリケーションには、FSAメニューが現れる。ここから、F-Scriptインタプリタやオブジェクトブラウザを起動できるのだ。これにより、すでにコンパイルされているアプリケーションの中で、オブジェクトを操作したり、クラス一覧を見る事ができる。

また、FSAメニューの「Browser for Target...」という項目を選ぶと、クリックしたビューの階層を見る事ができる。これもまた便利な機能だ。

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インデックス

連載目次
第121回 デザインパターンをObjective-Cで - Visitor (2)
第120回 デザインパターンをObjective-Cで - Visitor (1)
第119回 デザインパターンをObjective-Cで - Template Method (1)
第118回 デザインパターンをObjective-Cで - Strategy (1)
第117回 デザインパターンをObjective-Cで - State (1)
第116回 デザインパターンをObjective-Cで - Interpreter (2)
第115回 デザインパターンをObjective-Cで - Interpreter (1)
第114回 デザインパターンをObjective-Cで - Mediator (3)
第113回 デザインパターンをObjective-Cで - Mediator (2)
第112回 デザインパターンをObjective-Cで - Mediator (1)
第111回 デザインパターンをObjective-Cで - Observer (3)
第110回 デザインパターンをObjective-Cで - Observer (2)
第109回 デザインパターンをObjective-Cで - Observer (1)
第108回 Fast Enumeration (4) - Fast Enumerationに対応するクラスの実装
第107回 Fast Enumeration (3) - Fast Enumerationのソースコード
第106回 Fast Enumeration(2) - NSFastEnumerationプロトコル
第105回 Fast Enumeration(1) - 速い列挙子
第104回 プロパティ(4) - プロパティの属性
第103回 プロパティ(3) - ドット演算子
第102回 プロパティ(2) - プロパティの宣言
第101回 プロパティ(1) - インスタンス変数のアクセス制御
第100回 ガベージコレクション(5) - コピーGCとコンパクション
第99回 ガベージコレクション (4) - マーク・アンド・スイープ
第98回 ガベージコレクション(3) - 保守的でありながらオブジェクト的
第97回 ガベージコレクション (2) - 実体であるlibauto
第96回 ガベージコレクション (1) - GCのためのAPI
第95回 デザインパターンをObjective-Cで - Memento (2)
第94回 デザインパターンをObjective-Cで - Memento (1)
第93回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (5)
第92回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (4)
第91回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (3)
第90回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (2)
第89回 デザインパターンをObjective-Cで - Chain of Responsibility (1)
第88回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (5)
第87回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (4)
第86回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (3)
第85回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (2)
第84回 デザインパターンをObjective-Cで - Command (1)
第83回 デザインパターンをObjective-Cで - Iterator (2)
第82回 デザインパターンをObjective-Cで - Iterator (1)
第81回 デザインパターンをObjective-Cで - Proxy (3)
第80回 デザインパターンをObjective-Cで - Proxy (2)
第79回 デザインパターンをObjective-Cで - Proxy (1)
第78回 デザインパターンをObjective-Cで - Flyweight (2)
第77回 デザインパターンをObjective-Cで - Flyweight (1)
第76回 デザインパターンをObjective-Cで - Facade (1)
第75回 デザインパターンをObjective-Cで - Decorator (2)
第74回 デザインパターンをObjective-Cで - Decorator (1)
第73回 デザインパターンをObjective-Cで - Composite (2)
第72回 デザインパターンをObjective-Cで - Composite (1)
第71回 デザインパターンをObjective-Cで - Bridge (3)
第70回 デザインパターンをObjective-Cで - Bridge (2)
第69回 デザインパターンをObjective-Cで - Bridge (1)
第68回 デザインパターンをObjective-Cで - Web Kitを考える Adapter (4)
第67回 デザインパターンをObjective-Cで - Adapater(3)
第66回 デザインパターンをObjective-Cで - Adapater (2)
第65回 デザインパターンをObjective-Cで - Adapter (1)
第64回 デザインパターンをObjective-Cで - Factory Method (4)
第63回 デザインパターンをObjective-Cで - Factory Method (3)
第62回 デザインパターンをObjective-Cで - Factory Method (2)
第61回 デザインパターンをObjective-Cで - Factory Method (1)
第60回 デザインパターンをObjective-Cで - Prototype (4)
第59回 デザインパターンをObjective-Cで - Prototype (3)
第58回 デザインパターンをObjective-Cで - Prototype (2)
第57回 デザインパターンをObjective-Cで - Prototype (1)
第56回 デザインパターンをObjective-Cで - Builder (2)
第55回 デザインパターンをObjective-Cで - Builder (1)
第54回 デザインパターンをObjective-Cで - Abstract Factory (2)
第53回 デザインパターンをObjective-Cで - Abstract Factory (1)
第52回 デザインパターンをObjective-Cで - Singleton (3)
第51回 デザインパターンをObjective-Cで - Singleton (2)
第50回 デザインパターンをObjective-Cで - Singleton (1)
第49回 デザインパターンで読み解くCocoa
第48回 F-Script - CocoaとObjective-Cのスクリプティング環境
第47回 AspectCocoa (5) - インプットマネージャとの連携
第46回 AspectCocoa (4) - AspectCocoaの実例
第45回 AspectCocoa (3) - フォワーディングとポージングの利用
第44回 AspectCocoa (2) - IMPによるアスペクト指向の実現
第43回 AspectCocoa (1) - Objective-CとCocoaによるアスペクト指向
第42回 SIMBLでハックを管理
第41回 インプットマネージャから侵入
第40回 Toll-free bridge (3) - Objective-Cメソッドの処理
第39回 Toll-free bridge (2) - Core Foundationのisaフィールド
第38回 Toll-free bridge(1) - 変換コスト0のブリッジ
第37回 Core Foudation (5) - インスタンスの実装
第36回 Core Foudation (4) - 多態性の実現
第35回 Core Foundation(3) - クラスの定義
第34回 Core Foundation(2) - C言語によるオブジェクト
第33回 Core Foundation(1) - Core Foundation誕生前夜
第32回 抽象クラスとクラスクラスタ
第31回 ランタイムAPIでさらに動的に(5) - インスタンス変数に動的にアクセス
第30回 ランタイムAPIでさらに動的に(4) - インスタンス変数の定義を調査
第29回 ランタイムAPIでさらに動的に(3) - メソッドの実装の置換
第28回 ランタイムAPIでさらに動的に(2) - メソッドの追加
第27回 ランタイムAPIでさらに動的に(1) - 動的なクラスの作成
第26回 メッセージ送信(4) - メッセージ送信の流れと関数呼び出しとの違い
第25回 メッセージ送信(3) - メソッドのキャッシング
第24回 メッセージ送信(2) - メソッドリストからメソッドを検索する
第23回 メッセージ送信(1) - objc_msgSendの実装
第22回 メソッドとは何か(5) - メソッドの実装
第21回 メソッドとは何か(4) - セレクタの実体
第20回 メソッドとは何か(3) - メソッドの型を読み解く
第19回 メソッドとは何か(2) - メソッドを取得する
第18回 メソッドとは何か(1) - メソッド、セレクタ、メソッドの実装
第17回 クラスとは何か(4) - Objective-Cにおけるオブジェクトとは何か?
第16回 クラスとは何か(3) - メタクラスと親クラス
第15回 クラスとは何か(2) - クラス情報に直接アクセスする
第14回 クラスとは何か(1) - Mac OS X/Objective-Cにおけるクラスの実装を読む
第13回 Objective-Cのエンジン部 - ランタイムに踏み込む
第12回 ポージングで乗っ取り
第11回 2つのプロトコルの使い分け
第10回 非形式プロトコル - もう1つのプロトコル
第9回 プロトコルが必要とされた背景とは? - なぜあえて静的な型を?
第8回 カテゴリ - 動的なメソッドの追加によるクラスの拡張
第7回 Objective-Cと様々な言語のブリッジ - PyObjC、RubyCocoa……
第6回 Cocoa-Javaの挑戦とは? - 似て非なるセレクタとリフレクション
第5回 ターゲット/アクションパラダイム(2) - その利点を徹底検証
第4回 ターゲット/アクションパラダイム(1) - 動的特性を利用したデザインパターン
第3回 Cocoa実現の肝 - クラスとそのメソッドの調査方法をチェック
第2回 Objective-Cの動的型付け
第1回 CocoaとObjective-Cと動的なオブジェクト指向 - Cocoaハックの第1歩

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